データ・ドリブン・エコノミー

データがすべての企業・産業・社会を変革する
未読
データ・ドリブン・エコノミー
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未読
データ・ドリブン・エコノミー
出版社
ダイヤモンド社

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出版日
2019年04月03日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

気づけば身の回りのものが、ずいぶんとデジタル化し始めた。その流れは人間のコミュニケーションにまで及び、誰もがSNSを使う時代になっている。いまやデータは石油にも匹敵する価値を持ち、データを独占するプラットフォーマーが躍進している世界になった。

しかしこれまでのデジタル化は、まだ「助走期」に過ぎないと著者はいう。ここから真のデジタル化時代、「飛翔期」に入るというのだ。「もうこれ以上どこをデジタル化するのか」と疑問に思う方は、ぜひとも本書を一読してみてほしい。私たちの身の回りには、まだまだアナログがあふれていることに気づくだろう。アナログから入手できるデータ量は、巨大プラットフォーマーがかき集めてきたWebデータの量をも凌駕する。つまりどの会社も、データという情報資源を活用すれば、自らプラットフォーマーとして先頭に立てる可能性があるといえる。

デジタル化といっても、どの業務からどのようにデータを収集し、どんなサービスを開始するのかを決めるのは簡単なことではない。ただし従来型の思考の範囲に留まっていては、何も生まれないのもたしかだ。アナログデータがデジタル化されるとき、私たちの仕事、企業、そして社会は大きく変わるに違いない――そう思わされた一冊だ。

ライター画像
香川大輔

著者

森川 博之 (もりかわ ひろゆき)
東京大学大学院工学系研究科教授
1965年生まれ。1987年東京大学工学部電子工学科卒業。1992年同大学院博士課程修了。博士(工学)。2006年東京大学大学院工学系研究科教授。2007年東京大学先端科学技術研究センター教授。2017年4月より現職。
IoT(モノのインターネット)、M2M(機械間通信)、ビッグデータ、センサネットワーク、無線通信システム、情報社会デザインなどの研究に従事。ビッグデータ時代の情報ネットワーク社会はどうあるべきか、情報通信技術は将来の社会をどのように変えるのか、について明確な指針を与えることを目指す。
電子情報通信学会論文賞(3回)、情報処理学会論文賞、ドコモ・モバイル・サイエンス賞、総理大臣表彰、志田林三郎賞などを受賞。OECDデジタル経済政策委員会(CDEP)副議長、新世代IoT/M2Mコンソーシアム会長、電子情報通信学会副会長、総務省情報通信審議会委員、国土交通省国立研究開発法人審議会委員などを歴任。

本書の要点

  • 要点
    1
    データ・ドリブン・エコノミーとは、リアルな世界から集めたデータが新たな価値を生み出し、あらゆる企業・産業・社会を変革していく一連の経済活動のことである。
  • 要点
    2
    デジタル化はいままでにない新しい価値を生み出し、ビジネスモデルの再構築を促す。産業界ではすでにそうした兆候が現実化している。
  • 要点
    3
    デジタル化は社会基盤に変革をもたらす力を持つ。企業はオープンイノベーションの視点を持ち、業界の垣根を超えたエコシステムを形成する必要がある。

要約

【必読ポイント!】動き出すデータ・ドリブン・エコノミー

データ・ドリブン・エコノミーとは
Andrey Suslov/gettyimages

データ・ドリブン・エコノミー(データ駆動型経済)とは、リアルな世界から集めたデータが新たな価値を生み出し、企業・産業・社会を変革していく一連の経済活動のことだ。これからはデータが起点となり、あらゆる領域で価値を生み出す動きが加速していく。デジタルがあらゆる産業・社会を変革していく時代の到来である。

すでにデジタル化の流れは業界の垣根を壊し、社会に大きな変化をもたらしつつある。インターネットやスマートフォン、クラウド、センサーが普及したこれまでの20年間は、あくまでデジタル革命の「助走期」だ。それはデジタル化に舵を切るためのインフラ整備にすぎない。これからはICT(情報通信技術)が真価を発揮する「飛翔期」に入り、デジタルが社会の隅々まで浸透していくだろう。

とはいえデジタルの浸透には長い時間がかかるのも事実だ。デジタル化を推進するためには組織や働き方の変革が必要だが、従来型のやり方に固執する反対勢力が障害となる。過去の歴史を紐解いてみても、ある産業がバブルの崩壊を経て台頭するまで、30年から40年かかっている。インターネットバブルやリーマンショックでバブルがはじけた時期を加味すると、真の意味でデジタル社会が到来するのは2040年頃になるはずだ。しかし「まだまだ先のこと」と安心してはいけない。デジタル化の動きはすでに始まっている。

リアルデータはWebデータを凌駕する

インターネットの普及により、世の中を飛び交うデータ量は増加の一途を辿っている。いまやデータは「21世紀の石油」と形容されるまでになった。

インターネットが普及し始めてから現在までの約20年間において、データの主役はWebデータが担ってきた。Webデータの覇者として、グーグルやアマゾン、フェイスブックが知られている。データを握っているこうした企業はプラットフォームを構築し、独自のエコシステムを形成してきた。

しかし私たちの生活のなかには、デジタル化されていない膨大な量のアナログデータがある。そしてIoT(モノのインターネット)の普及により、あらゆるものが低コストでインターネットに接続され、リアルな世界からアナログデータを簡単に収集できる環境が整備されつつある。リアルデータの量は、グーグルやアマゾン、フェイスブックが集めてきたWebデータとは比較にならないほど膨大だ。今後はリアルデータを集めたものがプラットフォーマーとなり、市場を席巻するだろう。しかも誰にでも勝利をつかむチャンスがあるのが、リアルデータの世界といえる。

デジタル化に取り組む姿勢
Blue Planet Studio/gettyimages

どんなデータを収集し、どんなサービスを提供すればよいのか、疑問に思うかもしれない。しかしその問いに明確な答えはない。なぜならデータビジネスにおいては、走りながら考える過程で、新たな価値が見つかるからだ。

たとえばアマゾンがやっている「アマゾンレンディング」という小口の融資事業は、事業者の取扱商品や取引履歴、在庫状況といったデータを収集していくなかで、なかば偶発的に生み出された。またアメリカンフットボールでは、戦略分析のために始めた選手のプレーをデジタル化する取り組みが、結果的には観客にとっての魅力的なコンテンツ提供にもつながっている。どちらのケースにおいても、データを収集した当初は、新しいサービスを生み出すことを想定していなかったはずである。

新たな価値が生まれるかどうかは、やってみなければわからない。

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要約公開日 2019.08.06
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