プロティアン

70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本術
未読
プロティアン
プロティアン
70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本術
未読
プロティアン
出版社
出版日
2019年08月13日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

令和の時代に入り、ビジネスパーソンを取り巻く環境は、大きな転換を迎えている。終身雇用の崩壊が取り沙汰され、大手企業でも早期退職の募集やリストラが相次ぐ。さらには、金融庁の金融審議会による「年金だけでは老後資金が2000万円不足する」という報告が話題をさらったことも、記憶に新しい。決して楽観視できない現実を前に、不安を抱く方もいるのではないだろうか。

キャリア論の専門家である著者は、そんな現代を生きるビジネスパーソンに、「プロティアン・キャリア」を提案している。プロティアン・キャリアとは、社会や環境の変化に応じて柔軟に変わることができる変幻自在なキャリアのことだ。10年後、20年後の未来を描いてみてほしい。そのとき自分は何をしているだろう? 今と同じ仕事を続けているのか。もしかしたら転職をしているかもしれない。定年退職をして、第二の人生を歩んでいる可能性もある。このように未来の解像度を上げていくと、意外とシビアな面が見えてくるかもしれない。シビアな現実をチャンスに変えて、充実した人生を全うするうえでも、プロティアン・キャリアの考え方は大いに役立つ。また、プロティアン・キャリアに重要な「キャリア資本」をいかに高めていけばいいのか。本書を読めば、自身の現状把握から具体的なアクションまでの道筋が明らかになるだろう。

安定した企業に入社すれば、一生安泰という時代は終わった。将来に漠然とした不安を抱えているビジネスパーソンにおすすめの一冊だ。

ライター画像
中山寒稀

著者

田中研之輔(たなか けんのすけ)
法政大学キャリアデザイン学部教授
博士(社会学)、専門はキャリア論
一橋大学大学院社会学研究科博士課程を経て、メルボルン大学、カリフォルニア大学バークレー校で客員研究員を務める。大学と企業をつなぐ連携プロジェクトを数多く手掛ける。著書は23冊。『辞める研修、辞めない研修』(共著、ハーベスト社)、『先生は教えてくれない就活のトリセツ』(筑摩書房)、『覚醒せよ、わが身体。』(共著、ハーベスト社)、『丼家の経営』(法律文化社)、『走らないトヨタ』(共著、法律文化社)など。民間企業の取締役や社外顧問を14社務める。

本書の要点

  • 要点
    1
    組織内キャリアを磨いても、企業が生涯保障してくれるわけではない。自律的に稼げるスキルを身につけ、成長できる人材になるためには、プロティアン・キャリアを形成することが重要となる。
  • 要点
    2
    プロティアン・キャリアを形成するには、キャリア資本の蓄積が欠かせない。キャリア資本は、「ビジネス資本」「社会関係資本」「経済資本」の3つから成る。
  • 要点
    3
    キャリア資本は、同じ仕事を日常的に繰り返すだけでは、微増にとどまる。働く環境や生活環境を変えることが増加につながっていく。

要約

【必読ポイント!】 なぜいま、プロティアンなのか

「ミドルの憂鬱」から抜け出したきっかけ

ビジネスシーンは、想像を絶するスピードで変化している。デジタル化に伴い、生活はさま変わりしている。今後もさらなる技術革命が進むだろう。

その一方で、加速度的な変化に対し、我が身を振り返るとどうだろうか。変われない自分。変わらない自分。いま所属する組織でしか働くことができない自分。もちろん、「変わらない」ことで逃げ切る生き方もあるだろう。

著者もかつては、手ごたえのなさを感じつつ、モチベーションが低下した日々を過ごす、「ミドルの憂鬱」に陥っていたことがある。組織で働く人が直面する停滞状態を、「キャリア・プラトー」という。これ以上のキャリアアップが見込めずに頭打ちになった状態である。そんな著者がミドルの憂鬱から抜け出すきっかけになったのが、「プロティアン・キャリア」との出会いだ。

プロティアン・キャリアと組織内キャリア
marchmeena29/gettyimages

「プロティアン・キャリア」とは、社会や環境の変化に応じて柔軟に変わることができる変幻自在なキャリアを意味する。思うがままに姿を変えられる、ギリシア神話に登場する神プロテウスが、その語源になっている。

従来型のキャリアは、昇進、昇格、収入、地位、権力、社会的安定などが右肩上がりに上昇・増幅していくモデルだ。それに対し、個人が主体的にキャリアを形成し、柔軟に変化させていくのが、プロティアン・キャリアである。

プロティアン・キャリアの概念が提唱された当時、日本は高度経済成長の真っ只中にあった。「働く=終身雇用」が基本で、転職は会社への裏切り行為という風潮があったのだ。

そのため、一社の中でキャリアを積んでいく、「組織内キャリア」が注目されていた。組織内キャリアの根底にあるのは、組織が個人のキャリアを育成し、組織の生産性を向上させるという発想だった。当時は、プロティアン・キャリアの概念をきちんと評価できるような環境ではなかったといえる。

終身雇用の限界
g-stockstudio/gettyimages

近年、プロティアン・キャリアが注目される土壌が整いはじめている。国は、70歳までの雇用を、企業の努力義務として発表した。その一方で、大企業のトップや経済連の会長からは、「終身雇用を守ることは難しい」という発言が相次ぐ。国は70歳までの雇用を求めるのに対し、企業は終身雇用が厳しいと主張しているのだ。

そこで、雇用される側には2つの選択肢が考えられる。1つは、「企業は終身雇用をすべきだ」と主張し続けることだ。もう1つは、今後の方向性を理解したうえで、自ら対応策を練ることである。本書では、後者の立場で、50年間いかに働き続けていくかを考えていく。

3つのアプローチ

主体的にキャリアを形成するアクションとして増えてきているのが、次の3つのアプローチである。まずは、社員が部門や役職、事業所などの境界線を越えて、会社に貢献する「バウンダリレス・キャリア」である。次に、本職を持ちながら第二のキャリアを築く「パラレル・キャリア」だ。そして、「副業・兼業」である。

企業側は今後、終身雇用を維持できないという姿勢を明確に打ち出してくるだろう。同時に社員には、自律的に稼げるスキルを身につけるように求めてくるはずだ。

組織内キャリアを磨き上げても、会社は生涯保障をしてくれるわけではない。企業と労働者の両方が、キャリアを抱え込むことに限界を感じ始めている。そこで新たに脚光を浴びているのが、プロティアン・キャリアなのだ。

キャリア資本の構築

あなたの「資産」を見直そう

プロティアン・キャリアの戦略を練る際には、組織戦略の考え方を参考にするとよい。そして、プロティアン・キャリアの本質は、変化しながら経験を蓄積する内面的な変身だ。そのベースには、自らのやりがいや目的を達成することで得られる心理的な成功がある。プロティアン・キャリアを形成するためには、個人の「キャリア資本の蓄積」に力点を置かなければならない。

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要約公開日 2020.04.02
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