Beyond MaaS

日本から始まる新モビリティ革命-移動と都市の未来-
未読
Beyond MaaS
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日本から始まる新モビリティ革命-移動と都市の未来-
未読
Beyond MaaS
出版社
出版日
2020年03月09日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

要約者にとって、MaaSと聞いて真っ先に思い浮かぶのはライドシェアリングのUberだ。スマホアプリを使って現在地と行きたい場所を入力すれば、10分後には自分のいる場所に車が来て、目的地まで送り届けてくれる。要約者にとってのMaaSとは、こうした配車サービスアプリくらいの認識でしかなかった。

しかし本書を読み進めていくうちに、MaaSを過小評価していたことを思い知らされることとなった。MaaS(Mobility as a Service:モビリティ・アズ・ア・サービス)をそのまま日本語に訳すと「サービスとしての移動」だ。事業者とユーザーが双方向でつながり、マイカーよりも便利な交通サービスの選択肢を提供するものと定義される。

MaaSがその本領を発揮するのは、交通産業を越えて他の産業とつながるときである。それが本書のタイトルであるBeyondMaaSだ。BeyondMaaSの領域では、交通産業だけにとどまらず、他産業を巻き込んでまちづくりや社会課題の解決が目指される。MaaSはゲームチェンジャーとも言うべき存在なのだ。

本書には不動産、小売り、広告など、すべての産業にMaaSが絡んでくる(すでに現在進行中の)未来が描かれている。たとえばグーグルは、Web広告で表示された店舗を利用する際、そこに行くまでのモビリティを無料で提供するモデルの特許を出願しているそうだ。

BeyondMaaSは今後、全産業に計り知れない変化をもたらすだろう。これからを生きるすべてのビジネスパーソンに一読をおすすめしたい。

著者

日高洋祐(ひだか ようすけ)
MaaS Tech Japan代表取締役
2005年、鉄道会社に入社。ICTを活用したスマートフォンアプリの開発や公共交通連携プロジェクト、モビリティ戦略策定などの業務に従事。14年、東京大学学際情報学府博士課程において、日本版MaaSの社会実装に向けて国内外の調査や実証実験の実施により、MaaSの社会実装に資する提言をまとめる。
現在は、MaaS Tech Japanを立ち上げ、MaaSプラットフォーム事業などを行う。国内外のMaaSプレーヤーと積極的に交流し、日本国内での価値あるMaaSの実現を目指す

牧村和彦(まきむら かずひこ)
計量計画研究所 理事 兼 研究本部企画戦略部長
1990年、一般財団法人計量計画研究所(IBS)入所。モビリティ・デザイナー。 東京大学博士(工学)。筑波大学客員教授、神戸大学客員教授他。都市・交通のシンクタンクに従事し、将来の交通社会を描くスペシャリストとして活動。代表的な著書に、『バスがまちを変えていく~BRTの導入計画作法』(IBS出版)、『交通まちづくり~地方都市からの挑戦』(共著、鹿島出版)、『モビリティをマネジメントする』(共著、学芸出版社)、『2050年自動車はこうなる』(共著、自動車技術会)など多数

井上岳一 (いのうえ たけかず)
日本総合研究所 創発戦略センター シニアスペシャリスト
1994年、東京大学農学部卒業。農林水産省林野庁、Cassina IXCを経て、2003 年に日本総合研究所に入社。Yale大学修士(経済学)。南相馬市復興アドバイザー。森のように多様で持続可能な社会システムのデザインを目指し、インキュベーション活動に従事。現在の注力テーマは、地域を持続可能にする「ローカルMaaS」 のエコシステム構築。著書に『日本列島回復論』(新潮選書)、共著書に『AI自治体』(学陽書房)、『公共IoT』(日刊工業新聞社)などがある

井上佳三(いのうえ けいぞう)
自動車新聞社 代表取締役 兼 LIGARE編集長
2007年、自動車新聞社入社。立命館大学OIC総合研究機構客員研究員。モビリティサービスの専門誌「LIGARE」(リガーレ)を立ち上げ、移動の質の向上がQOLの向上につながることをモットーに数多くのモビリティを取材。18年からLIGARE. Newsを立ち上げ、「ひと・まち・モビリティ」に関わるニュースを配信している。15年には立命館大学でFuture Mobility研究会に参画し、 豊かなモビリティ社会実現を 目指す。モビリティサービスやまちづくりの調査・企画・開発のサポートを行うAMANEを設立

本書の要点

  • 要点
    1
    MaaSとは、交通の新しい選択肢を提供し、事業者とユーザーが双方向でつながり、オーダーメイドのサービスによってマイカーよりも便利で持続的なサービスと価値を提供するものである。
  • 要点
    2
    「BeyondMaaS」は、他産業を巻き込んでまちづくりや社会課題の解決をする領域だ。BeyondMaaSは、MaaSのビジネスモデルを語るにあたって最も重要な領域である。
  • 要点
    3
    住宅・不動産×MaaSの領域では、駐車場を極力少なくした住宅の開発が進んでいる。これは、住民、不動産会社、連携する交通事業者、そして行政にメリットをもたらす、三方よしのモデルである。

要約

MaaSとは何か

オーダーメイドで移動ニーズを満たす
metamorworks/gettyimages

世界最大の交通事業者連合組織「UITP」によると、MaaSはこう定義されている。「MaaSとは、さまざまなモビリティサービス(公共交通機関、ライドシェアリング、カーシェアリング、自転車シェアリング、スクーターシェアリング、タクシー、レンタカー、ライドヘイリングなど)を統合し、これらにアクセスできるようにするものであり、その前提として、現在稼働中で利用可能な移動手段と効率的な公共交通システムがなければならない。このオーダーメイド・サービスは、利用者の移動ニーズに基づいて最適な解決策を提案する。MaaSはいつでも利用でき、計画、予約、決済、経路情報を統合した機能を提供し、自動車を保有していなくても容易に移動、生活できるようにする」

他にもさまざまな定義があるが、交通の新しい選択肢を提供し、事業者とユーザーが双方向でつながり、オーダーメイドのサービスによってマイカーよりも便利で持続的なサービスと価値を提供するものだという点は共通している。

MaaSビジネスの創り方

MaaSのステークホルダー

MaaSのステークホルダーは以下の4つだ。

(1)移動する人(ユーザー)

(2)移動させる主体(交通事業者)

(3)MaaS事業を行う人(MaaSオペレーター)

(4)地域の周辺事業者や自治体

1つの組織が2つの役割を兼ねている場合もある。たとえば鉄道会社がMaaSを展開する場合は、MaaSオペレーターと交通事業者を兼ねている。

MaaSオペレーターがMaaSのサービスを提供する場合には、ユーザーの利便性向上に加え、交通事業者の経営効率化やサービス向上が目的となることもある。また周辺事業者や自治体を巻き込んで、地域の課題を解決するためにMaaSを行う場合もある。

MaaSビジネスを始める上では、それぞれのステークホルダーの立場や考え方を把握し理解したうえで進めていくことが必要だ。より革新的なサービスであればあるほど、与えるインパクトが大きくなる一方で、反発や誤解も生じやすくなるからだ。

MaaSの機能
Asia-Pacific Images Studio/gettyimages

MaaSのユーザー向けの基本的な機能としては「ナビゲーション機能(地図、経路検索、運賃や所要時間表示)」「予約機能」「決済機能」「メッセージ機能などの付属機能」がある。加えて事業者や行政機関向けには「データの可視化機能」「交通機能分析機能」「交通制御機能」があり、これらを「MaaSコントローラー機能」と呼ぶ。

MaaSコントローラー機能とは、モビリティとユーザーの行動をデータに基づいて調整する機能のことだ。たとえば、ユーザーがMaaSアプリで経路検索をした際に、ユーザーの検索数の傾向や過去のデータ分析から混雑や渋滞が予想されたとしよう。そこでMaaSコントローラー機能を使うと、ユーザーに別の交通手段を推薦したり、交通事業者に増便をリクエストしたりして、需給の平準化を図れるようになる。この仕組みは、災害時やイベントで混乱が予想されるときなど、広く応用可能だ。

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要約公開日 2020.07.10
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