〔データブック〕近未来予測2025

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おすすめポイント

世界の専門家が集まって話し合う大規模な未来予測プログラム「フューチャー・アジェンダ」という取り組みがある。共著者の一人であるティム・ジョーンズ博士をプログラム・ディレクターとして、世界39都市においてワークショップを開催。2025年までに予測される重大な変化について議論を重ねた。それらすべての成果がまとまったのが本書だ。

本書の最大の特徴は、6つのテーマ――「未来の人」「未来の場所」「未来の覇権」「未来の信念」「未来の行動」「未来の企業」――をもとに、現状や今後10年間に予測される変化、課題解決の方向性、イノベーション機会などについて、詳しく紹介しているところだろう。

またワークショップで繰り返し話題にのぼった、おおぜいの人が抱く共通の未来像を、「12の共通認識」としてまとめている点にも注目したい。たとえばそれは「人口の爆発的増加」「資源の枯渇」「環境汚染の悪化」「太陽光エネルギーの活用」「アジアの世紀」などである。これらは不可避の現実として私たちの前に屹立しており、その兆候がすでにあちこちで見受けられるのはいうまでもない。

グローバルな問題の要点がよくまとまっており、どのページを開いても興味深いデータばかりだ。次の10年を担うリーダー層にとって、必読の書といえるだろう。

著者

ティム・ジョーンズ (Tim Jones)
「フューチャー・アジェンダ」共同創設者、プログラム・ディレクター。ケンブリッジ大学で工学修士号を、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートおよびインペリアル・カレッジ・ロンドンで産業デザイン工学修士号を取得、サルフォード大学でイノベーション・パフォーマンスの博士号を取得。イノベーション関係のコンサルタントとして活躍した後、新事業創出のための民間企業向けサービスを行なうInnovaroを創業。2009年に未来予測プログラム「フューチャー・アジェンダ」を創設し、世界各国で産・官・学の専門家をクライアントに、数多くのワーショップを開催している。これまでのクライアントに、Apple、Facebook、インターコンチネンタルホテルズグループ、世界自然保護基金など。イノベーション関連の著書は10冊に及ぶ。

キャロライン・デューイング (Caroline Dewing)
「フューチャー・アジェンダ」共同創設者。アジアや欧州において多国籍企業で働いた経験があり、企業行動や持続可能性を専門分野とする。世界各国の企業や組織がより優れた包括的視野を持ち、グローバルな課題に対応できるよう活動し続けている。イノベーション関連の共著書は4冊に及ぶ。

本書の要点

  • 要点
    1
    2025年までに人口は10億人増加し、高齢化も進む。
  • 要点
    2
    生産年齢人口の比率減少を補うため、今後50年で10億人の移民が生まれる。
  • 要点
    3
    世界の覇権は中国、インドに移り、その文化的な影響力が高まる。
  • 要点
    4
    インターネットの発達で、輸送・配送効率が高まり、場所にとらわれないワーキングモデルが増加する。
  • 要点
    5
    「2025年のキーワード」は「信頼」「プライバシー」「格差」「透明性」「アイデンティティ」である。

要約

6つの課題

未来の人
Chad Baker/Ryan McVay/DigitalVision/Thinkstock

2025年までに人口増加によって新たに10億人が地球上に加わり、高齢化が急速に進む。来年生まれる子供は今日生まれる子供よりも、平均寿命が6カ月長くなるという。

生産年齢人口が年少者や老年者をどのぐらい支えているのか。これを示す比率を「従属人口指数」と呼ぶ。この数値の上昇は多くの国にとって問題となっており、対策として若者の多い国からの移民、女性の社会進出、定年年齢の引き上げが進んでいくと予想される。

欧米では格差の拡大によって中所得層が相対的に減少する。ミドルクラスの仕事はAIに取って代わられ、とくにアメリカでミドルクラスは着実に減少するだろう。

定年後の長い生活を支えるべく、人々はかつてよりも長く働くようになり、それを支える制度や政策が登場することにも言及しておきたい。高齢者や慢性病患者に医療を提供するべく、医療費の増大は避けられない。医療費の対GDP比が20パーセントに達すると、医療制度が持続不可能に陥るため、政府は予算と優先順位について難しい決断を迫られることになる。住み慣れた自宅や地域で、家族とともに人生をまっとうしたいという高齢者の願いをかなえるべく、医療の分散化を推進する医療改革も必要とされていくはずだ。

未来の場所

人々が都市に住むようになると、インフラに大きな負担がかかる。そのため高い生活の質を長期にわたって提供する都市づくりが欠かせない。

気候変動や紛争、資源の枯渇、格差を理由に、今後50年の間で大量の人口が北半球に押し寄せ、10億人もの移民が発生すると見られる。こうした大量の人口移動に対処するため、新興経済国は鉄道網や道路網の建設に投資して、ヒトとモノの効率的な輸送を実現しようとしている。一方で先進国は、負の遺産となったインフラの維持に追われるだろう。

今後の変化として注目すべきなのが自動運転技術だ。完全自動運転への移行が実現すれば、幹線道路を自動運転のトラック団が走行し、都市の中を小型の配達カーが行き交うようになる。運送効率の大幅な改善がなされるはずだ。

一方で都市人口の急増によって、大気汚染や公衆衛生はさらに深刻な問題となる。これまで環境に及ぼす長期的な影響に配慮するつもりのなかった中国も、「生態文明」という言葉のもと、持続可能な開発を掲げはじめている。

未来の覇権
ksenusya/iStock/Thinkstock

中国とインドが台頭し、経済力の重心は東へと移動している。これまでの超大国はこの変化の速度を抑えようとしているが、膨大な人口を抱え、天然資源が豊富な場所という2つの事実は動かしようがない。中国が今後も経済的な影響力を及ぼすのに伴い、“中国崇拝”が高まるはずだ。その文化的な影響力が増すにつれ、中国に対する期待と恐れが急速に広まると予想される。

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要約公開日 2018.09.14
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