進化思考

生き残るコンセプトをつくる「変異と適応」
未読
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本書のタイトルでもある「進化思考」は、生物の進化と私たちの創造は相似形の構造であるという著者の洞察から生まれた新しい創造的思考法だ。

生物の進化は、変異と適応を繰り返すと自然発生する現象だ。遺伝子のコピーエラーから生まれた変異のなかからは、自然とその状況の空間的関係と時間的関係に適応したものが傾向として生き残りやすくなる。その往復を繰り返すと形態は自然と収斂し、ときには生存戦略が分岐する。それが生物の進化だ。そして進化思考は、進化と創造を類似の現象と捉えて創造性の根源的な構造を探求する手法だ。こうした構造に立てば、捉えるのが難しい創造性も、進化と同じように構造化できる。

つまり創造性とは、変異的思考によって偶発的に無数のアイデアを生み、適応的観点によって自律的に選択することの繰り返しの現象と考えれば、誰でも創造的なアイデアを生み出せるようになると著者は語りかける。

「変異の九つのパターン」から固定観念を外す方法を学べば、これまでと違う可能性を持つアイデアを、無数に発想できるだろう。そしてたとえ失敗したとしても、「適応の四つの観点」に照らせば、失敗の本質的な理由を理解し、確かな観点を通して納得できるようになるはずだ。著者は、こうした創造的な思考法にたどりついたことで、「素直になり、自由になった」という。これは特に印象的な言葉だった。

この本にはだれもが進化思考を身につけられるように50個の進化ワークが登場する。実践しながら読める本なので、ぜひトライしてほしい。

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しいたに

著者

太刀川英輔(たちかわ えいすけ)
進化思考家、NOSIGNER代表。JIDA(公益社団法人日本インダストリアルデザイン協会)理事長 、慶應義塾大学特別招聘准教授。
創造性の仕組みを生物の進化から学ぶ「進化思考」を提唱し、様々なセクターのなかに美しい未来をつくる変革者を育て、創造教育の更新を目指すデザイナー。
デザインで美しい未来をつくること(実践:社会設計)、自然から学ぶ創造教育で変革者を育てること(理念:進化思考)。この二つを軸にデザイン活動を行っている。
プロダクト、グラフィック、建築、空間、発明の領域を越境し、次世代エネルギー、地域活性、伝統産業、科学コミュニケーション、SDGs等の数々のデザインプロジェクトを成功に導くために、総合的な戦略を描く。
グッドデザイン賞金賞(日本)、アジアデザイン賞大賞(香港)他100以上の国際賞を受賞。グッドデザイン賞、DIA(中国Design Intelligence Award)、DFAA(Design for Asia Awards)、WAF(World Architecture Festival)等の国際デザイン賞の審査委員を歴任。
主なプロジェクトに、進化思考、OLIVE、東京防災(東京都)、PANDAID、山本山、横浜DeNAベイスターズ、YOXO(横浜市)、ミズベリング、MOZILLA FACTORY、秋川牧園、PLOTTER、2025大阪・関西万博日本館基本構想など。
著書に『デザインと革新』(パイ インターナショナル、2016年)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    進化思考とは、生物の進化のように「変異×適応」という二つのプロセスを繰り返すことで、本来だれのなかにもある創造性を発揮し、変化を生き残るコンセプトを生み出す思考法だ。
  • 要点
    2
    「変異」とは、生物にも発明にも共通する「どのように変化できるのか(HOW)」の型であり、偶発的なアイデアを大量に生み出す発想手法でもある。変量・擬態・欠失など九つのパターンが抽出されている。
  • 要点
    3
    「適応」とは、人類の生命科学史のなかで確立された「なぜそうあるべきなのか(WHY)」の探索手法であり、適応を理解する生物学的な観点だ。空間の内部と外部、過去と未来に対応し、解剖・系統・生態・予測の四つの手法が挙げられている。

要約

進化と創造

変異×適応

自然界の進化は、DNAのコピーエラーによる「変異」と、自然選択による「適応」を繰り返すと自然発生する現象だ。実は、この「変異×適応」という往復運動は、私たちの「創造」という営みにそのままあてはまる。

進化生物学によれば、進化は次の四つの現象を前提としている。

①変異によるエラー:生物は、遺伝するときに個体の変異を繰り返す

②自然選択と適応:自然のふるいによって、適応性の高い個体が残りやすい

③形態の進化:世代を繰り返すと、細部まで適応した形態に行き着く

④種の分化:住む場所や生存戦略の違いが発生すると、種が分化していく

進化思考では、創造もこれと同じ構造を前提としていると考える。そして創造における変異はDNAと相似形をなす言語をベースとして「言語エラー=どのように変化できるのか(HOW)」のパターンと捉えれば、偶発的なアイデアを大量に生み出す発想手法として学習可能になる。そして適応の観察は、生物の適応を観察する自然科学の手法から観察が可能であり、それは「なぜそうあるべきなのか(WHY)」の探索とも言える。この二つの仕組を繰り返すことで起こるのが創造性だと進化思考は提唱しており、これは現在まで発見されてきた生命の知的構造とも相似形を成し、様々な創造的思考法を統合しうる思考法になっている。

変異

変量・擬態・欠失
著者提供

自然界の進化において、変異にはある種のパターンがある。この本では変量・擬態・欠失・増殖・転移・交換・分離・逆転・融合の九つのパターンを抽出している。これらは生物の変異でも見られるが、これがそのまま創造における発想の型にもなる。

一つめのパターンである「変量」では、極端な量を想像するパターンだ。「超~なx」と言い換えられる。~に入るのは、大きい・小さい・長い・短い・速い・遅い……といった具合に、モノに備わるパラメーター(変数)だ。パラメーター量を振り切るという単純なアプローチでもiPhoneからiPadなど、様々な新しい発想を切り開くことができる。

「擬態」は、姿を真似させるパターンだ。

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要約公開日 2021.08.02
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