Sport 2.0
進化するeスポーツ、変容するオリンピック

未 読
Sport 2.0
ジャンル
著者
アンディ・ミア 田総恵子(訳) 稲見昌彦(解説)
出版社
NTT出版 出版社ページへ
定価
2,800円 (税抜)
出版日
2018年09月05日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.0
革新性
5.0
応用性
3.0
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アンディ・ミア 田総恵子(訳) 稲見昌彦(解説)
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定価
2,800円 (税抜)
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2018年09月05日
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3.0
革新性
5.0
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レビュー

スポーツは冷静に考えると、非常に不思議なものである。私たちは幼少の頃から、さまざまなシチュエーションでスポーツに関わる。競技者として長くスポーツに携わる人はごく少数だが、観戦も含めればかなりの人数が、成人したあともスポーツに触れていると言える。

観戦する立場から見たスポーツは、極論すれば一種の娯楽にすぎない。しかしスポーツに取り組む人びとの情熱や技術は、観ている人を強く惹きつける。スポーツのなかに哲学や人生を見出す人もいるほどだ。だからこそスポーツ業界はここまで大きくなったのだし、これからも成長していくのだろう。

そんなスポーツを取り巻く光景は、デジタルテクノロジーの発展に伴って、いま大きく変わろうとしている。タイトルにもなっている「スポーツ2.0」とは、スポーツの生産と体験がアナログからデジタルに変化する過程を表す言葉だ。競技者と観戦者のどちらの立場から見ても、もはやデジタルテクノロジーと関わらないスポーツはほとんどない。ならばデジタルテクノロジーの発展に伴い、スポーツを取り巻く環境や習慣も、必然的に大きく変わっていくはずである。

本書はいま話題のeスポーツも含め、スポーツのこれからのあり方を大胆に描き出している。2020年に東京オリンピックを控えているいまだからこそ、ぜひお読みいただきたい一冊だ。スポーツに対する認識が――そしてデジタルゲームに対する認識が――ガラッと変わることを保証する。

石渡 翔

著者

アンディ・ミア (Andy Miah)
英マンチェスターにあるサルフォード大学教授。1975年生まれ、イギリス・ノリッチ出身。バングラディッシュ人の父とイギリス人の母の元に生まれる。生命倫理を専攻し、テクノロジーと人間の行動変容を主な研究テーマとしている。『ハフィントンポスト』『タイム』『ガーディアン』等、様々な媒体に寄稿。共著に、The Medicalization of CyberspaceThe OlympicsGenetically Modified Athletesがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    デジタルテクノロジーとスポーツの関係を理解するうえで、オリンピックは重要な文化だ。その根底にあるのは、「アスリートが人間そのものの進化を、デジタルテクノロジーが人間の科学技術の進化を表す」という思想である。
  • 要点
    2
    スポーツ界はデジタルテクノロジーに不信感を抱いているが、人々の持つ想像力が豊かになっていけば、スポーツや世界の未来像も変わるはずだ。
  • 要点
    3
    スポーツはゲームに接近し、逆にゲームはスポーツに接近していっている。それぞれの観客体験も、テクノロジーの発展に伴って大きく変わっていくだろう。

要約

「ゲーム」がつなぐ3つの文化

デジタル文化

コンピュータゲームの歴史はイノベーションの歴史でもある。1970年代、コンピュータマシンといえばピンボールマシンぐらいしかなかったが、その後めざましい進化を遂げ、より多くの人に親しまれるようになった。

「昨今のゲーム業界はグラフィックの改良に取り組んでいるだけだ」とよく指摘されるが、実際は新たな価値観も生み出している。たとえばオンラインモバイルゲームは、「ゲームは特定のマニアだけがやる」というゲーム文化を再定義した。コンピュータゲームにおける変化の軌跡を辿ることは、デジタル文化におけるイノベーションの社会的意義を分析するうえでも不可欠だといっていい。

スポーツ文化
jacoblund/gettyimages

21世紀の文化としてコンピュータゲームと同じぐらいに重要なのが、スポーツ参加および観戦である。その経済規模は年々大きくなっており、アスリートの価値も向上。アスリート名をライセンス契約することの意味も大きく変わった。スポーツの発展が、商業的な要因に影響を受けているのは疑いの余地がない。

しかしそれでもプロスポーツが「文化活動」といえるのは、プロアスリートたちが歴史をつくりだす力をもっているからだ。彼らは能力の限界を超えるべく、日々努力を重ねている。そしてパフォーマンスを向上させるため、ウエアラブル端末などの最新機器も積極的に活用する。テクノロジーは身体化され、かつて対極に位置するものだと考えられていたスポーツ文化とデジタル文化は、いまこれ以上ないほどに接近している。

オリンピック文化

デジタルテクノロジーとスポーツの関係を理解するうえで、オリンピックの歴史を知ることは欠かせない。そもそも近代オリンピックはスポーツの祭典というだけでなく、その思想的・社会的意義を追求するものでもあった。

「卓越した能力」を奨励するというオリンピックの目標は、スポーツ以外の面にも全面的に採用されており、たとえば「文化オリンピアード」(オリンピック開催中、開催都市で催される文化の祭典)では、世界一流のアートの展示をめざしている。最近では最新テクノロジーの展示という色合いも強まってきた。

ここから見えてくるのは、アスリートが人間そのものの進化を、デジタルテクノロジーが人間の科学技術の進化をあらわすという思想だ。オリンピックという文化は、スポーツとデジタルテクノロジーが不可分の関係にあることを雄弁に物語っている。

融けるリアルとバーチャル

リアルとバーチャルは分けられるのか?
liuzishan/gettyimages

スポーツ文化とデジタル文化の研究に共通するテーマに、「リアルさ」への関心がある。スポーツは「社会の規範と仕組みの外で行われるもの」として、リアルではないと見なされることが少なくない。一方でスポーツを通じて、社会参加の機会を得る人がいるのもたしかだ。しかもスポーツには、社会的・政治的な変化を生み出す力がある。

デジタル世界についても同じようなことがいえる。デジタル世界は基本的に「リアルではない」と見なされている。しかし今日の人々にとって、オンラインでの生活はオフラインでの生活と同じくらい当たり前のものだ。

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