「顧客消滅」時代のマーケティング

ファンから始まる「売れるしくみ」の作り方
未読
「顧客消滅」時代のマーケティング
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未読
「顧客消滅」時代のマーケティング
出版社
出版日
2021年03月11日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

新型コロナウイルスは、多くのビジネスに甚大な損害をもたらした。特に、人と人が接することが前提となるサービス業においては、顧客が外出自粛を強いられる中、厳しい状況に追い込まれている事業者も少なくないだろう。しかし、緊急事態宣言の最中にあっても、前年比で成長しているサービス事業者は存在する。

では、コロナ禍でも売上を上げ続ける事業者は、何が違うのか。著者によるとそれは、ストック型ビジネスであることだ。一見客中心のフロー型ビジネスではなく、自社のファンともいえる強固な固定客をもつストック型ビジネスであれば、巣籠もりして家から出ない顧客に対してもアプローチし、購買を促すこともできる。「顧客が家に籠もっているのでどうしようもない」と考えている事業者は、ぜひとも本書を一読してほしい。この厳しい状況を打破するために必要なのは、特別なアイデアや施策ではないことがわかるはずだ。

新型コロナウイルスの猛威はとどまることを知らないが、ワクチンの開発など、明るい兆しも見えつつある。事業を存続させ、今を生き抜くことが重要なのは言うまでもないが、未来を見据えた事業展開も忘れてはならない。人々のニーズや社会が変容する中で、今まで通りのビジネスが通用するとは限らない。本書を一読することで、来るべき未来において成長を成し遂げるためのヒントが得られるだろう。今は大きなピンチに陥っていない事業者も、ぜひ手に取ってみてほしい。

ライター画像
香川大輔

著者

小阪裕司(こさか ゆうじ)
オラクルひと・しくみ研究所代表。博士(情報学)。九州大学非常勤講師、日本感性工学会理事。
山口大学人文学部卒業(専攻は美学)。1992年オラクルひと・しくみ研究所を設立。「感性と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会であるワクワク系マーケティング実践会を主宰。現在、全都道府県・海外から約1500社が参加。約20年に渡る活動で、1万件以上の成果実例を生み出している。近年は研究にも注力し、2011年工学院大学大学院博士後期課程修了、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得、産官学にまたがり、年間数多くの講演・講義も行う。2017年からは、この理論と実践手法を全国の企業に広める事業が経済産業省の認定を受けている。
『日経MJ』紙に14年に渡りコラム「招客招福の法則」を連載した他、著書は『「買いたい! 」のスイッチを押す方法』(角川書店)、『「感性」のマーケティング』(PHP研究所)、『価値創造の思考法』(東洋経済新報社)など多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    コロナ禍でも強い店や企業の共通点は、ストック型ビジネスであることだ。ストック型ビジネスを展開するうえでは、自社の熱烈なファンである「ファンダム」を作ることが重要となる。
  • 要点
    2
    BtoCビジネスでもBtoBビジネスでも、ファンダムを作るためには、顧客リストを作成し、リストを温めていく必要がある。
  • 要点
    3
    ストック型ビジネスへと移行していくためには、顧客を明確に定め、自社が提供できる価値を再検討しなければならない。そのためには、硬直化した人や組織の変革も重要だ。

要約

【必読ポイント!】 「顧客消滅」時代のマーケティングとは

買わなくなったのは「中途半端なもの」
ViewApart/gettyimages

コロナショックにより、現代社会の歴史上、初めて人の流れが止まった。「人と人が直接接することはNG」とされる中、特にサービス業は大きな打撃を受けている。2020年4月からの緊急事態宣言が明けてからも、顧客が戻っていない店や企業は多い。

実はコロナ禍において、顧客は「選別」を行っていた。今までなんとなく通っていた店に行けなくなったことで、「これからも行きたい店」「特に行く必要はない店」を意識的に、もしくは無意識的に選別したのだ。そうした選別が行われた結果、心が豊かになるものでもコスパのいい生活必需品でもない、中途半端なものは選ばれなくなった。心が豊かになるものはコロナ禍でもほとんど売上が落ちていない一方、「心が豊かになるわけではないが、生活必需品でもないもの」は見向きもされなくなってしまっている。

顧客は今、単なるモノではなく、心を豊かにしてくれる、ときめくモノや場所を求めている。だから逆に、「心が豊かになる」ビジネスを展開している会社にとっては、コロナショックは大きなチャンスとなり得る。

コロナ禍でも強いストック型ビジネス

名古屋のある高級レストランは、緊急事態宣言下の2020年4月、売上が前年比150%を達成した。もちろん、コロナで打撃を受けなかったわけではない。緊急事態宣言が出されると予約は一気に白紙になり、休業に追い込まれた。そこで高級弁当を開発し、SNSで顧客に周知したところ、大量の注文が入ったのだ。

新大阪のあるバーでは、深夜営業ができない緊急事態宣言下において、前年と変わらない売上を維持した。このバーが行ったのは、おつまみの通販とテイクアウトを開始し、約500人の顧客にハガキで告知することだった。

コロナ禍でも売上を維持した両者の共通点は、フローではなくストックの顧客をもっていたことだ。フローとは流動性の高い一見客で、ストックとは動きの少ない常連客を指す。コロナショックの影響を受けなかったのは、ストック型ビジネスの企業や店舗だった。

ストック型ビジネスにおいては、顧客リストが資産となる。コロナショックのような危機にあっても、顧客リストがあれば手の打ちようがある。企業にとって顧客リストは、現代のような変動期にあっても価値が失われない、最強の資産であるといえるだろう。

BtoBビジネスでは、取引先のストック化を
west/gettyimages

BtoBビジネスにおいても、「フローからストックへ」は、アフターコロナを生き抜くためのキーワードとなる。BtoBビジネスにおける「フローからストックへ」のわかりやすい例として、卸や小売店を介さず、最終顧客に直接販売する「メーカーによる直売」が挙げられるだろう。

では、最終顧客とのつながりを持つにはどうすればいいか。

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要約公開日 2021.06.09
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