生きがいについて

未読
日本語
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生きがいについて
出版社
みすず書房

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定価
1,760円(税込)
出版日
2004年10月04日
評点
総合
4.5
明瞭性
5.0
革新性
4.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

パンデミックに翻弄されているあいだ、楽しみにしていた行事やイベント、やりがいのある大きな仕事が頓挫して、突然ストンと暗い穴に落ちてしまったような感覚だったのではないだろうか。ひとりで過ごす時間が急に増え、自分の生きがいとは、生きる意味は何なのかと、考え込むこともあったかもしれない。

『生きがいについて』を読むと、今も昔も人間の本質が何も変わっていないことを、改めて思い知らされる。本書が初めて刊行されたのは1966年、今から約半世紀も前のことだ。ハンセン病療養所での体験をもとに、「生きがい」についての思索を書き記した一冊であるが、今読んでも何ひとつ色褪せていないことに驚きを隠せない。生きがいというものが人間にとっていかに大事で、生死をも左右する重大な問題であるかが浮き彫りにされている。

新型コロナ対策において「命と経済活動、どちらを優先させるか」という論争は絶えず出続けているが、経済活動=生きがい、という見方もできるだろう。特に芸術や音楽など「活動を行うこと自体に喜びがある」という分野や、「店に立つことが生きがい」というような店主なども、そういった意味での死活問題を併せ持つ。旧約聖書には「人はパンのみにて生くるものにあらず」という言葉があるが、衣食住が足りることと生きがいの欲求が満たされることは、必ずしもイコールではないことは誰もが感じうるところだろう。

本書が長く読み継がれる理由は、本質を突いた普遍性にある。先が見えない今だからこそ、じっくりと向き合いたい名著である。

ライター画像
矢羽野晶子

著者

神谷美恵子(かみや みえこ)
1914年岡山に生まれる。1935年津田英学塾卒、プリンマー大学・コロンビア大学に留学。1944年東京女子医専卒、同年東京大学医学部精神科入局。1952年大阪大学医学部神経科入局。1957-72年長島愛生園勤務。1960-64年神戸女学院大学教授。1963-76年津田塾大学教授。医学博士。1979年10月22日没。

本書の要点

  • 要点
    1
    生きがい感とは「腹の底から湧き出る喜び」だ。理由などない、ただ「やりたいからやる」活動から感じられるものである。
  • 要点
    2
    生きがいの欲求とは「個性的な自我の欲求」であり、これが満たされた時に人は高揚を感じる。たとえ他人から見たら「成功」であっても、本人が高揚を感じなければ成功ではない。
  • 要点
    3
    人の生きがいは病や死などによって簡単に奪われてしまう。これは時代を経ても変わることはない。
  • 要点
    4
    生きがいを失った人は疎外感を感じ、孤独になり、自殺を考える。そうした人は、自分の存在が何かのために必要だと、強く感じさせてくれる新しい生きがいを求めてもがいている。

要約

【必読ポイント!】 生きがいとは

腹の底から湧き上がるよろこび
nata_zhekova/gettyimages

生きがいについて、もっとも正直なものは感情だろう。心の中にすべてを圧倒するような、「腹の底から」湧き上がる強いよろこび。これこそが、生きがい感の最も素朴な形だろう。

人間の活動の中で真のよろこびをもたらすものは、目的、効用、必要、理由などと関係ない「それ自らのための活動」であるという。ただ「やりたいからやる」ことのほうが、いきいきとしたよろこびを生む。

よろこびには「利他的な気分を生みやすい」という特徴がある。生きがいを感じている人は、他人に対しても恨みや妬みを感じにくく、寛容でありやすい。自分より幸福な人々に対して、憎しみの念が入り込む余地がないからだろう。

生きがい感には幸福感よりも「一層未来にむかう心の姿勢」がある。現在の生活が暗たんとしたものであっても、将来に明るい希望や目標があれば、それに向かう道程としての現在に生きがいを感じられるだろう。逆に今の生活が幸せでも、その幸福感が自分の使命感を鈍らせるのなら、自我の本質的な部分では苦痛をおぼえることもある。

生きがい感は幸福感と比較して、より自我の中心に迫っている。どんなに苦労の多い仕事でも「自分でなければできない仕事である」と感ずるだけで、人は生きがいをおぼえる。生きがい感には「ほかならぬこの自分が生きている」意味や必要をもたらす、自我感情が含まれているのである。

生きがいを問うこと

長い一生の間には、ふと立ち止まって自分の生きがいや存在意義について思い悩むことがある。人間が最も生きがいを感じるのは、自分がしたいと思うことと義務が一致したときだろうが、これは必ずしも一致しない。

自分という存在の必要性や生きていく目標、生きる資格、人生そのものの意義について考えるとき、ある価値基準が前提となる。この基準は、幼年時代の社会的環境に基づくという考えもあるが、それほど簡単なことではない。人間が成長していく過程では、病気や死、別の生活圏を生きる人との突然の出会いなどを通して、まったく違った価値体系がもたらされることがある。人間は白紙の状態で周囲から提供されるものを受け入れるのではなく、多少なりとも主体的に自分にぴったりなものを選択しているはずだ。どんなに立派な世界観や思想でも、受け入れる人の心の中に必然性をもって組み込まれなければ、それは借りものにすぎない。

大人になると生存の意味を問うことを忘れ、ただ流されて生きていくような人が多い。しかし年をとってそれまでの生きがいが失われたとき、この問題は再び心を占める。「これから何の生きる喜びがあるだろう」と問う姿には、青年たちのそれとは違った切実さがある。

使命感に生きる人
ThitareeSarmkasat/gettyimages

生きがい感を最も感じられる人は、使命感に生きる人である。使命感というものは、はじめは漠然としていて、具体的な形となるまでに年月を要することも少なくない。ナイチンゲールは6歳の頃よりそれに悩んできたが、

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