子どもの才能を引き出す

天才IT相オードリー・タンを育てた母の教育メソッド
未読
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出版社
日本実業出版社

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定価
1,870円(税込)
出版日
2021年05月01日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

パンデミック直後、デジタル技術を活用した感染対策で一躍有名になった、台湾の若き天才IT大臣オードリー・タン氏。本書は、氏の母・李雅卿(リー・ヤーチン)氏が保護者有志と創立した私立学校「種子学園」の創設当初(1996〜1997年)を振り返った奮闘記である。

種子学園では、子どもたち自身が担任を選ぶ、国語と数学以外の教科はすべて選択制、校則は生徒と大人たちが話し合いで決める……など、驚くほど子どもに「自由」と「主権」を持たせている。

これで大丈夫なのかと心配になってしまうほどだが、初めから全員がこのやり方に賛成していたわけではない。しかし、李氏は「子どもたちが主体性を持てる学校にする」という揺るぎない信念を持ち、衝突と話し合いを繰り返しながら、粘り強く「子どもが主役」の学校をつくっていった。

李氏の信念を支えたのは、彼女自身の子育ての経験だろう。本書で多くは語られていないが、オードリー氏は子どもの頃、学校に馴染めず7つもの学校を転々とした。子どもの意志や感情が尊重されない、従来の学校教育への強烈な疑問が、種子学園の設立へと向かわせる原動力となったのは想像に難くない。

本書を読むと、どんな子どもにも豊かな才能があることに気づかされる。問題児も、学習速度が遅い子も、大人がきちんと話を聞いて受け入れ、適切にサポートしてあげることで、その子なりの才能を発揮していく。

子どもは小さな「種子」であり、咲かせるも枯らすも環境次第。子育てとは、教育とは何なのか――。深く考えさせられる一冊である。

ライター画像
矢羽野晶子

著者

李 雅卿(リー・ヤーチン)
1954年生まれ。台湾南投県魚池郷出身。国立政治大学法律学修士。新聞「中国時報」で記者、雑誌「商業周刊」で編集者として8年間、ジャーナリズムに携わる。子どもの教育問題により退職し、管理と権威に満ちた伝統的な教育に対峙し、子どもに付き添う。台湾の教育改革に取り組み、「自主学習」を実践する実験小学校「種子学園」を創立する。初代校長。台北市独立学習実験プロジェクト(中学・高校6年)を立ち上げ、ユネスコから「アジアで最高のオルタナティブ教育の1つ」として賞賛される。台湾史上最年少で大臣となったオードリー・タンの母親。

ワン・チャイ
復旦大学などでの漢語研修を経て、博士号を取得。その後、北京大学に入職し、研究員として勤めるなど20数年間、中国に滞在。
帰国後、会社役員などを務め、現在は、フリーランスの翻訳などに従事。2006年、HSK(漢語水平考試)高等A級(11級)合格(最高級)。
研究論文50数本、単著2冊(中国語)、翻訳書5冊がある。星雲賞海外長編部門を受賞した『三体』(早川書房)三部作のうち第一部と第三部の翻訳を担当。

本書の要点

  • 要点
    1
    種子学園は、台湾に最も適した教育モデルを追求した教育実験校である。種子学園では子どもの主体性が重視され、国語と数学以外の教科はすべて選択制、担任の先生も子どもが選ぶ。校則は子どもを含めた全体会議で決定される。
  • 要点
    2
    種子学園の教師の採用基準は「心身に苦痛を加えるいかなる手段も用いない人物」である。問題が起こったときは、子どもの話を聞き、話し合いによって解決をする。
  • 要点
    3
    子どもに「自由」と「責任」を与えると、「善」を目指して人生を歩む。

要約

種子学園とは

台湾独自の教育実験プロジェクト
Booblgum/gettyimages

種子学園は、教育への理想と大いなる願望を集めた新しい芸術総合体であり、台湾独自の教育実験校である。

種子学園は、小学校1年生から6年生までの子どもを受け入れている。台湾北部、台北県烏来(ウーライ)の娃娃谷(ワーワグゥ)にキャンパスがあり、台北市内からはバスで片道3時間半かかる。

学校は小さく、生徒の上限を60名に設定し、教師と生徒の比率は1:7に保っている。学年で分けることなく、子どもが担任の先生を自由に選ぶことができ、各科目でのクラス分けも子どもの学習程度と個性によって決まる。

種子学園では国語と数学以外は、すべての科目を選択履修としている。子どもたちは理科、体育、美術、音楽、演劇、生命科学、農芸、英語、地理・歴史、野外サバイバル、工作などからいくつでも自由に選択でき、あるいはまったく選択しなくても構わないこととした。

種子学園には「生活討論会」「法廷」という2つの法制組織が存在する。生活討論会は実務的な討論と決定を担うもので、大人も子どもも1票を投じる権利があり、十分な討論の後に採決される。法廷は規律の維持を担うもので、誰もが訴えを起こすことができるのだ。

種子学園の創立にあたって、著者らは「いかなる権威的なものも導入しない」と決めた。そして保護者、教師、子どもたちが協力して、台湾に最も適した教育モデルをつくりあげていった。

【必読ポイント!】主役は子どもたち

主体性を尊重する

種子学園の子どもたちは皆「主体性」を持っている。学園の規則や環境の維持、クラス担任や受講科目に至るまで、自分たちで決定する。

しかし学園開設当初はそうではなく、午後のみが「自由選択科目」の時間であった。この時はまだ、大人は子どもが主体性を持って学習に取り組むことに懐疑的であったからである。

しかし1年が過ぎた頃、ある先生が全面的な選択履修方式の推進を提言した。その理由は、子どもたちの選択授業に取り組む姿勢が真剣であったこと、ルールもよく守られていたこと。一方、必修科目の授業では重大なルール違反があったそうだ。

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