ぜんぶ、すてれば

未読
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ぜんぶ、すてれば
出版社
ディスカヴァー・トゥエンティワン

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出版日
2020年04月20日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

本書には、驚くべき点が2つある。

1つ目は、「目次」が存在せず、冒頭から著者の中野善壽氏が紹介されていることだ。

中野氏は、元寺田倉庫CEO。実業家としてその名を知られながら、メディアの取材をほとんど受けないため、その実像がほとんど見えてこない。本を出版しませんかというオファーはこれまで数多くあったそうだが、中野氏がまったく興味を示さず、すべて断ってきた。自分の実績をひけらかすことも、目立つことも好まないからだ。なぜ、この本については引き受けることにしたのだろうか。答えは単純。「ぜんぶ、捨てれば」という、企画書のタイトルが気に入ったからだ。さらに、「ビジネスの要諦ではなく、一人の人間としてのあり方を伝える本をつくりたい」という、担当の若手編集者によって書かれた一文を読み、即断したという。

そんな本書には、やさしくシンプルな言葉で、中野氏の信念がつづられている。周りから見れば成功した人間に見えても、中野氏は決しておごることなく、揺らぐことなく、「持たない」生き方を貫いている。「持たない」理由は明確である。自分が大切にしたいものを見失わないためだ。それは、自由であったり、未来であったり、今という時間であったり。言われてみるとなるほどと納得できるけれど、これほど単純なことであっても、なかなか気がつけない。それが中野善壽氏の生き様から伝わってくる。

そうそう、もう1つの驚くべき点も忘れてはいけない。本書の最後に、著者印税は全て寄付されると記してあることだ。中野氏の思いに触れたあとにこの一文を見ると、深い納得感を得られるに違いない。

ライター画像
中山寒稀

著者

中野善壽(なかの よしひさ)
東方文化支援財団代表理事 元寺田倉庫代表取締役社長兼CEO。
1944年生まれ。幼少期、祖父母の元で「全ては自己責任」という考え方を厳しく叩き込まれ、その意識は人一倍強く持っていると自負する。好きな言葉は「因果応報」。
その後、弘前高校、千葉商科大学卒業後、伊勢丹に入社。子会社のマミーナにて社会人としてのスタートを切る。1973年、鈴屋に転職、海外事業にも深く携わる。1991年、退社後すぐに台湾に渡る。台湾では、力覇集団百貨店部門代表、遠東集団董事長特別顧問及び亜東百貨COOを歴任。
2010年、寺田倉庫に入社。2011年、代表取締役社長兼CEOとなり、2013年から寺田倉庫が拠点とする天王洲アイルエリアを、アートの力で独特の雰囲気、文化を感じる街に変身させた。2018年、日本の法人格としては初となるモンブラン国際文化賞の受賞を果たす。
2015年12月、台湾の文化部国際政策諮問委員となる。
2019年6月寺田倉庫を退社。2019年8月、地域や国境を越えた信頼感の醸成をはかり、東方文化を極めたいという飛躍したビジョンを持つ東方文化支援財団を設立し、代表理事に。現在に至る。

本書の要点

  • 要点
    1
    自分の将来をつくるのは、今日の自分だ。すべては因果応報である。だから、今日の自分を妨げるものをぜんぶ捨てて、身軽に歩いていこう。
  • 要点
    2
    モノを所有することは、不安を増やすことになる。モノを持たなければどこでも新しい生活を始められるし、それは人生の選択肢を広げることにもつながる。
  • 要点
    3
    本当に残るのは、「形にならない思い」である。叱ったり指摘したりするときに「思い」も一緒に伝えなければ、相手の心には残らない。その形なきものをどれだけ残せるか。それが人としての力量である。

要約

【必読ポイント!】 大切なのは、今日を生きること

今日がすべて
MissTuni/gettyimages

何より伝えたい言葉は「今日がすべて」である。

情報が多く、将来のことも、周りの人のことも気になる時代において、「今に集中する」ことは難しい。しかし、過去にとらわれず、未来に揺さぶられずに、夢中になって楽しむことができるのは、今このときだけだ。その結果は、後にいろいろな形となって巡ってくる。

それに、全ては因果応報であり、自分の将来をつくるのは今日の自分である。だから、その自分を妨げるものはぜんぶ捨てて、軽やかに歩いていこう。

また、今日できることは、今すぐやることも大切だ。

著者は、朝目覚めるとすぐにスタッフに電話で指示を出す。最初の電話から2時間ほど経つと、今度は進捗状況の確認である。次に、お昼ごろに連絡をする。せっかちだと感じる人もいるかもしれないが、自分ではそう思わない。

もしかしたら、明日死ぬかもしれないからだ。「明日がある」という希望は持つにせよ、明日が絶対に来ると信じてはいけない。だから、今日できることは、今すぐやる。「何からやればいいのか」と悩まずに、思いついた順になんでもすぐやる。そうすれば、後悔することはない。

何も考えずに思い切ればいい

野球の試合で、ウェイティングサークルからバッターボックスに行くまでの間に不安を背負ったように見える選手は、絶対にヒットが打てない。あれこれ考えず、無心になって思い切りバットを振る。ヒットの確率は、3回に1度程度だ。

仕事や日常生活の多くは、打席のタイミングを自分で決めなくてはならない。「まだ早すぎる。準備ができていない」と言ってためらっていても、「準備万端の日」は一生やって来ないものだ。

何よりも大事にすべきなのは、自分に嘘をつかないことである。「できることを精一杯やってきたか?」と自分に問いかけ、そこに嘘がなければ思い切ってやる。そこで失敗したとしても、また打席はやってくる。

やめる勇気が大切
uatp2/gettyimages

車にブレーキとアクセルがあるように、人間も「進む」と「止まる」をバランスよく使い分けることが必要だ。若いうちは「とにかくなんでもやってみなさい」と言われるが、進みっぱなしもよくない。

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要約公開日 2020.06.14
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