考えながら走る

グローバル・キャリアを磨く「五つの力」
未読
考えながら走る
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グローバル・キャリアを磨く「五つの力」
未読
考えながら走る
出版社
早川書房
出版日
2013年10月16日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

インテル→ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)→SAPジャパン→GE→日本IBM。彼女の経歴を見れば、エリート街道まっしぐらだと思うだろう。

しかし、彼女の華々しいキャリアの裏には、就職活動で200社以上落ち、業績を上げていたのに契約社員だからといって3年でクビになり、不安で眠れない日々を過ごす…といった波乱万丈な過去があった。不安定な環境の中で「未来への不安を取り除き、社内外で通用するキャリアを築きたい」という思いを原動力に、戦略を立てて数々の壁を打破してきた著者。エンジニア×英語×ビジネス×事業開発という風に唯一無二のキャリアを創り上げてきた彼女だからこそ、「キャリアは掛け算」という彼女の言葉には非常に説得力がある。

キャリアの方向性に迷っている人や、目の前の壁を乗り越えようとしている人は、修羅場を乗り越え、それを成功の糧にしてきた著者の経験から、道を切り拓くための処世術を学べるはずだ。それと同時に、本書に漲る彼女のファイティングスピリットと向上心に触発され、キャリアの選択肢を広げるための具体的な一歩を踏み出す読者も多いのではないだろうか。

「試行錯誤をしてもいい。予想や計画と違ったらすぐに軌道修正をする」という、まさに「考えながら走る」という彼女の生き方は、どんな環境でもキャリアを磨き続けるヒントに満ちている。

ライター画像
松尾美里

著者

秋山 ゆかり
1973年生まれ。イリノイ州立大学アーバナ・シャンペン校(UIUC)情報科学学部及び統計学部卒業。奈良先端科学技術大学院大学情報処理学工学修士。一橋大学大学院国際企業戦略研究科博士後期課程中退。「ビジネスと音楽、それぞれでプロフェッショナルになりたい」と考えキャリアを構築。14歳からシカゴ・リリック・オペラやベルリン・フィルハーモニー管弦楽団等で声楽家としての研鑽を積む。UIUC在学中に、インターネット・エンジニアのキャリアを重ねる。ボストン・コンサルティング・グループの戦略コンサルタントを4年務めた後、イタリアへ声楽留学。帰国後、国内外でのコンサート活動をしながら、GE Internationalの戦略・事業開発本部長、日本IBMの事業開発部長等を歴任。
2011年、TV朝日「題名のない音楽会」で「奇跡のハイヴォイス」と評される。2012年に株式会社Leonessaを設立。政策立案と事業開発コンサルティングをはじめ、コンサートのプロデュースや演奏を行う。2013年より尚美学園大学芸術情報学部音楽表現科の非常勤講師として教鞭をとっている。

本書の要点

  • 要点
    1
    不調に陥る前にその予兆を察知すること、そして万一不調に陥っても早期に立ち直るための「救急セット」や、いつでも相談できる「かかりつけ」の専門家を予め準備しておくとよい。
  • 要点
    2
    チームとして成果を出すためには、現場の作業をうまく回し人を巻き込んでいく「現場力」が必要である。
  • 要点
    3
    人の仕事を奪わずに責任範囲を広げていくことや、部門横断的なプロジェクトチームに参加することは、広い視野と社内外で通用するスキルを培うことに繋がる。

要約

キャリアの選択肢を増やす

キャリア奮闘の軌跡

ぱっと見たところ大成功のキャリアを歩んでいるように思える本書の著者、秋山ゆかり氏は、実は壮絶な人生を歩んでいる。最初の就職活動で200社以上もの会社を受けたが失敗し、エンジニアの中途採用に受かったものの、離婚により専業主婦の夢が破れ、会社の先輩とのトラブルで退職へ追い込まれる。

過度のストレスで入院し、どん底にいた著者は100人以上の伝記を読破し、「事業開発の専門家として20代で年収1000万円を稼ぐ」という目標を立てた。目標を実現するために必要なスキルは何かを考えた結果、BCGへ転職。社内で狙ったポジションを手にし、社内外で通用する「選択肢をつくる力」や「成果が出る勉強力」の身につけ方を学んでいく。

BCGを退職したあとは、ビジネスと声楽家のキャリアの両立を目指し邁進していたが、次に入社したSAPジャパンでは業績を上げていたにもかかわらず、社内政治に無知だったため3年の契約で退職を促されるという憂き目に遭った。この危機では、辛いことからも学びを抽出し、いち早く「危機からリカバリーする力」を得たという。

GEの事業開発部門の責任者になってからは、短期間でがむしゃらに結果を出すことを徹底し、「結果が出せる現場力」を磨いていく。そして日本IBMでは、人材価値を高めて「未来を創る進化力」を高めていった。

この要約では、どんな環境でもキャリアを進化させていくための5つの力を秋山氏がどのように身につけていったのかを紹介していこう。

選択肢を生み出す力
Nastia11/iStock/Thinkstock

自分の仕事が外注される、または職場が海外移転になる可能性がある現代においては、社内外での選択肢を生み出し、生き延びる必要がある。

それでは、どの業界・キャリアを選択すれば生き延びやすいだろうか。それは成長産業やニーズが見込める領域である。総合研究所が出している未来予測資料をリサーチし、どの業界が伸びるのかどうか仮説を用意することをお勧めしたい。著者が事業開発という領域を選んだ理由は、仕事が好きというだけでなく、国内外にニーズが見込めるという観点も含まれている。

次に、社内での生き延びやすさを高めるために、社内政治力を身につけることも大切だ。必要なスキルは、各部署の情報に精通することと、自分の得意分野をアピールする発信力をもつことだ。ただし情報収集で知り得た秘密については知らない素振りをしなければ、社内政治で大打撃を受けるおそれがあるので注意が必要である。

その上で、狙ったポジションを得るには、競争相手が少ないニッチな領域で自分の提供できる価値を高めなくてはいけない。自分が有利に立てる可能性が高くなるからだ。もし希望のポジションがなくても、その類似した業務を率先して行い、周囲の人が「このポジションがあった方がよい」と思うような状況をつくっておくと、希望が通りやすくなる。「自分のスキルが社外で通用するだろうか?」 そんな不安を払拭するには、ボランティアなどで本業のスキルを活かし、自分の能力が認められるかを検証するとよいだろう。

自分を高めて危機を乗り越える

成果が出る勉強力
Top Photo Corporation/Top Photo Group/Thinkstock

社会人の勉強における「時間の確保」と「継続」という課題をどう解決すればいいだろうか?

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要約公開日 2014.05.07
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