世界はデザインでできている

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世界はデザインでできている
出版社
出版日
2019年11月10日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.5
革新性
3.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

本書は冒頭で、この世界から人の手でデザインされたものを消していってみて、と投げかける。言われたとおり想像してみれば、本の表紙や壁に貼られた広告はおろか、建物も、道具も、着ている服さえも消え、大地と裸の人間だけが残る。つまり、人間がつくり出したものはすべてデザインされている。タイトルの通り、「世界はデザインでできている」のである。

しかし、日々それを意識して生活している人は少ないだろう。著者の言葉を受けて、改めて周りを見渡すと、様々なデザインが目に入る。本書はデザイナーの視点から、私たちが普段触れているデザインがどのような意図でつくられ、どう機能しているのかを説明し、未来のデザインがどうなるかを論じている。著者が実際に手がけた商品や広告も例として提示され、解説は終始わかりやすい。

学生から読める「ちくまプリマー新書」というレーベルも意識されてのことか、専門用語は一切なし。力まずに読める一冊だ。それでいて、なかなかイメージしにくい「デザイン」ということについて、誰でも本質的な理解ができるよう工夫されている。昨今、ビジネスにおける「デザイン思考」ということもよく言われている。スマートフォンの普及にともない、世の中のデザインも変化しつつある。デザインに直接関係のない仕事をしている人も、本書でデザインというものを理解しておくことには大きな意味があるだろう。

ライター画像
池田明季哉

著者

秋山具義(あきやま ぐぎ)
1966年東京秋葉原生まれ。日本大学藝術学部卒業。アートディレクター。日本大学藝術学部デザイン学科客員教授。広告(PARCO、TOYOTAほか)、マルちゃん正麺のパッケージデザインやAKB48のヘビーローテーションCDジャケットデザインなどを手掛け、グラフィックデザインを中心に第一線で活躍。「ほぼ日刊イトイ新聞」のおさるのキャラクターデザインほか、エディトリアルから映像、ネットまで様々な分野でデザインしている。その他、食べログの「グルメ著名人」としての活動や雑誌連載、飲食店のプロデュースなど食に関する仕事も。著書に『ファストアイデア25「発想スイッチ」で脳を切りかえる』(二見書房)、『#ナットウフ朝食』(TWJ books)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    スマートフォンの登場はデザインに大きな影響を与えた。消費行為に直接結びつくスマートフォン広告のデザインは他の広告とは戦略が違う。
  • 要点
    2
    デザインの「正解をつくる」ためには様々な方法がある。例えば、デザインを説明しやすいポイントやストーリーをデザインの中に入れ込み、説得力を高めたり、既存のデザインをうまく利用してデザインに信頼感をもたせたりといったことである。
  • 要点
    3
    AIは過去の作品の組み合わせで「それらしい」デザインはつくれるかもしれないが、新しいものは作れない。これからのデザインには「自分らしさ」や「個性」がこれまで以上に重要になる。

要約

デザインの距離

デザインと人との距離感
sesame/gettyimages

人間がつくったものには、すべてデザインがある。つまり、世界はデザインでできているのだと言える。世の中には商品パッケージやポスター、広告、CMなど、デザインがあふれている。そこには「商品を買ってほしい」「メッセージを読みとってほしい」など、様々な目的があり、必ず「デザインの意図」が存在する。

商品広告は、見る人との距離によってデザインが変えられている。遠くから目にするビルボードは大きい文字やロゴを使ったシンプルなデザインに、歩きながら見ることの多い駅貼りポスターは写真などビジュアルに訴えるデザインになっている。逆に、電車の中吊り広告は乗車中にある程度時間をかけて読むものなので、文字数が多くても問題ない。

また、新聞は読み手が「読もう」という気持ちを持って向かい合うものなので、文字数の多さや文字の小ささが問題にならない。読み手との心の距離が近いため、広告も読んでもらいやすい。雑誌も同様に「読ませるメディア」だが、新聞よりもターゲットが細分化されており、読み手に合わせた広告や誌面づくりがされている。

スマートフォンがもたらしたもの

最近は電車に乗っていても中吊り広告よりスマートフォン(以下スマホ)を見る人が多くなり、そうした変化に合わせて広告の在り方も変化している。

スマホは「その場で買う」という行動を起こさせることが可能だ。そのため、広告との距離感や見え方が他のものとは違っている。「つい買ってしまう」ことが起きやすくなり、広告が消費行動に直接影響するようになった。そのため、スマホの広告デザインには「タップされやすいデザイン」が意識される。スマホは「距離が一番近いメディア」、もしくは、「距離に自由を与えたメディア」と言えそうだ。

今、世界はスマホを中心に動いている。スマホはライフスタイルの中心にあり、行動に必要不可欠なものとなった。そして、様々な価値観が変わった。

たとえば、スマホを通じたインスタグラムの普及により、写真の形の在り方が変わった。従来、写真は縦長か横長のどちらかだったが、正方形の写真が一般化することになったのだ。このため、「縦か横か」で迷うことがなくなり、撮るスピードも上がった。加えて、スマホアプリのアイコンは正方形や丸など、縦長、横長が関係ないものが多いため、近年は「正方形に収めてほしい」というデザインの依頼も増えた。スマホが持ち込んだ文化は確実にデザインの世界に変化を与えている。

【必読ポイント!】 デザインの作戦

「伝えやすい」デザインで納得感を与える
justinmedia/gettyimages

デザインは、正解があるというものではない。しかし、どうやったら「正解をつくる」ことができるのか、本書では考察されている。その中からいくつかの方法を紹介しよう。

デザインの中に「誰かに伝えたくなる」要素を入れることは重要だ。「伝えやすい形」でつくると、説明しやすくなり、納得感のあるデザインになる。

例えば著者は、立命館大学のコミュニケーションマーク(ロゴ)をつくるという依頼を受けたとき、アルファベット一文字に「黄金比」を用いることにした。黄金比とは、古来から使われている美観を与える比率のことだ。このように、なるほど、という要素が一つあると、顧客へ提案する際に納得感が生まれやすい。

さらに言えば、デザインを決定する会議の場には最終決裁者がいないケースが多い。後から担当者が最終決裁者に伝える際、説明しやすいストーリーをデザインの中に入れ込んでおくことも大切だ。

既存のデザインの力を借りる

長年使われている特定の色や形の組み合わせに、ブランドが感じられることがある。例えばオレンジ色の背景に黒字なら吉野家だし、白と青に黒縁ならBMWといった具合だ。新しい商品でも、この「信頼感」を利用して購買を促すこともできる。

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要約公開日 2020.04.05
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