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「イノベーター」で読む アパレル全史の表紙

「イノベーター」で読む アパレル全史


本書の要点

  • シャネル、マリー・クヮント、ラルフ・ローレン、ラガーフェルド、御木本幸吉、柳井正……。ファッションのイノベーターたちは時代の変化を敏感に察知し、時代に合った考え方や態度を表現するモードを創造した。

  • 結果としてアパレルやファッションにイノベーションをもたらし、人々の考え方や社会に向き合う態度を変えていった。

  • 21世紀になると、資本家によるマーケティングの時代が到来した。複数のブランドを束ねるコングロマリットが市場を支配するようになった。

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【必読ポイント!】 女性解放のイノベーション

ポール・ポワレ 〜コルセットからの解放~

20世紀初頭、ヨーロッパではジャポニズム(西洋人による日本礼賛)が流行した。オペラ「ミカド」の舞台では、川上貞奴(さだやっこ)が着たキモノが称賛された。その流れの延長として、ヨーロッパでは室内着に「キモノ・ドレス」が取り入れられるようになっていく。

キモノ・ドレスの起源は、当時武家の奥方が着用していた小袖にある。身体を締め付ける現代の着物と違い、ゆったりと身体を泳がせることのできる流麗なキモノだ。それまでの数百年間、西洋の女性はコルセットに支配されてきた。キモノの登場は、コルセットなしでも美しく装えるという、新しい可能性を提示したのだ。

パリのデザイナー、ポール・ポワレはここに商機を見た。彼はキモノから着想した「キモノ・コート」などの作品を発表。異国趣味を取り入れた斬新なデザインが評判を呼び、ポワレは瞬く間にヨーロッパのファッションシーンを席巻した。彼は「ファッションの王様」と呼ばれるほどの存在になった。しかし、第一次大戦後はシャネルや「ショッキングピンク」を発明したスキャパレリの台頭により、「時代遅れの人」に。晩年は貧困のうちに亡くなった。

ガブリエル・ココ・シャネル 〜女性の自由と自立~

AndreaAstes/gettyimages

没後半世紀が経っても人気の衰えない、ガブリエル・ココ・シャネル。20世紀にシャネルが生み出したファッションは、彼女の波乱万丈な人生と切り離して考えることはできない。

孤児として修道院で育ったシャネルは、お針子としてキャリアをスタートさせた。後に愛人の援助で起業し、帽子ビジネスで成功を収める。シャネルはヨーロッパ一の大富豪や著名人たちと恋愛遍歴を重ね、7カ国にまたがるネットワークを築き上げていく。そして、女性の現実に即した「革命的デザイン」により、世界的デザイナーとして活躍した。戦後15年ほどの亡命期間を経て、70歳で奇跡のカムバック。亡くなる直前まで生涯を仕事に捧げた。

シャネルのファッションは、19世紀的な価値観と対峙する機能的なものばかりだ。バッグにショルダーチェーンをつけたのは両手を自由に使うため。キルティングはキズや汚れを目立たせないようにするためだ。また、本物と偽物をミックスしたコスチュームジュエリーには、本物至上主義の上流階級へのアンチテーゼが潜んでいる。

女性が自由意思を持って働き、自立し、自身の尊厳を保つことのできるファッション。シャネルのファッションアイテムは、人生を能動的に生きたいと願う女性たちの定番となっていった。

自分の望む人生を生き、望む男を恋人に選び、着たい服をデザインする。女性の経済的自立などあり得なかった時代に、シャネルは主体的な生き方を選び、それを最後まで貫いた。

クリスチャン・ディオール 〜モードサイクルの開祖~

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クリスチャン・ディオールのキャリアが花開いたのは、第二次世界大戦後の1947年である。ディオールは、最初のコレクションで「コロール」(花冠)ラインを発表した。細く絞ったウエスト、たっぷり布地を使ったフレアスカートにより、「8」の字を作るラインである。戦時中は物資が統制され、服に使える生地はわずかなものだった。フェミニンで贅沢な布地を使ったディオールのウェアは、「ニュールック」と評され、女性服を一変させた。

ディオールはその後も半年ごとに、バーティカルライン、チューリップライン、Aラインなど、次々に新しいラインを作り続けた。新しいラインが登場するたびに、新しい服を購入する「モードサイクル」を作り上げたのが、ディオールだ。

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要約公開日 2020.03.13
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