新たなる覇者の条件

なぜ日本企業にオープンイノベーションが必要なのか?
未読
日本語
新たなる覇者の条件
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なぜ日本企業にオープンイノベーションが必要なのか?
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新たなる覇者の条件
出版社
定価
1,760円(税込)
出版日
2018年09月10日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

本書は副題にもあるように「オープンイノベーション」をテーマにした本である。特徴的なのは、徹底的に日本企業の実践にこだわっている点だ。

著者も述べるように、「当社は自前主義をやめる。これからはオープンイノベーションの時代だ」と明言する経営者も少なくない。政府の「オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会」には、800社以上の錚々たる企業が加盟している。しかし、その実態はどうであろうか。導入される施策としては、「アイデアソン」「マッチング」「アクセラレーション」などがある。これらが真のオープンイノベーションにつながっているかというと、期待される果実を得られていないケースも少なくない。著者もこうした施策に安易に手を出すことには決して賛成していない。変革を成功させ、軌道に乗せるには、きちんとした「プロセス管理」が必要だという。

紹介されている日本企業20社あまりの事例は、既存の市場での勝ち組ともいうべき優良企業ばかりである。そうした企業であっても、今後も覇者であり続けるためにはオープンイノベーションによる新規事業の開拓が必須と著者は説く。そのためには、上記の「プロセス管理」に加えて、経営トップ層の変革への強い意志と、社員のマインドセットの革新が欠かせない。イノベーションのためのナレッジとノウハウを知るには、まさにうってつけの一冊である。

ライター画像
しいたに

著者

尾崎 弘之(おざき ひろゆき)
神戸大学大学院科学技術イノベーション研究科教授
1984年東京大学法学部卒業、1990年ニューヨーク大学MBA、2005年早稲田大学アジア太平洋研究科博士後期課程修了、博士(学術)。
1984年野村證券入社、ニューヨーク現地法人などに勤務。モルガン・スタンレー証券バイス・プレジデント、ゴールドマン・サックス投信執行役員、複数のベンチャー企業の立ち上げ・経営に携わり、2005年東京工科大学教授、2015年から神戸大学教授。専門はベンチャー経営、オープンイノベーション 。経済産業省、環境省、沖縄県、経済同友会などの委員を務める。
著書に『再生可能エネルギーと新成長戦略』(エネルギーフォーラム)、『次世代環境ビジネス』(日本経済新聞出版社)、『環境ビジネス5つの誤解』(日経プレミアムシリーズ)、『社会変革期の成長戦略――グリーンラッシュで生まれる新市場を狙え』(日経BP社)、『『俺のイタリアン』を生んだ男「異能の起業家」坂本孝の経営哲学』(IBCパブリッシング) 、『「肉ひと筋」で、勝つ『いきなり!ステーキ』と一瀬邦夫』(集英社)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    新たな時代の覇者をめざす企業は、自前主義から脱却し、オープンイノベーションに挑むことが求められている。
  • 要点
    2
    ただし、オープンイノベーションは「魔法の杖」ではない。各企業が置かれた事業環境や抱える事業課題、変化を妨げる組織風土的な要因に応じた、周到な「プロセス管理」が必要である。
  • 要点
    3
    本書では、イノベーションを実現するための「5つのステップ」を明らかにするとともに、代表的な日本企業の実践を具体的に紹介していく。

要約

【必読ポイント!】 なぜいまオープンイノベーションか

2種類のイノベーションを峻別する
SIphotography/gettyimages

イノベーションという言葉は、「既存事業」と「新規事業」の2つの文脈で使われていることが多い。本書で扱うイノベーションを後者の新規事業に限定する。その理由は、両者を一括りにすると新規事業の「将来への芽」を潰す公算が大きいからだという。

特に弊害が大きいのが事業の「評価」である。既に評価方法ができあがっている「既存事業の基準」を新規事業に当てはめるとどうか。時間軸が合わない、よく理解できない、なかなか儲からないといった、さまざまな理由で梯子を外されてしまうことが多い。

もちろん既存事業のイノベーションも重要である。しかし、それだけでは従来勝ち組であった企業でさえも生き残りが難しくなってきている。グローバリゼーションや情報化の進展により、市場環境はめまぐるしく変化している。新興国のキャッチアップも早い。業界の3番手、4番手に安住するという戦略も難しくなってきた。こうした状況下では、新規事業という「将来」に投資をするしかない。

オープンイノベーションに求められるプロセス管理

新規事業というのは、自社が知らない市場への、あるいは自社の技術だけではリーチできない領域への進出である。よって、社内の資源だけを使う「自前主義」では実現は難しい。思い切ってオープンイノベーションに舵を切るべきだ。

こういう話に対して「イノベーションは自前主義でも実現できる。オープンにすればいいというわけではない」という反論も聞こえてくる。こうした発言の背景には、組織をオープンにすることに対するいくつかの抵抗要因がある。抵抗要因をとり除くためには、よく練りこまれた「プロセス管理」が欠かせない。

創業トヨタに見るオープンイノベーション
Devenorr/gettyimages

著者は新規事業を念頭に、オープンイノベーションを実現するための5つのステップを提唱する。

(1)組織をオープンにする

(2)知のダイバーシティを推進する

(3)あえてダブルスタンダードで進む

(4)プラットフォームを進化させる

(5)事業出口を柔軟に探す

これを示す実例としては、トヨタ自動車の創業ストーリーが挙げられる。その概略を簡潔に紹介する。前提となるのは、創業者の豊田喜一郎が「日本初の国産車」を開発するという、当時の常識からみれば無謀ともいえるビジョンを掲げていたことだ。しかし当初の製品開発は失敗続きで、自前主義の限界を知ることになる。その後トヨタは、次のような方針へと舵を切った。

(1)組織をオープンにする:喜一郎は組織の扉を開き、日本ゼネラルモーターズなど社外から経験者をスカウトした。

(2)知のダイバーシティを推進する:社内に研究所を作り、帝國大学や東京工業大学から自動車工学、熱工学、材料工学などの専門家を招いた。現在の産学連携の走りといえる。

(3)あえてダブルスタンダードで進む:当初は、喜一郎の父である豊田佐吉が設立した豊田自動織機製作所に、自動車部を作って開発を進めていた。ただ、本業は紡績業であり、自動車という「異分子」を置くと組織が混乱する。そこでトヨタ自動車工業という「自動車ベンチャー」を作り、紡績業から切り離すこととなった。

(4)プラットフォームを進化させる:部品会社と個別に1対1の関係を作るだけでなく、部品会社同士も協力できる「場」を設けた。部品点数の多い自動車は裾野の広い産業であるが、この場は今日でいうプラットフォームの走りでもあった。

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