グーグルが消える日

Life after Google
未読
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グーグルが消える日
出版社
SBクリエイティブ

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定価
1,980円(税込)
出版日
2019年05月24日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

グーグルが消える日――。ビジネスでもプライベートでもグーグルを利用しない日はない。「世界のシステム」になったとさえいえるグーグルが、「消える」とはいったいどういうことなのか。

このような衝撃的な予言をするのは、著書『テレビの消える日』でネットワークコンピュータの台頭を予言し、スティーブ・ジョブズにも影響を与えたジョージ・ギルダーである。本書で示唆されるのは、グーグルが築いた世界システムにおける致命的な弱点を解決し、それに取って代わる、新しい世界システムの存在である。それは、インターネットの構造そのものを根底から覆すほどの大変革を、私たちに予感させるものだ。

新たな世界システムの中枢は、中央集権型で管理しているユーザー識別情報の管理方法を改めることである。そこで活用されるのが、ブロックチェーン技術だ。これがグーグルの弱点を克服し、現在の世界システムに取って代わる日がやって来るという。グーグルありきの思考に陥ることなく、創造的に新たな世界を構築すべきときが到来している、というのが著者の主張だ。

新しい世界システムのもとで、グーグルは競争に勝ち残れるのか。はたまた新勢力に取って代わられるのか。今後、インターネットの世界はどのように変わっていくのだろうか。シリコンバレーを震撼させたであろうこの予言の中身を、あなたも知りたくはないだろうか。

ライター画像
金井美穂

著者

ジョージ・ギルダー (George Gilder)
アメリカの経済学者および未来学者。1939年ニューヨーク州生まれ。ハーバード大学卒業後、リチャード・ニクソン、ネルソン・ロックフェラーなどのスピーチライターを経て、サプライサイド(供給重視)経済学の研究者へ転身する。転身後の1981年に刊行した『富と貧困』斎藤精一郎訳(日本放送出版協会)がベストセラーとなる。1993年にデジタル携帯電話の登場を予言した『テレビの消える日』森泉淳訳(講談社)は、スティーブ・ジョブズに大きな影響を与えたといわれる。2000年に刊行した『テレコズム』葛西重夫訳(小社刊)では、「通信網の帯域幅は6ヶ月で2倍に広がる」というギルダーの法則を提唱した。現在は研究活動の傍ら、投資家やジャーナリスト、技術評論家、作家としても積極的に活動している。

本書の要点

  • 要点
    1
    著者はアルゴリズムに頼りきった発想に警鐘を鳴らし、人間の頭脳こそが創造性の源だと主張する。
  • 要点
    2
    インターネットが商取引の場となった今、セキュリティーシステムに配慮を欠くグーグルの姿勢は、同社の衰退要因になりかねない。
  • 要点
    3
    今後は、セキュリティーが基本的要件となる、「クリプトコズム(秘密保持の世界)」という新たな世界システムがつくられる。
  • 要点
    4
    ユーザー識別情報を各企業が集中管理するのは危険である。ブロックチェーンを利用すれば、個人によるデータの自己管理が可能となり、インターネットの脆弱性という重大な欠陥を解決できる。

要約

グーグルが築いた世界

グーグルの「世界システム」の限界

ネット社会の頂点に君臨するグーグル。企業の枠を超越して「世界のシステム」になったグーグルは、機械も人間と同じく「学習」できると考えている。だが、著者によると、彼らの考え方は、人間の意識を軽視しているという。そのような思考に陥るのは、唯物主義者のごとく、「宇宙の本質は物質だ」と信じているからに他ならない。グーグルが築いた世界では、人間の頭脳より機械の方が優れており、人間の知能はグーグルのアルゴリズムに及ばないと信じられている。

しかし、こうした決定論的な発想からは、新しい発見は生まれない。創造性がなければ視野偏狭に陥り、衰退あるのみだ。そんななか著者は、アルゴリズムに頼りきった発想に警鐘を鳴らし、人間の頭脳こそが創造性の源だと主張する。グーグルの世界システムには欠陥と限界がある。今こそ、新たな「情報のアーキテクチャー」を構築すべきときが来ている。

セキュリティーシステムの限界
MF3d/gettyimages

かつてインターネットは、ウェブサイトの閲覧やメールの送信、コミュニティー内の意見交換など、限られた用途にのみ使われていた。その間は、セキュリティーはそれほど重要ではなかった。なぜなら、インターネットは商取引の手段として利用されていなかったからである。インターネットであらゆるサービスを「無料」で提供でき、ユーザーを満足させられていたのも、そういうわけだ。

ところが、アマゾンやアップルなどのIT企業の発展に伴い、インターネットは一大商取引の場へと変化した。ビジネスにおいて、商取引能力は最重要事項といっても過言ではない。そのため、セキュリティーはあらゆるサービスの基本となり、システムの要所にもなった。

その後、さまざまなセキュリティー強化の手段が講じられた。しかし、パスワードの設定や不正アクセス探知機能、マルウエアの予防などを施すだけでは十分とはいえない。もはやインターネットの業界構造そのものが、限界を迎えている。既存のコンピュータやネットワークの枠組みだけでは解決できない問題が山積みなのだ。

コンピュータプログラムの限界

1930年、数学者ダフィット・ヒルベルトは、数学を最高の学問として確立した。彼の決定論的見解に異を唱える形で「情報数学」を提起したのが、若きクルト・ゲーデルである。ゲーデルは、論理システムには不完全性と本質的な自己矛盾があり、システムのなかではその正しさが証明できないと、論理の限界を示した。

ゲーデルの証明を受けて、アラン・チューリングが構想したのが、チューリングマシンである。チューリングマシンは、いかなるプログラムも永遠に稼働する可能性があることを証明するものだった。そして、帰納的自己言及によりコンピュータプログラムに限界が存在することが、明らかになった。

ゲーデルの発想は、クロード・シャノンの情報理論へとつながっていく。そして、これらを土台として現在の世界システムをつくり上げたのが、グーグルである。

グーグルは「知識の理論」と「頭脳の理論」の2つを提示している。前者は「ビッグデータ」と呼ばれる。後者はAIの研究から生まれた理論だ。脳の機能はアルゴリズム的であり、データ処理を繰り返して結論に至るとする。脳の研究では、脳はかなり感覚的にデータを処理することがわかっている。だが、AI研究の方向性は依然として変わらない。結果として、コンピュータの処理能力の高速化にばかり焦点が当たってしまっている。

グーグルの無料戦略の限界
TARIK KIZILKAYA/gettyimages

グーグルがめざすのは、世界中のあらゆるデータにアクセスできる状態だ。それを実現するために、ユーチューブの動画配信やメール、アンドロイドアプリ、インターネット検索サービスを、顧客に無料で提供している。それらのサービスは、本当の意味で「無料」というわけではない。ユーザーは「お金」を払っていないだけであって、見たくもない広告を見せられることによって、「時間」という対価を払っている。

では、時間が代金のかわりになるのはなぜなのか。それは、財やサービスを追加で生み出す費用がゼロになる「限界費用ゼロ社会」において、他のものがどれだけ豊富になっても、時間の希少性だけは変わらないからだ。グーグルは、ユーザーの時間、つまり人生を奪っている。しかも、ユーザーは「情報」という費用も払っている。これが「無料の世界」の実態なのだ。

無料のサービスはセキュリティー面において多くを求められない。だが、ネットビジネスを行う事業者にとって、セキュリティーが最重要事項であることは間違いない。セキュリティーへの配慮を欠いたグーグルの姿勢は、同社の衰退要因となるだろう。いずれは「システムそのもの」に責任を持つネットワークが誕生するというのが著者の見立てである。

【必読ポイント!】 「グーグル後の世界」の10のルール

グーグル後の世界

「セキュリティーの脆弱性」「人を集めて広告を見せるビジネスモデル」「無料へのこだわり」「顧客データの縦割り」「人工知能のビジョン」。これらをグーグルが続ける限り、これからの世界を生き抜くことはできない。

今後は、セキュリティーが基本的要件となる、グーグル後の「新たな世界システム」がつくられる。その世界は「クリプトコズム(秘密保持の世界)」と呼ばれることになるだろう。グーグルの「世界システム」においては、「コミュニケーション・ファースト」のルールが機能していた。あらゆるものが「フリー」に複製され、移動され、加工されていた。

しかし、多数のエンジニアや起業家が考案し始めている「クリプトコズム」の世界では、これまでと全く異なる10のルールが働くことになる。

「クリプトコズム」での10のルールとは?
Henrik5000/gettyimages

第1のルールは、「セキュリティー・ファースト」。セキュリティーは個々人のID、デバイス、財産が安全な状態を指し、「不変の台帳」として存在し続ける。

第2のルールは、「集中化は安全ではない」ということだ。パワーや情報を、ピア・ツー・ピアのシステム内に分散させることで、改ざんや盗みを防ぐことができる。よって、人間の頭脳やDNAコードが分散されているように、デジタル資産を蓄積する場所も分散されることになる。

第3のルールは、「セイフティー・ラスト」だ。設計の段階であらゆるシステムの安全性を求めるのは、使いにくさを誘発するだけだ。そのため、安全性は最後に検討する。

第4のルールは、「無料のものは何もない」である。資本主義では、企業が顧客の役に立ち、仕事の対価として金銭を受け取る。対価をなくせば、企業は顧客を大事にしなくなってしまうことに注意が必要だ。

第5のルールは、「時間は、費用の最終的指標である」という点だ。さまざまなものが豊富にあっても、時間の希少性は変わらない。

第6のルールは、「安定した通貨は、人間に威厳と統制力を与える」である。通貨が安定していると、社会は時間と権力に支配されずに済む。

第7のルールは、生物学的非対称性を模した「非対称性の法則」である。公開鍵で暗号化されたメッセージは、秘密鍵でなければ解読できないが、秘密鍵は公開鍵からはわからない仕組みにする。こうして検証が容易な非対称な暗号であれば、人々をエンパワーすることができる。

第8のルールは、「秘密鍵」のルールだ。秘密鍵は、DNAと同様に、上からの命令で変えたり、混合したりできないように規定される。秘密鍵は安全性を左右するものだからだ。

第9のルールは、「秘密鍵は、政府やグーグルではなく個人が持つ」ということである。秘密鍵は財産権やアイデンティティを守ってくれる。秘密鍵の所有者は、公開アドレスと公的台帳の内容の身分証を持っていると証明することで、いつでも「チャレンジャー(チェックする側)」に対応できる。これにより権力の分散が可能となる。

最後に第10のルールは、「すべての秘密鍵とその公開鍵の背後には、人間の通訳が存在する」ということだ。個々の人間にフォーカスすることが、有意義なセキュリティーをつくり出すことにつながる。

これから、世界はどう変わるのか?

先述した10のルールに沿って、新たなシステムができると、世界はどう変わるのか。グーグル後の世界は、現在のグーグルによるトップダウンではなく、ボトムアップになるだろう。個人に安全な基盤があり、デジタル台帳に登録され、日時も記録される。すると、階層構造による権力の集中を防げる。自分の情報を自己管理でき、その価格も自由に決められるようになるのだ。

また、グーグル後の世界では、有料情報が増え、自分のほしいものが効率よく手に入るようになる。広告についても、ユーザーが自分の意志で、好きなときに広告を見られるようになる。そして、その時間と注目に対して、費用が支払われることとなる。

グーグル後の世界では、世界各国の人々と直接応対ができ、そのための費用や時間もわずかになる。国を超えたピア・ツー・ピアの新しい直接取引は、すでに各地で登場している。こうして人間は、インターネット上で主導権と尊厳を取り戻し、暗号技術の「マスター」になれるのだ。

ブロックチェーンと新たなインターネット世界

自分のデータを自分で管理できる世界へ
anyaberkut/gettyimages

ネットワーキングの世界にネットスケープのブラウザが登場して以来、インターネットは商取引の場へと変遷してきた。セキュリティー強化と安全かつ効率的な取引の実現をめざして、グーグルやフェイスブックなどの巨大企業が取り組んだのは、「安全な空間」を独自に設けることだった。その結果、ユーザー識別情報は各企業が集中管理することになった。これでは情報を相互利用できないうえに、情報がハッカーに狙われるようになってしまった。そこで求められるようになったのが、「ブロックスタック」である。

ブロックスタックでは、作成すると変更できないデータベースを、ブロックチェーン上に設ける。そして、重要なIDや個人情報などを、そのデータベース内のアドレスに保存できるようにしている。これにより、ユーザー本人による自己管理が可能となる。ブロックチェーンを利用すれば、ウェブサイトにアクセスする際、ユーザー識別情報が自動的に提供される。つまり、インフラ提供側だけがデータを利用する中央集権スタイルが解消される。そのため、セキュリティーレベルの向上とともにユーザー間の相互利用も可能となる。このように、ブロックスタックは、インターネットの脆弱性という重大な欠陥を解決するのだ。

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