NEVER LOST AGAIN
グーグルマップ誕生

未 読
NEVER LOST AGAIN
ジャンル
著者
ビル・キルデイ 大熊希美(訳)
出版社
定価
1,800円 (税抜)
出版日
2018年11月20日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
5.0
応用性
3.0
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NEVER LOST AGAIN
NEVER LOST AGAIN
グーグルマップ誕生
著者
ビル・キルデイ 大熊希美(訳)
未 読
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出版社
定価
1,800円 (税抜)
出版日
2018年11月20日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
5.0
応用性
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レビュー

思えば最近、道を聞かれなくなった。

少し前までは地図を片手に彷徨っている人や、誰かに道を聞く人も珍しくなかったはずだ。だがいまでは大半の人がスマートフォンを使って住所を調べ、見知らぬ土地でもそれほど苦もなく目的地にたどり着けるようになった(GPSやコンパスが正常に働いていればの話だが)。もはや地図アプリは私たちの生活に欠かせないものとなり、今日も数多くの方向音痴を救っている。

こうした世界が実現したのは、間違いなくグーグルマップのおかげだ。だがイノベーションの常として、その道のりは決してやさしいものではなかったという。一時期は倒産寸前まで傾いた会社が、どうやってグーグルに買収され、グーグルマップ/アースというプロダクトを生み出すまでに至ったのか。

著者はキーホールの創業者ジョン・ハンケの側で、ずっと地図事業に関わってきた。ゆえにこのトピックについて書くうえで、これ以上の人物はほとんどいないだろう。しかも書きぶりが抜群におもしろい。読んでいると自分もキーホールの一員となったような、そんな気持ちにすらさせられる。とりわけグーグルから買収の持ちかけがあったときのエピソードは痛快だ。読んでいてこちらも「グーーーーグルだって!?」と叫びたくなってしまう。

ビジネスという道に迷い続けた彼らが、最終的には世界を変える地図を生み出した。グーグルマップの1ユーザーとして、その慧眼と努力に最大限の敬意を表したい。

石渡翔

著者

ビル・キルデイ (Bill Kilday)
ビル・キルデイは地図と拡張現実におけるテクノロジーとゲームマーケティングの分野で25年のキャリアを積んだ。デジタル地図分野のスタートアップ、キーホールのマーケティングディレクターを務め、その後グーグルジオ部門ではマーケティング・リードとなる。在任中にグーグルマップとグーグルアースのローンチに携わった。現在はナイアンティックのマーケティングVPを務めている。ナイアンティックはグーグルからスピンアウトした企業で、イングレスやポケモンGO、そして今後リリース予定のハリーポッター:ウィザード・ユナイトなどGPSベースのゲームを手がけている。8人兄弟の末っ子としてテキサス州ヒューストンに生まれ、現在は家族とテキサス州オースティンに住んでいる。ひどい方向感覚の持ち主だ。

本書の要点

  • 要点
    1
    キーホールは資金繰りに苦しんだものの、CNNの放送でアースビュアーが使われたのをきっかけに業績を伸ばしていく。
  • 要点
    2
    グーグルはキーホールの技術を「グーグルのコアになるかもしれないもの」と考えており、すぐに買収を決断した。
  • 要点
    3
    キーホールを含めたグーグル内の3つのチームが、最新鋭の地図サービスを作るべく力をあわせた。こうして最終的にできたのが「グーグルマップ」と「グーグルアース」である。
  • 要点
    4
    この2つのプロダクトは、グーグルがローンチしたもののなかでも最も大きな成功を収めた。

要約

スタートアップ時代

見たこともないようなサービスを
ismagilov/gettyimages

著者とキーホールの創業者ジョン・ハンケは、もともとテキサス大学の同級生だった。二人は卒業後も、プライベートやビジネスを通じて交流を続けていた。

転機となったのは1999年だ。シリコンバレーで働いているジョンから、「見せたいものがある」という電話が入った。すると間もなくジョンは巨大な機材を抱え、著者のいるテキサスにやってきた。

彼が見せたのは地球の映像だ。だがただの地球ではない。住所を打ち込むと、その場所がズームされた。「一体何が起きているんだ!?」著者は衝撃を受けた。聞けばジョンは、この技術を使って起業したのだという。会社名は「キーホール」、アメリカのスパイ衛星の名前が由来だ。もともとはイントリンシック・グラフィックスというスタートアップが手がけていたのだが、収益化の難しさから開発が頓挫。ジョンがそれを引き継いで事業化したというわけである。

著者は興奮しながらも、たしかに収益化という点では疑問を覚えた。しかも当時は、収益化への道が見えにくいスタートアップは評価されにくい環境だった。まさに起業するうえでは最悪のタイミングである。案の定、資金調達は難航した。

ジョンは一緒に働かないかと著者を誘ったが、著者がキーホールで働けるかどうかは、資金調達の結果次第だった。最終的に資金調達が完了したのは2001年1月だったが、この頃すでに著者はボストンでマーケティングの新しい仕事に就いており、ちょうど慣れ始めた頃だった。給料が良かったこともあって、ジョンの会社へ行く気持ちはあまりなかったのが本音である。

ところがインターネットバブルの崩壊の影響を受け、著者はボストンの会社を解雇されてしまった。著者が本格的にキーホールを手伝い始めるのはこの頃だ。ちなみにこのときはまだボストンにいて、リモートワークという形態をとっていた。

手応えはある、カネはない
Panama7/gettyimages

キーホールは当初、コンシューマーをターゲットにしていた。だがインターネットバブルの崩壊を受け、新たなビジネスモデルが必要になる。

著者はGISに目をつけた。GISとは地理情報システム、すなわち位置情報に関するデータを作成したり、分析したりするためのエンタープライズ向け地図ソフトウェアのことである。当時のGIS市場はエスリ(Esri: Environmental Systems Research Institute)という企業が独占しており、ジョンはあまり乗り気ではなかった。だが著者は、キーホールには彼らにはない優位性があると考えた。エスリは使い方が複雑で、すぐに使えるデータがなく、遅い。それに比べてキーホールは使い方が簡単で、数テラバイトに及ぶデータをすぐに利用でき、圧倒的に早い。

法人向けのGISサービスとしてキーホールのプロダクトを打ち出せば、すぐに売上が立つかもしれない。B2Bモデルにピボットしたキーホールは、さまざまな市場に売り込みを始めた。するととりわけ不動産業界で、大きな手応えが感じられた。

それでも「コンシューマー向けにも展開したい」という想いは消えず、グラフィックカード会社と業務提携して、コンシューマー向けの「アースビュアーNV」も開発。するとこれがよく売れた。またこのとき日本での配信パートナーも獲得し、扱える画像データを世界規模に広げていく。

とはいえ相変わらず資金繰りは苦しいままだった。友人や家族から資金調達をしたり、社員の給与を大幅にカットしたりしてなんとか延命していたものの、あまり猶予は残されていなかった。

突然の世界デビュー

こうした状況が大きく変わったのは、CNNという大型案件が舞い込んできたのがきっかけだ。

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