人生という道のりは誰にとっても波瀾(はらん)万丈のドラマであり、嬉しいこともあれば悲しいこともある。実はそうした出来事はすべて自分自身の心が引き寄せ、つくり出したものだ。だから人生は、目の前の出来事にどのような心持ちで対応するかによって大きく変わっていく。愚痴をこぼしたり不平不満をもらしたりすれば、それらはめぐりめぐって自分に戻ってきて、さらに悪い境遇を呼び起こしてしまう。
著者自身、少年期から社会に出るまでは苦難の連続であったが、それに対して不平不満を漏らしていたときはなにもうまくいかなかった。しかし、自分の運命を受け入れて仕事に没頭し始めてから、人生は逆風から追い風に転じた。いっけん不幸な少年時代は、天から与えられたすばらしい人生への前奏曲だったのだ。挫折と苦労を前向きな気持ちで乗り越えようとしたことによって、心を磨く努力をすることができたし、他人を大切にする人間になった。
現状がいかに過酷なものであっても、それを恨んだり、卑屈になったりせず、つねに前向きな気持ちで乗り越えていこう。それがすばらしい人生を送る秘訣(ひけつ)だ。
著者は若いころから「謙虚さとはお守りである」というようなことをいってきた。謙虚な心は、悪しき出来事を遠ざけ、よい人生を送るための護符となってくれる。
人間は、物事が少しうまくいき、まわりからちやほやされると、気持ちが舞い上がってしまうものだ。それが続くと知らずしらずのうちに傲慢になり、また他人にも横柄な態度をとってしまう。人生を踏み外す原因となるのは、かならずしも失敗や挫折とは限らない。成功や称賛もまた、人生を一変させてしまうのだ。
京セラを創業し、経営が軌道に乗り始めたころ、著者はふと「これだけ収益が上がっているのに、私の年俸がこれしかないのはおかしいのではないか?」と思ったことがあった。会社ができたのも、利益がでているのも、著者の才覚によるものだ。であれば、いまの数倍の年俸をもらってもバチは当たらない――ついついそう感じてしまった。
しかしすぐその傲慢さに気づき、自らを激しく戒めた。自分がもつ才能や能力は、自分の所有物ではない。たまたま与えられたものだ。だからこそ、自分の才能や能力は、世のため人のために使わねばならない。
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