なぜこの店で買ってしまうのか

ショッピングの科学
未読
なぜこの店で買ってしまうのか
なぜこの店で買ってしまうのか
ショッピングの科学
未読
なぜこの店で買ってしまうのか
出版社
早川書房
出版日
2014年03月06日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

いつ行っても居心地がよくて、行くたびについ何かを買ってしまう店もあれば、おしゃれなディスプレイで、センスのよいものがどれだけ並んでいても、なんとなく商品に手が伸びない店もある。もしかするとそれは、店側が「ショッピングの科学」を取り入れているかどうかの違いかもしれない。1999年にアメリカで刊行され、世界的なベストセラーとなった本書は、徹底的なフィールドワークによって店舗と顧客をリサーチし、それによって導きだされたショッピングの科学を説いている。「追跡者(トラッカー)」と呼ばれるリサーチャーが、店内で客を尾行し、何を見て、何を触り、1カ所に何分滞在し、レジで何分待たされて、といったあらゆる行動を事細かに記録することで、客と店のかかわりが明らかになり、なぜ客は買うのか、なぜ買わないのか、どうすれば客が買うようになるのかという答えが見えてくるという。

著者が繰り返し語っているように、ショッピングにおける人々の行動を決定する原則は普遍的なものがほとんどだ。だが、それを踏まえた店づくりをしない店舗はあまりに多いという。本書が世に出てから15年がたった今でも、初めて読む読者には「そういうことだったのか」という新鮮な驚きが数多くあるだろう。売る側の人も、買う側の人も、ショッピングに対する新たな視点が芽生え、より賢い選択ができるようになるはずだ。

著者

パコ・アンダーヒル
マーケティング・コンサルタント会社エンバイロセル社の創業者およびCEO。ニューヨークを拠点に世界中のあらゆる業種・形態の店舗で顧客行動を観察、そこから導き出す店づくりのノウハウは多くの一流企業で活用されており、顧客にはウォルマート、マイクロソフト、マクドナルドなどが名を連ねる。2002年にはエンバイロセルジャパンを設立し日本での事業を開始。著者自身は博報堂とアドバイザー契約を結び、セミナーやコンサルテーションを積極的に行なっている。1999年に刊行された本書は全米160万部超のベストセラーを記録して27言語に翻訳され、日本でもビジネス書のスタンダードとなっている。他の著書に『なぜ人はショッピングモールが大好きなのか』『彼女はなぜ「それ」を選ぶのか?』(以上早川書房刊)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    店という空間はヒトという動物の特性になじむようにする必要がある。ショッピングにおいて、適合性と収益性は結びついており、適合性を心がければ収益性は保証される。
  • 要点
    2
    客に手に取ってみたいと思わせ、さらには買いたいと思わせるのは簡単ではない。意思決定の鍵となるのは、感触と試用だ。
  • 要点
    3
    ショッピングの科学は普遍的なものだが、店舗や客の好みや行動は進化し続ける。消費者がどのような生活を望み、何を必要としているかに常に注意を払わなければ、小売店は時代に取り残されるだろう。

要約

ショッピングの科学とは

客を尾行する追跡者(トラッカー)
VladimirFLoyd/iStock/Thinkstock

赤のセーターとブルージーンズ、顎鬚を生やした髪の薄い男性が、土曜日の午前11時7分に百貨店に入り、まっすぐ1階の財布売場へ向い、12個すべてを手に取り、そのうち4個の値札をたしかめ、1つを選んで、11時16分にネクタイの棚に移り、7本全部のタグを見て……11時23分にレジの行列の3番目に並び、順番がくるまで2分51秒待ち、クレジットカードで支払いをして、11時30分に店を出た――。

「追跡者(トラッカー)」と呼ばれる買い物客のリサーチャーの仕事は、買い物客をこっそり尾行し、その行動を逐一記録することだ。店の入り口をぶらついて客を待ち、店内をどこまでも追いかけ、「トラックシート」と呼ばれる記録用紙に客のあらゆる行動を記録する。トラッカーは1日に約50人の買い物客を調査することができ、通常、1つの現場には複数のトラッカーが配置される。こうして集まった膨大な情報は、数日かけてデータベース化される。

筆者が創業し、CEOを務めるエンバイロセル社は、ショッピングの科学を導き出すべく、買い物客と商店のかかわりをリサーチする。あらゆる小売業、銀行、ファストフード店、駅、空港、図書館、ホテルなど調査対象は幅広い。アメリカでは、『フォーチュン』誌の上位100社のうち約3分の1が同社のクライアントだ。調査目的に応じて店にはビデオカメラも設置し、10台ほどのカメラを1日8時間、特定のエリア(出入口、陳列棚など)に向けて回す。調査項目は900にも及ぶ。

店を客に適合させる
foto76/iStock/Thinkstock

これまでのリサーチの結果、店のなかでの人の行動について、多くのことがわかった。いくつか例を挙げよう。

・試着室に持って入ったジーンズを実際に買う割合 男…65%、女…25%

・コンピュータを眺めている客が実際に買う割合 土曜日の午前中…4%、午後5時以降…21%

・ショッピングモールの家庭用品店で客が買い物カゴを使う割合…8%、カゴを使う客が実際に品物を買う割合…75%、カゴを使わない客が品物を買う割合…34%

最後の項目については、店にカゴを使う客の数を増やす方法を提案する。ショッピングの科学とは、調査、比較、分析を通して、店を客により適合させるための実践的な学問だ。

なぜ科学が必要か

ショッピングが成熟した先進諸国では、需要が膨大な新興国と違い、既存店のスペースや場所を変えずにいかにビジネスを拡大するかが大きな焦点となる。テレビ、ラジオ、雑誌、ウェブサイトが際限なく広告を発信しているため、消費者の心をつかむのも難しい。また、次々に新商品が生まれるなか、ブランドの影響力は薄れてきている。つまり、消費者にとって物を買うときの決断が、店の外の状況よりも店内での印象や情報に左右されるようになっているのだ。

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要約公開日 2014.08.05
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