自然界の進化は、DNAのコピーエラーによる「変異」と、自然選択による「適応」を繰り返すと自然発生する現象だ。実は、この「変異×適応」という往復運動は、私たちの「創造」という営みにそのままあてはまる。
進化生物学によれば、進化は次の四つの現象を前提としている。
①変異によるエラー:生物は、遺伝するときに個体の変異を繰り返す
②自然選択と適応:自然のふるいによって、適応性の高い個体が残りやすい
③形態の進化:世代を繰り返すと、細部まで適応した形態に行き着く
④種の分化:住む場所や生存戦略の違いが発生すると、種が分化していく
進化思考では、創造もこれと同じ構造を前提としていると考える。そして創造における変異はDNAと相似形をなす言語をベースとして「言語エラー=どのように変化できるのか(HOW)」のパターンと捉えれば、偶発的なアイデアを大量に生み出す発想手法として学習可能になる。そして適応の観察は、生物の適応を観察する自然科学の手法から観察が可能であり、それは「なぜそうあるべきなのか(WHY)」の探索とも言える。この二つの仕組を繰り返すことで起こるのが創造性だと進化思考は提唱しており、これは現在まで発見されてきた生命の知的構造とも相似形を成し、様々な創造的思考法を統合しうる思考法になっている。
自然界の進化において、変異にはある種のパターンがある。この本では変量・擬態・欠失・増殖・転移・交換・分離・逆転・融合の九つのパターンを抽出している。これらは生物の変異でも見られるが、これがそのまま創造における発想の型にもなる。
一つめのパターンである「変量」では、極端な量を想像するパターンだ。「超~なx」と言い換えられる。~に入るのは、大きい・小さい・長い・短い・速い・遅い……といった具合に、モノに備わるパラメーター(変数)だ。パラメーター量を振り切るという単純なアプローチでもiPhoneからiPadなど、様々な新しい発想を切り開くことができる。
「擬態」は、姿を真似させるパターンだ。
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