資本主義はどう終わるのか

未 読
資本主義はどう終わるのか
ジャンル
著者
ヴォルフガング・シュトレーク 村澤真保呂(訳) 信友建志(訳)
出版社
河出書房新社 出版社ページへ
定価
4,620円(税込)
出版日
2017年11月30日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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ヴォルフガング・シュトレーク 村澤真保呂(訳) 信友建志(訳)
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定価
4,620円(税込)
出版日
2017年11月30日
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総合
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おすすめポイント

「資本主義の終焉」をテーマとした論文や書籍はこれまでもたくさんあった。たとえばドイツでは18世紀初期、イギリスでは19世紀中期以降、資本主義の理論は「危機」に瀕した状態にあると論じられている。とはいえマルクスなどの思想家たちが資本主義体制に疑問を投げかけ、その終焉を予言していたにもかかわらず、資本主義はこれまでずっと生き残ってきた。

しかし今度こそ本当に資本主義が終わるのではないか、というのが著者の見立てである。本書は1970年代からはじまる一連の危機を通して、資本主義と民主主義の崩壊していく過程やその背景を、さまざまな観点から論じる。「資本主義の終焉というテーマの論文を一冊で読めるように」という著者の意向もあって、なかには重複するテーマもある。しかしいずれも、現代のグローバル資本主義体制の根底にある、資本主義および資本主義社会の長期的な危機が、中心的な議題となっている。

資本主義が終わりを迎えるとしても、それは敵対勢力によって駆逐されるからではない。むしろ資本主義が内部にかかえる矛盾の拡大によって、その崩壊は引き起こされる――本書を一読するだけでも、著者のこうした考えを「誤っている」と一概に否定することはできなくなるだろう。

資本主義は今後もこれまでのように存続していくのか、あるいは後継者となるポスト資本主義も見当たらないなか、本当に終焉を迎えるのか。読者に熟考と再考を促す一冊である。

ライター画像
金井美穂

著者

ヴォルフガング・シュトレーク (Wolfgang Streeck)
1946年ドイツ生まれ。社会学者。95年よりケルンのマックス・プランク研究所(社会研究部門)所長、99年からはケルン大学教授を兼任。著書『時間稼ぎの資本主義』

本書の要点

  • 要点
    1
    1970年代のインフレ、1980年代の公的債務と民間債務の急増、2008年の金融市場の崩壊という一連の危機をとおして、資本主義と民主主義のペアは破局の道をたどった。
  • 要点
    2
    戦後民主主義の標準モデルは、70年代をピークに解体された。戦後の成長が終わり、民主主義が担っていた市場経済の収益再配分が縮小すると、資本家たちは脱国家を求めた。ここから金融のグローバル化がはじまった。
  • 要点
    3
    「民主制資本主義」には、市場と人民という2つの主権が存在するが、市場は人民より上に立つ。そのためリーダーたちにとっては、有権者より投資家との信頼関係のほうが重要である。

要約

資本主義の危機とトレンド

資本主義の危機理論
mmustafabozdemir/iStock/Thinkstock

資本主義は、初期から一貫して危機に瀕していた理論である。マルクスやケインズ、ポランニー、シュムペーターなど、時代や主張はそれぞれ異なれど、彼らは一様に資本主義の終焉を予期していた。

さらに2008年の大不況(グレート・リセッション)以降、資本主義の未来を案ずる批判的な議論が再燃した。たとえば5人の社会科学者によって著された『資本主義に未来はあるか?』という書物がある。全員の連名で書かれた部分を除けば、それぞれの見解は異なる。だが資本主義および資本主義社会が、重大な危機に瀕しているという点では同じだ。

著者によると、資本主義には治療不可能な病理が蓄積しているという。たしかに近代資本主義の歴史は危機の連続であり、それでもなんとか生き延びてきた。しかし現在は、多くの病理が一斉に悪化し、治療を要するも対策が尽きてしまっている状態だ。

一連の危機とグローバルトレンド

OECD諸国において、資本主義は3つの危機を経験した。すなわち1970年代のグローバルなインフレ、1980年代の公的債務の急増および民間債務の増加、そしてこれらが招いた2008年の金融市場の崩壊である。主要な資本主義国はどれもこの一連の危機をたどっており、1960年代末に戦後の経済成長が終わって以降、経済が安定したことは一度もない。

インフレや公的債務、民間債務の規制緩和は、資本家と労働者の対立への解決策だった。しかしのちに、それ自体が新たな問題と化した。インフレは失業を招き、増加する債務を危惧した債権者は、債務整理への圧力を強めた。そして公共投資の削減が、民間債務に総需要とのギャップの穴埋めをさせ、その莫大な民間債務はバブルの破綻とともに崩壊した。

1980年代にインフレが終わり、アメリカ合衆国主導で金融産業がグローバル化を進めると、近代資本主義の「租税国家」は「債務国家」へと移行。さらに1990年代半ばには、「財政再建国家」へと変容した。

この一連の危機と財政再建国家への移行には、成長鈍化、格差拡大、債務増大という3つの長期傾向が見られる。成長鈍化は格差を拡大し、それがまた成長の鈍化につながる。債務増大は金融危機の可能性を高め、金融セクターの過剰成長がさらに格差を増大させる。

これらは資本主義的システム全体に影響するグローバルトレンドであり、そこから抜け出すための打開策はいまだ見つかっていない。

【必読ポイント!】 資本主義と民主主義の破局

標準的民主主義モデルの解体
ilkercelik/iStock/Thinkstock

一連の危機をとおして、戦後の資本主義と民主主義のペアはゆっくりと破局へ向かった。それに伴い、分配をめぐる対立の舞台も移動した。

1970年代のインフレ時は、労働者への再分配を求めること、つまり労使関係が主な対立の場であった。1980年代になってインフレが終わると、今度は福祉国家のあり方をめぐる対立となり、舞台は選挙へと移行した。そして財政再建の局面で、人々の手持ち資金はクレジット(信用貸付)に依存するようになった。このような変遷は、新自由主義の世界的な広がりや、戦後民主主義の標準モデルの腐敗過程と重なっている。

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