「イノベーター」で読む アパレル全史

未 読
「イノベーター」で読む アパレル全史
ジャンル
著者
中野香織
出版社
日本実業出版社 出版社ページへ
定価
1,980円(税込)
出版日
2020年01月20日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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中野香織
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定価
1,980円(税込)
出版日
2020年01月20日
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レビュー

シャネル、ディオール、アルマーニ。「ファッションに疎い」という人でも、これらのブランド名は聞いたことがあるだろう。本書は、19世紀半ばから現代に至るまで、ファッション界のキーパーソンとされる56名を紹介した一冊である。有名ファッションブランドやデザイナー、経営者、クリエイティブディレクターなど、ファッションのイノベーターたちが次々と登場する。

著者は「ファッション史を学ぶことは、時代と人のあり方の関わりを学ぶことにつながる」という。見た目の変化は、人の考え方、社会に向き合う態度の変化だというのだ。たとえば、シャネルがデザインした機能的なファッションは、女性に自立と能動的に生きる姿勢を促した。このように、社会がファッションを変え、アパレルが変化を後押しする。ファッション史は、その関係性の歴史に他ならない。そして、あらゆる分野でのイノベーションのヒントの宝庫といえる。

特に要約者の心に残ったのは、資本家がブランドの買収を重ねて巨大グループを作り上げた結果、ブランドが没個性に陥りつつあるという現状だ。個性こそ命であるはずのブランドが、なんとも皮肉な方向に進んでいるではないか。そんななか、グローバルニッチをめざす動きも起きており、今後の動向に目が離せない。

本書を読めば、「ファッション」という窓を通した、時代の空気感とその変遷をじっくりと味わえる。それは新たな時代のリベラルアーツといえるだろう。

矢羽野晶子

著者

中野香織 (なかの かおり)
服飾史家/株式会社Kaori Nakano 代表取締役/昭和女子大学客員教授。
ファッション史やモード事情に関する研究・執筆・講演を行うほか企業のアドバイザーを務める。1994年、東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得満期退学。英国ケンブリッジ大学客員研究員・東京大学教養学部非常勤講師・明治大学国際日本学部特任教授を務めた。
著書に『ロイヤルスタイル 英国王室ファッション史』(吉川弘文館)、『紳士の名品50』(小学館)、『ダンディズムの系譜 男が憧れた男たち』(新潮社)、『モードとエロスと資本』(集英社)などがある。
公式HP http://www.kaori-nakano.com

本書の要点

  • 要点
    1
    シャネル、マリー・クヮント、ラルフ・ローレン、ラガーフェルド、御木本幸吉、柳井正……。ファッションのイノベーターたちは時代の変化を敏感に察知し、時代に合った考え方や態度を表現するモードを創造した。
  • 要点
    2
    結果としてアパレルやファッションにイノベーションをもたらし、人々の考え方や社会に向き合う態度を変えていった。
  • 要点
    3
    21世紀になると、資本家によるマーケティングの時代が到来した。複数のブランドを束ねるコングロマリットが市場を支配するようになった。

要約

【必読ポイント!】 女性解放のイノベーション

ポール・ポワレ 〜コルセットからの解放~

20世紀初頭、ヨーロッパではジャポニズム(西洋人による日本礼賛)が流行した。オペラ「ミカド」の舞台では、川上貞奴(さだやっこ)が着たキモノが称賛された。その流れの延長として、ヨーロッパでは室内着に「キモノ・ドレス」が取り入れられるようになっていく。

キモノ・ドレスの起源は、当時武家の奥方が着用していた小袖にある。身体を締め付ける現代の着物と違い、ゆったりと身体を泳がせることのできる流麗なキモノだ。それまでの数百年間、西洋の女性はコルセットに支配されてきた。キモノの登場は、コルセットなしでも美しく装えるという、新しい可能性を提示したのだ。

パリのデザイナー、ポール・ポワレはここに商機を見た。彼はキモノから着想した「キモノ・コート」などの作品を発表。異国趣味を取り入れた斬新なデザインが評判を呼び、ポワレは瞬く間にヨーロッパのファッションシーンを席巻した。彼は「ファッションの王様」と呼ばれるほどの存在になった。しかし、第一次大戦後はシャネルや「ショッキングピンク」を発明したスキャパレリの台頭により、「時代遅れの人」に。晩年は貧困のうちに亡くなった。

ガブリエル・ココ・シャネル 〜女性の自由と自立~
AndreaAstes/gettyimages

没後半世紀が経っても人気の衰えない、ガブリエル・ココ・シャネル。20世紀にシャネルが生み出したファッションは、彼女の波乱万丈な人生と切り離して考えることはできない。

孤児として修道院で育ったシャネルは、お針子としてキャリアをスタートさせた。後に愛人の援助で起業し、帽子ビジネスで成功を収める。シャネルはヨーロッパ一の大富豪や著名人たちと恋愛遍歴を重ね、7カ国にまたがるネットワークを築き上げていく。そして、女性の現実に即した「革命的デザイン」により、世界的デザイナーとして活躍した。戦後15年ほどの亡命期間を経て、70歳で奇跡のカムバック。亡くなる直前まで生涯を仕事に捧げた。

シャネルのファッションは、19世紀的な価値観と対峙する機能的なものばかりだ。バッグにショルダーチェーンをつけたのは両手を自由に使うため。キルティングはキズや汚れを目立たせないようにするためだ。また、本物と偽物をミックスしたコスチュームジュエリーには、本物至上主義の上流階級へのアンチテーゼが潜んでいる。

女性が自由意思を持って働き、自立し、自身の尊厳を保つことのできるファッション。シャネルのファッションアイテムは、人生を能動的に生きたいと願う女性たちの定番となっていった。

自分の望む人生を生き、望む男を恋人に選び、着たい服をデザインする。女性の経済的自立などあり得なかった時代に、シャネルは主体的な生き方を選び、それを最後まで貫いた。

クリスチャン・ディオール 〜モードサイクルの開祖~
undefined undefined/gettyimages

クリスチャン・ディオールのキャリアが花開いたのは、第二次世界大戦後の1947年である。ディオールは、最初のコレクションで「コロール」(花冠)ラインを発表した。細く絞ったウエスト、たっぷり布地を使ったフレアスカートにより、「8」の字を作るラインである。戦時中は物資が統制され、服に使える生地はわずかなものだった。フェミニンで贅沢な布地を使ったディオールのウェアは、「ニュールック」と評され、女性服を一変させた。

ディオールはその後も半年ごとに、バーティカルライン、チューリップライン、Aラインなど、次々に新しいラインを作り続けた。新しいラインが登場するたびに、新しい服を購入する「モードサイクル」を作り上げたのが、ディオールだ。

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