アンガーマネジメント

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アンガーマネジメント
出版社
日本経済新聞出版

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出版日
2020年03月13日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

「アンガーマネジメントか……」、本書を手にとり、ひそかにため息をついた。身近にあっていまだ御しきれていないもの。それが己の怒りの感情であり、もう逃げてはいられないなとも感じた。

怒っても何もいいことはない。そんなことは言われなくてもわかっている。少々ふてくされながら本書を開くと、一気に引きこまれてしまった。怒りとはそもそも何なのか。なぜそのような感情が生まれるのか。そうした怒りの性質や特徴をあらためて確認できたことは、わたしを冷静にしてくれた。仕組みや構造がわかると、それはもはや未知の現象ではなくなる。

本書には「怒り」にまつわる生々しい事例がふんだんに盛りこまれている。上司の立場でも部下の立場でも、いちいちうなずいてしまい既視感がハンパなかった。わたしたちが普段の職場で直面する場面が取り上げられているうえに、どう対応すればよいのかという「模範解答」が示されているので非常に納得感が高まった。知識という基礎理解と模範的ゴールが見えていることで、無理なくアンガーマネジメントに向けた取り組みの第一歩を踏み出すことができたように思う。

アンガーマネジメントとは、怒りと「うまく付き合う」ことなのだという。ここでは怒りやイライラを感じる自分を責める必要はない。肝心なのは、感情が生まれた後の扱い方である。まずは自分と向き合い、そして相手と向き合う余裕が生まれれば、仕事もプライベートも人生そのものも好転し始めるに違いない。そう希望をもたせてくれる一冊だ。

ライター画像
金井美穂

著者

戸田久実(とだ くみ)
アドット・コミュニケーション(株)代表取締役。一般社団法人日本アンガーマネジメント協会理事。
立教大学卒業後、大手企業勤務を経て研修講師に。銀行・生保・製薬・通信・総合商社などの大手民間企業や官公庁で「伝わるコミュニケーション」をテーマに研修や講演を実施。対象は新入社員から管理職、役員まで幅広い。
講師歴27年。「アンガーマネジメント」や「アサーティブコミュニケーション」「アドラー心理学」をベースとした「言葉がけ」に特化するコミュニケーション指導に定評があり、これまでのべ指導数は22万人に及ぶ。近年では、大手新聞社主催のフォーラムへの登壇やテレビ、ラジオ出演など、さらに活躍の幅を広げている。
主な著書に『アンガーマネジメント 怒らない伝え方』『アドラー流 たった1分で伝わる言い方』(以上かんき出版)『働く女の品格』(毎日新聞出版)『マンガでやさしくわかるアンガーマネジメント』(日本能率協会マネジメントセンター)など多数ある。

本書の要点

  • 要点
    1
    チームの生産性向上には、自分らしく働ける「心理的安全性」が欠かせない。その実現には、怒りとうまく付き合うための「アンガーマネジメント」に全チームで取り組むのが有効だ。
  • 要点
    2
    怒りとは、外的要因に起因するものではなく、自分の中から生まれ出る感情である。
  • 要点
    3
    コアビリーフと現実との間にギャップが生じると怒りが生まれる。怒りの裏側には不安や心配、困惑などの第一次感情が隠れている。
  • 要点
    4
    怒りとうまく付き合っていくための心理トレーニングには、衝動的行動を回避するための対処法と長期的な体質改善の2つのアプローチがある。

要約

いま、アンガーマネジメントが求められているワケ

チームのパフォーマンスと心理的安全性
Deagreez/gettyimages

いつもなんとなく社員がイライラしている。上司は人前で部下を怒鳴りつけ、みんながビクビク仕事をしている。こうした職場はまさに「不機嫌な職場」だ。

Google社が2012年から4年かけて取り組んだ大規模な労働改革のすえにたどり着いた、有名な成果報告がある。「生産性を上げ、チームとして成功するためには、心理的安全性が欠かせない」ことを突き止めたものだ。

心理的安全性とは、一人ひとりが安心して、自分らしく働けること。すなわち「自己認識・自己開示・自己表現ができること」、安心してなんでも言い合える職場ということである。人の顔色ばかり窺ってしまうような職場ではその実現は難しいだろう。

だからこそ、怒りとうまく付き合うための「アンガーマネジメント」に全チームで取り組む必要性がある。とくに気をつけたいのが、上司の在り方である。上に立つ者が自分の怒りをマネジメントできないと、怒りはどんどん下へと伝播していく。それでは「不機嫌な職場」は改善しない。

パワハラ防止法とアンガーマネジメント

いま、大企業を中心とした多くの組織が、2020年6月に施行されたパワハラ防止法の対策に取り組んでいる。パワハラ防止策をとることが義務づけられているため、管理職にアンガーマネジメントに取り組ませる動きが勢いづいているものの、パワハラの線引きは多くの人にとって悩みの種だろう。

「働き方改革」や「ダイバーシティー&インクルージョン」という言葉に代表されるように、価値観が多様化していることを肌に感じる。また、自分にとっての「常識」は、相手にとっても「常識」になるとは限らない。

マネジメント層にとって大事なのは、部下のよきせぬ言動に直面しても自分の「当たり前」を押しつけない心構えだ。お互いの違いを認識した上で、「今後どうしていくのか」という未来に向けた対話を持つことが不可欠である。

怒りの正体

怒りとは自分の内から生まれるもの

「あの人のせいでイライラする」、「取引先が何かとわたしに要求してくるのでムカムカする」など、多くの人は外的要因に怒りの源があると思っている。

怒りは自分の中から生まれ出る感情だからこそ、コントロールできる。これをわかっていないと、アンガーマネジメントはできない。なぜなら外的要因のせいにすることは、「わたしの感情は誰かにコントロールされます」と宣言していることに等しいからだ。

怒りの性質を知る
vadimguzhva/gettyimages

怒りには、高いところから低いところへと流れる性質がある。上の立場に跳ね返すより、自分より力関係の弱い下の立場へと矛先を変えてぶつけてしまうからだ。家庭や学校でも同様だ。もし上司より部下のほうが知識や情報を持っていれば、上司が逆にパワーハラスメントを受けることもある。

怒りは身近な相手に対して強くなる傾向がある。

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要約公開日 2021.01.19
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