本屋、はじめました 増補版

新刊書店Titleの冒険
未読
本屋、はじめました 増補版
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本屋、はじめました 増補版
出版社
定価
792円(税込)
出版日
2020年01月10日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

「起業」と聞くと、ITを駆使して社会を変える、成長産業の分野でベンチャー企業をつくるといったような、最新技術や画期的なアイデアで成長性の高いビジネスをイメージされる方も多いだろう。

一方で、自分が居心地のよいと思えるような小さなお店を持ちたいという夢を密かに抱いている人も多いのではないだろうか。そのような個人経営の新刊書店を開業した実録が本書である。

著者は、大手書店チェーンリブロ池袋本店マネージャーを経て、東京・荻窪に2016年1月、新刊書店Titleを開業した。「小さな本屋」のブームを起こした一人である。本書では、物件探し、店舗デザイン、カフェのメニューづくりから、イベントやウェブ、そして「棚づくり」の方針までが詳細に語られる。さらに巻末には事業計画書や開店後の売上利益の表も収録されている。つまり、小さなお店を持ちたい人にとっては、ひとつのお手本とすることができる情報が満載なのである。

と同時に、新刊書店は今の時代では困難だと言われるのになぜやるのか、店を通してどんなことを実現したいのか、という著者の考えも多く記されている。それらは、改めて自分の仕事の価値を見つめ直したり、人生を賭けてやるべき「天職」について考えたりしようとする読者にとって、大いに参考になるだろう。

全編を通して感じられる、神聖ともいえるような著者の本への想いを、じっくりと味わっていただきたい。

ライター画像
大島季子

著者

辻山良雄(つじやま よしお)
Title店主。1972年、兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、大手書店チェーンリブロに入社。広島店と名古屋店で店長を歴任後、2009年より池袋本店マネージャー。15年7月の同店閉店後退社し、16年1月、東京・荻窪に新刊書店「Title」を開業。著書に、『365日のほん』(河出書房新社)、画家のnakabanとの共著に『ことばの生まれる景色』(ナナロク社)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    開業準備としてやるべきことはたくさんあるが、思い立ったらすぐ始められることは、事業計画書をつくることだ。事業計画書を周りの人にも見せることで、考えを練り上げることもできる。
  • 要点
    2
    本屋の日常はルーティンワークが中心だ。その中で反応の良かった本を見つけて、大事に売っていく。地道に信用を積み重ね、店のファンを増やしていくということは、小さな本屋が安定する一番の近道である。
  • 要点
    3
    本はどこで買っても同じとはよく言われるが、「実はどこで買っても同じではない」と著者は訴える。本の価値を「場」の力で引き立てれば、その本は買った店とともに記憶に残る一冊となる。

要約

前史

本のある空間にいるのが好き

著者は、シンプルに本屋を開きたいと思い、そのためにはどうしたらよいかということを一つずつ積み重ねてきた、と冒頭に記している。

大学受験浪人生時代、予備校に通う電車の中で、いつしか文庫本を読むことが習慣になっていた。外国文学にのめり込みつつ、本の楽しみや書店で過ごす楽しみを覚えた。大学入学で上京してからは、大学の授業よりもキャンパスのある早稲田界隈の古書店やリブロ池袋店などの書店に通っていたという。本が売れていく雰囲気をなんとなく感じ取ったり、印刷製本された本の匂いの中に入ったりすることが、著者にとっては自然な感じのすることだった。本のある空間にいるのが好きなのだ、という気づきから、就職先は書店に決めた。選んだのは、当時最も先鋭的に、書店の本棚を編集する取り組みをしているように見えた、リブロだった。

書店員として
Zephyr18/gettyimages

リブロ入社後は福岡、広島、名古屋の店舗をめぐり、順調にキャリアを積んでいく。リブロは全国チェーンとしては珍しく、店舗ごとの裁量が大きかったため、著者は多くのチャレンジをした。

マネージャーを務めた旗艦店の池袋店では、リブロの伝統を踏襲したジャンル横断棚をつくったり、東日本大震災から1年経ったころ、「3・11以後の本と私たち」というフェアを企画したりした。後者では、さまざまなジャンルの有名人に震災から読んだ本で印象に残っている三冊を挙げてもらい、一年がどのような年であったのかを見通せるような効果を狙った。後者は、毎年メインテーマを変えておこなわれる名物企画となった。

書店の店頭は時々の世相や流行する考えなどが反映されているが、そこに個人の考えが入った方がより面白くなるという確信も、リブロ時代の経験から得たものだ。

「課外活動」が得意技になる

著者はリブロ勤務時代に、プライベートで町ぐるみのブックイベントの実行委員をしていたこともあった。そこでできたつながりは、本業の展示企画などにも活かすことができた。こうした「課外活動」をするとき、ただ趣味として終わらせるのではなく、そこで得た人のつながりやスキルなどを会社員としてやるべき仕事に活かしていくことができれば、「課外活動」がその人の得意技になっていく。

「課外活動」で知り合った店主たちは、もちろんそれぞれたいへんなこともあるだろうが、自由で楽しそうだった。自分の店を持とうという思いが心に芽生えたのは、彼らの生き方が著者自身にも近しいものとして感じられたからだ。

【必読ポイント!】具体的な開業準備

事業計画書
glegorly/gettyimages

開業準備としてやるべきことはたくさんあるが、思い立ったらすぐに始められることがある。それは、事業計画書をつくることだ。店のための物件が出てくるのを待っていた時期につくった事業計画書は、あとあと、物件を競合から勝ち取ったり、取引先や銀行と口座を開いたりした時に役立ったという。加えて何よりも、事業計画書をつくって周りの人に見せることで、様々な意見をもらうことができた。それらをもとに練り上げることで、つくりたい店の輪郭も定まってきた。

どこの街でやるか

店をやろうというときに最も重要といえるのが立地である。著者も様々な場所を「ロケハン」した。いくつか気になっていた土地に実際に行くと、この街は何となく敷居が高い、あの街は環境が良すぎてかえって文化的なことを渇望しなくなるのではないか、などさまざまな違和感が出てきた。これらを確かめたことは、

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要約公開日 2020.03.14
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