夫に対し、この3日以内に次のように感じた妻は、ぜひこの本を読んでほしい。「思いやりがない」「話が通じない」「わかってくれない」「とにかく苛立つ」「一緒にいる意味がない」「子どもが巣立った後、夫婦二人になるのが怖い」。もしかしたら、その夫に対する不満は、濡れ衣かもしれない。彼のひどい言葉や気が利かない態度は、愛情の欠如でも彼自身の個性でもなく、男らしさの副産物かもしれないのだ。
妻は、今日一日のひどい経験を夫に優しく聞いてもらい、なぐさめてもらいたいと思っている。ところが、夫は「君も悪いよな」と、けなしてくる。それは、愛する人を危険から守ろうとする、男性脳の愛と誠意からくるものなのだ。
夫が「そういう脳(男性脳)」の持ち主だとわかると、案外、優しくて誠実な夫だと感じるかもしれない。そして、「そういう脳」の使い方をマスターすれば、夫が優しい存在に変わることが期待できる。
夫への怒りの原因の一つは、「よりよい相手」を探そうとする女性脳の罠にはまっていることだ。もう一つは、男性脳のありようを知らないために起こる誤解である。前者は、本能なので避けられない。だが、後者については、男性脳を知ることで現状を変えられるのだ。
妻を地獄に落とす原因は、多くの場合、夫ではない。妻の「女性脳の生殖戦略」である。
動物は、異性の見た目、声、匂いなどから、遺伝子のありようを見抜く。そうして、免疫力が高く遺伝子の相性のいい相手に惚れて、その遺伝子を得ようとする。哺乳類のメスの場合、生殖リスクが高いので、相手を厳選して発情する。これが恋の正体だ。一定期間は相手に夢中なのだが、妊娠しないで時が経つと、相手への興味がなくなってくる。妊娠しない相手に執着していると、生殖機会を失う可能性が高くなるからだ。
出産をすると、今度は相手への執着が強くなる。子どもを無事に育てるために、資源を提供すべき相手に変わるからだ。子どもの生存可能性を高めるために、「搾取すべき相手からは徹底して搾取する」という戦略に変わるのである。
つまり、子を持った妻は、夫に労力、意識(気持ち)、時間、お金のすべてをすみやかに提供してほしいという本能にかられる。子どもに対しては優しいが、夫に対しては厳しい。これが本当の母性である。
そして、子どもが自分の足で歩くようになると、脳は「次の生殖相手」を探すようになる。生物の生きる目的の第一義は「繁殖」であり、よりよい遺伝子を求めるようになるのだ。しかし、女性脳は、それを浮気心として表出しない。直近の生殖相手に腹を立て、イラついて仕方がない事態を起爆剤として、次の相手へのスイッチを入れようとするのだ。
男女のミゾを作るのは、生殖戦略の罠だけではない。男女は同じ脳を持ち、全機能搭載可能で生まれてくる。しかし、チューニングが異なる。
脳には、同時同質に使えない機能が共存している。利き手があることで、身体の真ん中に飛んでくる石をとっさによけられるように、脳もとっさに使う側が決まっている。人類の男女は、生殖戦略が正反対なので、この「とっさの判断」も正反対なのだ。
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