ふたつの日本
「移民国家」の建前と現実

未 読
ふたつの日本
ジャンル
著者
望月優大
出版社
定価
924円(税込)
出版日
2019年03月20日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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「移民国家」の建前と現実
著者
望月優大
未 読
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定価
924円(税込)
出版日
2019年03月20日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
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レビュー

いま日本では少子高齢化ばかり注目されているが、じつはもうひとつ大きな変化が訪れている。日本に住む「移民」が増え続けているのだ。平成の30年間に在留外国人は3倍近くに増え、300万人の大台に乗る日も遠くないという。まさに「国のかたち」が大きく変わろうとしているなか、まずはその全体像をつかもうと本書は呼びかける。

数多くの移民を受け入れてきた欧米諸国でも、すべての人が移民との共生を望んでいるわけではない。経済停滞や社会不安の原因を移民に求め、排外主義的な言説をくりかえす「ポピュリスト」が台頭し、支持を集めてもいる。

日本の移民文化・移民事情を伝えるウェブマガジン「ニッポン複雑紀行」編集長を務める著者は、もちろんこうした態度を是としない。日本もすでに「移民の時代」に突入しつつあることを認識し、デモクラシーを排除の手段としない道を考えたいと、本書執筆の意図を語っている。

日本は同じ言葉と文化、歴史を共有する「日本人」だけの国である――こう信じたい人もいるかもしれない。だが現実には、純粋無垢な「ひとつの日本」に戻ることはできないし、そもそも戻るべき場所が存在していたのかどうかも怪しい。故郷は懐かしむものではなく、たまたま居合わせた人々と一緒につくっていくものというのが著者の主張である。

「私たち」とは何なのか。「日本」はどこから来てどこに向かうのか。こうした問いに向き合うきっかけとなる一冊だ。

小島和子

著者

望月 優大(もちづき ひろき)
1985年生まれ。日本の移民文化・移民事情を伝えるウェブマガジン「ニッポン複雑紀行」編集長。東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了後、経済産業省、グーグル、スマートニュースなどを経て2017年冬に独立。国内外で移民・難民問題を中心に様々な社会問題を取材し「現代ビジネス」や「ニューズウィーク日本版」などの雑誌やウェブ媒体に寄稿。代表を務める株式会社コモンセンスでは非営利団体等への支援にも携わっている。

本書の要点

  • 要点
    1
    在留外国人は過去30年に3倍近くも増えている。だが政府も社会の感性もこの変化に追いついておらず、「移民」に向き合えていない。
  • 要点
    2
    政府の建前とは裏腹に、就労資格のない外国人労働者が「いわゆる単純労働者」として日本の産業を支えてきた。だが彼らの出身国の経済が発展し、日本に出稼ぎに来るメリットは薄れつつある。
  • 要点
    3
    非正規滞在者の排除が厳しさを増している。入管施設に収容される人が増えているが、劣悪な環境で追い詰められる人も多い。「移民」の存在を認め、いまこそ排除ではなく連帯の方向へと舵を切るべきだ。

要約

【必読ポイント!】 「遅れてきた移民国家」の実像

3倍に増えた在留外国人
Tony Studio/gettyimages

現在の日本には、労働者に限っても約146万人(2018年10月末時点)と数多くの外国人が暮らしている。その他の人々を合わせると約264万人(2018年6月末時点)にもなり、これは日本の全人口の2%にも相当する。1988年には約94万人に過ぎなかったことを踏まえると、平成の30年間でじつに3倍近くに増えたことになる。

だが政府は「移民」という言葉を意図的に避け、外国人労働者を「外国人材」と呼ぶ。あたかも日本が、ひとつの巨大な人材会社でもあるかのように。その実態として、移民や外国人の支援などを統括する省庁もなければ、私たちの感覚も大きく変化した現実に追いつけていない。外国人や移民の存在をいまだに「新しい」もの、「異なる」ものと見ているのが、日本社会の一般的な感性だ。

欧米では「移民」に関して、さまざまなトライアンドエラーが繰り返されてきた。だが「移民」は欧米だけの問題ではない。日本にも「移民」がいて、取り組むべき「移民問題」がある。「遅れてきた移民国家」として、「移民」にどう向き合うかを考え始めなければならない。

細分化される在留資格

日本にはどのような外国人が住んでいるのだろうか。出身国別に見ると圧倒的に多いのが中国で、74万人強と全体の3割近くを占めている。次に韓国、ベトナム、フィリピン、ブラジルと続き、この上位5カ国で全体の4分の3近くを占める。

在留資格の種類で見ると、5つのカテゴリーに大別できる。もっとも多いのは「日本人の配偶者等」などを含む「身分又は地位に基づく在留資格(以下、身分・地位)」で、全体の半数以上がここに該当する。この資格群は更新の制限がなく、どんな仕事にも就けるうえ、仕事がなくても在留し続けられるのが特徴だ。次に多いのは「専門的・技術的分野の在留資格(以下、専門・技術)」である。在留資格のうち唯一「就労」を表向きの目的としたもので、細かく分けると15の資格がある。3番目に多いのは「留学」で、その後に「技能実習」「家族滞在」が続く。

5つのなかでは、「身分・地位」カテゴリーの在留資格がもっとも安定している。「専門・技術」カテゴリーも、当該分野の仕事さえあれば、在留し続けることが可能だ。5番目の「家族滞在」とは、その配偶者と子どもに付与されるものを指す。一方で「留学」で在留できるのは学校に所属している間のみで、卒業後は「専門・技術」に切り替わることも少なくない。定住からもっとも遠いのが「技能実習」だ。在留期間は最長5年と定められ、その間は家族を呼び寄せることもできない。

日本に「移民」は何人いるのか?
mirsad sarajlic/gettyimages

こうした在留外国人は、はたして「移民」なのだろうか。国連によれば、国境を越えて移住してから3カ月以上12カ月未満の者を「短期(一時的)移民」、12カ月以上の者を「長期(恒久的)移民」と呼ぶのが一般的だ。だが国際的もしくは学術的に定まった「移民」の定義があるわけではない。日本にいる「移民」の数は、どんな定義を選ぶかによって変わるうえ、定義の選択自体が政治性を帯びる。

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