古代史で楽しむ万葉集

未 読
古代史で楽しむ万葉集
ジャンル
著者
中西進
出版社
定価
705円 (税抜)
出版日
2010年04月25日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
3.0
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古代史で楽しむ万葉集
古代史で楽しむ万葉集
著者
中西進
未 読
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定価
705円 (税抜)
出版日
2010年04月25日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
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レビュー

新元号「令和」の発表とともに、その由来が日本最古の歌集『万葉集』にあることも、国民の知るところとなった。記録が明確なものとしては、日本の元号で初めて、漢籍ではなく日本の古典が典拠となったという。

新元号の発表をきっかけに、万葉集に興味を持った方も多いのではないだろうか。万葉集を知らない人はいないだろうが、学校で習った以上の知識を身につけている人は決して多くないだろう。

著者は万葉史、万葉集の比較文学研究で知られる国文学者の中西進氏だ。万葉研究の第一人者である。

本書では、万葉の歌がよまれた飛鳥時代から奈良時代の古代史を、万葉集の歌とともに紐解いていく。代表的な歌を引用しながら歌人が紹介されるだけでなく、それらの歌がよまれた時代背景も解説されている。

数多くの歌が紹介されているが、そのすべてに対訳が付いているわけではないため、歌になじみのない人にとっては少し取っつきにくく感じられる部分もあるかもしれない。だが、歌の題材や、そこで描かれる人々の感情は、現代に生きる私たちにとっても理解しやすいものだ。

私たち日本人の思想の源泉はどこからやってきたのか。新しい時代の到来とともに、万葉の時代から続いている日本人の精神に思いをはせるのにぴったりの一冊である。

池田明季哉

著者

中西 進(なかにし すすむ)
1929年、東京生まれ。文学博士。高志の国文学館館長、国際日本文化研究センター名誉教授、大阪女子大学名誉教授、京都市立芸術大学名誉教授。

本書の要点

  • 要点
    1
    万葉集を時代順に見ると、まず出てくるのが磐姫皇后の歌だ。万葉では、磐姫のいちずな愛に焦点が当たっている。
  • 要点
    2
    遷都前に活躍した柿本人麻呂はうつ然たる自然の繁茂のあり方をよんだが、遷都後の歌人・山部赤人は秩序だった整然たる自然を歌にした。
  • 要点
    3
    万葉最後の時代に活躍した大伴家持は、美しい自然の前にかえって悲しい気持ちが増すという逆説的な感傷を初めてよんだ人物である。
  • 要点
    4
    万葉集の歌の約半数は、作者のわからない歌である。

要約

【必読ポイント!】 万葉古代の歌うた

万葉集と古代の歌

万葉集20巻には4500あまりもの歌が収められているが、それらは第1巻のはじめから年代順に並べられているわけではない。すべての歌を年代順に考える場合は、いろいろな巻から歌を持ってきて並べかえなければならないのだ。

こうして並べかえていくと、まず出てくるのは5世紀初頭の人物である磐姫皇后(いわのひめのおおきさき)などの歌だ。本書では、7世紀半ば、645年の大化の改新以前の歌を万葉の古代の歌うたと名づける。

磐姫の頃の歌は口頭伝承であったので、彼女のものとして万葉集に収録されている作品が、彼女がよんだ歌の原形そのものかどうかはわからない。それどころか、磐姫が本当にこのような歌を作ったかどうかさえ疑わしいほどだ。

古代の人々を垣間見せてくれる磐姫
colnihko/gettyimages

古代の歌うたが生み出された時代は、当時の人々にとってどのような時代だったのだろうか。仁徳天皇の皇后磐姫の歌は、それを垣間見せてくれる。

磐姫は、万葉集に収録されている「葛城(かずらき)の 襲津彦(そつひこ)真弓 荒木にも 憑(たの)めや君が わが名告(の)りけむ」という歌の中に登場する。「わたしを頼りになる者だと思ってわたしの名を人に言ったのだろうか」という、自分たちの恋を公にしてしまった男に対する女の歌だ。女への頼りがいを、磐姫の父である「葛城襲津彦の持つ弓のような強力な木の弓」にたとえている。襲津彦が庶民にまで名の知られた強力な武将だったことがうかがわれる。

天皇家が王権を樹立できたのは、葛城の力と結託したからだとされている。磐姫が仁徳に嫁いだのも政略結婚だった。

だから磐姫には多くのライバルがいた。磐姫の嫉妬にたえかねて逃げていった女がいたとされるほどだ。磐姫の留守中に別の女が宮中に召されたことがわかると、磐姫は嫉妬に狂い、神事につかうために取ってあった柏の葉を捨ててしまったという。

万葉集には、磐姫が天皇を思ってよんだ歌が4首のせられている。そのうちの一つは、「秋の田の 穂の上(へ)に霧(き)らふ 朝霞 いづへの方(かた)に わが恋ひやまむ(秋の穂の上にわだかまって行き場のない霞のように、わが恋の苦しさはどちらの方向にも晴れていかない)」という、恋の苦しみを嘆く歌となっている。ほかにも、伝説上の悲恋の主人公と自分を同一視するような歌など、万葉びとが磐姫のいちずな愛を見つめていたことがうかがい知れる。

大化の改新から遷都までの歌

大化の改新が生んだ古代史の文学
LewisTsePuiLung/gettyimages

蘇我(そが)氏が終焉を迎え、当時の天皇であった皇極が退位すると、その地位をつぐものとして中大兄(なかのおおえ)があげられたが、彼は皇太子の地位を望んだ。皇極の弟である軽皇子(かるのみこ)が即位して孝徳(こうとく)天皇となり、皇后には中大兄の妹である間人(はしひと)皇女が立てられた。こうして陣容を整えた新政府は、古代史に稀にみる改新を断行していく。

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