YouTubeの時代

動画は世界をどう変えるか
未読
YouTubeの時代
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未読
YouTubeの時代
出版社
出版日
2019年03月06日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

「YouTubeの時代」――本書のタイトルを聞くと「YouTubeスゲーぞ、動画の時代だぜ!」という話が延々と繰り広げられる本なのではないか? と穿った見方をしてしまう方もいるかもしれない。

確かに今が「YouTubeの時代」なのは間違いない。有名ユーチューバーの年収は数億円にのぼるとも言われ、小学生のなりたい職業ランキングの上位にユーチューバーがランクインするのだから。

とはいえ要約者はこれまで「YouTubeスゲーぞ、動画の時代だぜ!」という話をさんざん見聞きしてきており、食傷気味である。正直なところ、本書を読むのは腰が重いとも感じていたことを告白する。

しかしひとたび読み始めると、本書は何度も繰り返し読むことになるだろう名著だと直感した。著者ケヴィン・アロッカ氏は、YouTubeのトレンド&カルチャー部門・統括責任者だ。2010年にYouTube入社後、一貫してバイラル動画やそれを見ている人々の行動を分析してきた人物である。彼は「江南スタイル」「ニャンキャット」「アイス・バケツ・チャレンジ」をはじめとしたバイラル動画を分析し、それらの共通点を見出した。そして本書にて、豊富な具体例をもとに「なぜバイラルが生まれるのか」を解説している。その解説は、社会学者が書いたのかと思わされるほど、知的刺激に満ちたものだ。

本書は、日常的にYouTubeを使うすべての人にお勧めできる一冊だ。企業の動画活用における指針も示されているため、動画マーケティングに携わる人は特に必読である。

著者

ケヴィン・アロッカ (Kevin Allocca)
YouTube トレンド・カルチャー統括部長。ボストンカレッジ(コミュニケーション/映像研究)卒業後、Huffington Post(現HuffPost)等をへて、2010年YouTube(Google)入社。TED講演『バイラルビデオが生まれるメカニズム』は200万回以上再生され、話題となった。バイラル動画分析の第一人者として世界各国で講演を行っている。ニューヨーク在住。

本書の要点

  • 要点
    1
    かつて、どのコンテンツを楽しめるかは、自分が住んでいる国や地域に左右された。何の制約もなくコンテンツを視聴できるようになったのは、YouTubeのようなプラットフォームが登場してからだ。
  • 要点
    2
    YouTube上のリミックス作品は、「アートとエンターテイメントは、プロフェッショナルのチームによる入念なコラボレーションの上に成り立つもの」という概念を覆した。
  • 要点
    3
    バイラル動画の共通点は(1)人々の参加、(2)意外性、(3)アクセラレーターだ。

要約

YouTubeの時代の到来

最初の動画
kckate16/gettyimages

カリムは、PayPal(ペイパル)のオンライン決済プラットフォームの開発者だ。彼は2004年後半、同僚であるチャド・ハーリーとスティーブ・チェンと共に同社を退社し、新しいベンチャーの立ち上げを模索することとなる。そこで出たアイデアが、動画サービスであった。

2005年4月23日、カリムはサンディエゴの動物園の象の檻の前で撮影した動画「動物園にいる僕」をYouTubeのテストサーバにアップロード。これがYouTubeに初めて投稿された動画となった。徐々にユーザーは増えていき、YouTubeでは、友人やペット、おかしな落書き、ネット上の流行動画のシェアなどが行われるようになっていった。

同年6月には「関連動画」機能やシェア機能、サイトへの埋め込み機能を追加。こうした施策が功を奏し、サービスはどんどん成長していく。

その結果、たった1年でユーザー数は月間3000万人に達し、2006年末には1日に1億本の動画が視聴されるようになった。また、インターネット上での動画視聴の58パーセントがYouTubeで行われるようにもなっていた。

ポップカルチャーの未来

2012年の夏の終わり頃、韓国の中年男性PSY(サイ)のミュージックビデオ「江南スタイル」が大ヒットする。リリースからわずか4か月で、YouTubeで最も多く視聴された動画となったほか、数週間後には視聴回数が10億回を突破。言葉はわからずとも視覚的にわかりやすくおもしろいダンス動画だったため、世界中のあらゆる地域から江南スタイルのパロディや二次創作作品が投稿されるという一大ブームを巻き起こした。

つい最近まで、どのエンターテインメントを楽しめるかは住んでいる国や地域に左右されていた。この状況を変えたのは、インターネットだ。さらに、YouTubeのようなプラットフォームが登場してからは、ユーザーはあらゆる制約から解放された。いまポップカルチャーは、視聴者の居場所や経済状況、企業の思惑ではなく、視聴者の間で共有される興味や情熱により形成されている。

リミックス――新たな言葉

トーレスと猫
tapui/gettyimages

25歳のクリス・トーレスは、ダラスの保険会社で事務スタッフとして働く傍ら、飼い猫マーティが登場するマンガを描き、ブログで公開していた。

2011年2月、彼は赤十字への募金を呼びかけるイベントに参加し、視聴者からのコメントに応じて絵を描くパフォーマンスを行った。するとある視聴者が「マーティをポップタルト(米ケロッグ社が販売しているお菓子)として描いてはどうか?」と提案してきた。トーレスはその提案を気に入り、胴体がお菓子のポップタルトで、頭と手足がロシアンブルーの猫というキャラクターを描いた。

2011年4月、彼は、このポップタルトのマーティのイラストを使って8ビット風のCGアニメーションを制作し、ウェブサイト上で公開。公開されたアニメは瞬く間にTumblr(タンブラー)などで拡散された。

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要約公開日 2019.09.04
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