スマホ脳

未読
スマホ脳
出版社
出版日
2020年11月20日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.5
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おすすめポイント

何か調べごとをしようとしてスマホを一度手に取って、ついでにメールチェックをし、SNSのタイムラインやトレンドワードを確認していたら、当初の目的とは全然関係のないことに没頭してしまっていた――そんな経験をしたことがある人は多いのではないだろうか。

人類は歴史上、危険な動物や他人の襲撃、食料不足といった脅威に怯え、身を守ることを最優先させて生き延びてきた。そのため脳は、カロリーをできるだけ欲すようになった。また、危険をいち早く察知するため、一つのことよりも複数の対象に関心を分散させるように進化してきた。だがそのような脳の機能が、まさに現代社会で不具合を生じさせている。それを加速させているのがスマホだ。実際にiPhoneやiPadを世に出したスティーブ・ジョブズは、スマホの依存性や悪影響を認識し、子供の利用時間に制限を課していたという。

スマホに依存すると、集中力が低下し、孤独感が強まり、心の不調に陥る危険性があるのは明らかだ。この問題への対策として本書で提案されている方法は、一見するとシンプルである。だが生物進化の観点から脳の機能について解説しており、たしかな説得力を感じさせる。

本書を読めば、スマホに依存する生活を送っている人でも、集中力を高め、心の不調を予防できるようになるだろう。

ライター画像
大賀祐樹

著者

アンデシュ・ハンセン
1974年生まれ。スウェーデン・ストックホルム出身。前作『一流の頭脳』が人口1000万人のスウェーデンで60万部の大ベストセラーとなり、世界的人気を得た精神科医。名門カロリンスカ医科大学で医学を学び、ストックホルム商科大学でMBA(経営学修士)を取得。

本書の要点

  • 要点
    1
    人類はこれまでほとんどの期間、狩猟採集生活を送り、さまざまな危険に囲まれていた。そうした生活に合わせて進化した脳は、現代社会に適応できていない。
  • 要点
    2
    スマホやSNSは脳の報酬系を刺激して依存させ、集中力を低下させる。ITの先駆者たちはそのデメリットを認識し、自分や子供のスマホ利用時間を制限していた。
  • 要点
    3
    SNSはむしろ人を孤独にさせる。とくに子供のスマホ利用は、自制心の発達に悪影響をもたらす。
  • 要点
    4
    睡眠時間を増やし、運動をして、スマホ利用時間を制限すべきだ。それが集中力を高め、心の不調を予防する方法である。

要約

人類の脳は現代社会に適応できない

脳がハッキングされている
kentoh/gettyimages

スマホは、いまや私たちにとってごく当たり前の存在となった。しかしこうした文明は、人間の歴史からすると、ごく最近のものにすぎない。人間は、地球上に現れてから99.9%の時間を、狩猟と採集に費やしてきた。そのため私たちの脳は、今でも当時の生活様式に最適化されており、この1万年のあいだ変化していない。生物学的にいうと、脳はまだサバンナで暮らしている。脳は睡眠や運動、お互いへの強い欲求を備えており、こうした欲求を無視し続けると、精神状態が悪くなる。実際に先進諸国のほとんどで、睡眠障害の治療を受ける若者が爆発的に増えている。

だが時間のムダだとわかっていても、私たちはスマホを手放すことができず、無意識のうちにスマホを取り出し、集中力を低下させている。これは脳の報酬系がハッキングされているからだ。人間が新しいテクノロジーに適応するべきなのではなく、テクノロジーが私たちに順応すべきである。テクノロジーには一長一短があると理解し、金儲けのために人間の特質を利用するのではなく、人間に寄り添ってくれるような製品を求めていかなければならない。

身体は社会の急激な変化に追いつけない

生物の進化には目的も意義も存在しない。進化は突然変異と環境への適応によって生じる。たとえば極地に生息するクマの場合、茶色の毛皮よりも白い毛皮を持っていたほうが生存しやすかった。それと同様に、10万年前のサバンナに生きた人類は、甘い果実を食べると大量のドーパミンが分泌されるように進化した。食べられるだけお腹に詰め込める遺伝子を持った個体のほうが生存しやすく、子孫を残す確率が高かったからだ。こうして強いカロリー欲求を持った子供が徐々に増えていき、何千年か経つとカロリーへの欲求は一般的な性質となった。

現代社会では、食料が限られていたサバンナと違って、ファストフード店に行けばお腹がはち切れそうになるまで毎日でも食べ続けることができる。だがカロリー欲求に従い暴食を続ければ、肥満や糖尿病で身体が蝕まれてしまうだろう。

カロリー欲求は、人類の歴史の99.9%の期間、私たちの生存を維持してきた。しかしほんの数世代の社会の変化によって、こうした性質が突如として害を引き起こすようになった。人間は長年、狩猟採集的な環境に適応するべく進化し続けてきた。だから急激な社会の変化に対応できていないのだ。

ネガティブのほうがポジティブより強い理由
oatawa/gettyimages

脳は生き延びて遺伝子を残すため、「今、どうすればいい?」という問いに答えようとし、感情によって正しい方向に自分を動かそうとする。感情とは、周りで起きていることに応じて、身体の中で起きる現象を脳が反応としてまとめたものである。人間のあらゆる活動は、自分の精神状態を変えたいという欲求の結果である。たとえば脅かされると、私たちは怯えや怒り、逃げや攻撃という行動をとる。また、身体にエネルギーが足りなくなると、お腹が空き、食べ物を探そうとする。このとき、私たちは感情に支配されている。

人類の歴史上、ネガティブな感情は、即座に対応しなければならない脅威と結びつくことが多かったため、ポジティブな感情よりも優先されてきた。私たちの祖先は、脅威のほうがはるかに多い環境に生きていたのだ。だから強いストレスや心配事があると、それ以外のことを考えられなくなってしまう。

うつはもともと防御機能だった

ストレスを感じると、心臓の拍動が早くなり心拍数が上がる。それは人間も動物も同じだ。

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要約公開日 2021.02.02
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