ベンチャー・キャピタリスト

世界を動かす最強の「キングメーカー」たち
未読
ベンチャー・キャピタリスト
ベンチャー・キャピタリスト
世界を動かす最強の「キングメーカー」たち
未読
ベンチャー・キャピタリスト
出版社
NewsPicksパブリッシング

出版社ページへ

出版日
2022年03月15日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
要約全文を読むには会員登録ログインが必要です
ログイン
本の購入はこちら
書籍情報を見る
本の購入はこちら
おすすめポイント

全ての新しいものはシリコンバレーから生まれてくるのではないかと、ぼんやりと考えていた時期があった。この本を読み、「シリコンバレーには新しいものが生まれる仕組みがあったこと」、そして「その仕組みはシリコンバレーだけで機能するものではないこと」が分かった。同時に、大いに刺激を受ける内容だった。

本書で紹介されている30社38人の投資家は、それぞれ勝ちパターンが違うが、勝ちパターンを探究し続ける姿勢など、共通点も多かった。

特に興味深かったのは、シリコンバレーの「外」出身の人ならではの観点で、スタートアップを発掘しているVCの資本家だ。会議アプリ、ズームを見つけ出したエマージェンス・キャピタルは、ズームだけがインターネットが不安定な地域でも耐えうるビデオ会議ツールであることから、出資を決めたという。

また、スタートアップというと、アプリなどテック企業が想起されがちだが、食品や医療などの分野でも沢山の企業がある。新型コロナウイルスワクチンで一躍有名になった「モデルナ」もその1つであることは、意外と知られていないだろう。

本書に登場する出資のエピソードは、金額の大きさなどから、どこか自分には縁遠い話のように感じられるかもしれない。しかし、スタートアップの提供するサービス自体は日常生活にすでに浸透しているものも少なくない。その成長を支えたVCとはどんな存在か。世界の見え方が変わるであろう一冊だ。

ライター画像
河合美緒

著者

後藤直義(ごとう なおよし)
NewsPicks副編集長(サンフランシスコ支局長)
1981年東京生まれ。青山学院大学文学部卒業。毎日新聞社、週刊ダイヤモンドを経て、2016年にNewsPicks編集部に参画。企業報道チームを立ち上げ、シリコンバレーにおけるテクノロジーの最前線から、中国で勃興するスタートアップなど幅広くカバー。2019年にはサンフランシスコ支局を開設。著書に『アップル帝国の正体』 (共著、文藝春秋) や『 韓流経営 LINE』 扶桑社 などがある。

フィル・ウィックハム(Phil Wickham)
Sozo Ventures 共同創業者/パートナー
シリコンバレーの国際展開支援のトップファンドとして知られているSozo Venturesにおいて、ツイッター、スクエア、コインベース、ズームといった投 案件を支援する。ベンチャー投資家、スタートアップ起業家として豊富な経験を有し、カウフマン・フェローズのCEOを経て名誉会長として、VCの次世代リーダーの育成を支援してきた。カウフマン・フェローズ出身者が設立した数多くのファンドを支援し、Creandum Fund等で名誉顧問を務めている。また、スタンフォード大学工学部大学院で教鞭をとり、早稲田大学ビジネススクールの客員教授も務めている。

本書の要点

  • 要点
    1
    2500社以上あるベンチャーキャピタル(VC)の中で、上位1%ほどの極めてわずかなVCだけが成功している。
  • 要点
    2
    トップレベルのVCは、それぞれ全く異なる戦略によって、スタートアップを見つけている。ただ、「独自の仮説によって勝ちパターンを見つけ出す」という「再現性」へのこだわりは共通している。
  • 要点
    3
    お金の出し手、リスクを見極める仲介者、起業家のインセンティブが噛み合うことで、「未来のビジネス」が生まれる。

要約

VC産業

スタートアップとVC
Saran_Poroong/gettyimages

2017年、著者は中国において、グーグルが買収した人工知能のスタートアップであるディープマインドと世界1位にランクインしていた囲碁プレイヤー柯潔(カ・ジェ)の試合を取材した。結果はディープマインドがつくったプログラムの3連続勝利に終わった。

「ディープマインドというスタートアップのもたらすインパクトをいち早く理解していた」のは、買収を行ったグーグルでも、ディープマインドの研究論文を表紙に載せたサイエンス誌「ネイチャー」でもなく、ピーター・ティールが率いる「ファウンダーズ・ファンド」であるという。つまり、ベンチャーキャピタル(VC)である。

ディープマインドの創業者であるハサビスは、創業する1カ月前に、ファウンダーズ・ファンドのオフィスを訪れ、代表のピーター・ティールと意見交換を行っている。

グーグルがディープマインドを買収した際には、ファウンダーズ・ファンドは、約1億6000万ドル(約169億円)というリターンを手にした。これだけでもすごい金額だ。

彼らがこれまでに投資したのは、ディープマインドだけではない。この他にも、フィンテックベンチャーのストライプ、テロ対策にも使われているビッグデータ分析ベンチャーのパランティアが、まだ無名のころに投資を行っている。

無数にあるスタートアップから、世界を変えるようなイノベーションを起こすゲームチェンジャーのような、特別な会社を見つける。そして資本を注入し、急激な成長に導いていくさまは、まさに「キングメーカー」の名にふさわしい。

1%のVC

ベンチャーキャピタルがどのように、スタートアップを探しているのか。そのプロセスはあまり、明らかにされていない。

日本では馴染みの薄いVC。その数は米国だけで8000社以上あり、シリコンバレーだけでも2500社を超えている。しかし、ゲームチェンジャーとなるような強烈なスタートアップを見つけ、資金提供によって彼らを成功に導き、そのリターンの大部分を手にしているVCは、上位1%ほどと極めてわずかだ。

優れたVCについて多くが語られていない理由の1つは、情報開示をする義務がないことだ。多くのスタートアップは上場していないため、売上も成長率も一般に公開する必要がない。そこに投資するVCも、どの位の利益や損失を出したか示さない。まれに公開されている情報があるとすれば、その多くはマーケティング上の理由で示された情報であり、必ずしも正確を期すとは言えない。

またVC産業では投資するファンド全体のうち、65パーセントが「失敗」に終わる。スタートアップ投資の運用期間を終え、ファンドの売上を目標どおり2~3倍に増やせるのは、ごく少数に限られる。

このように、謎に包まれたVCの世界のトップ1パーセントの投資家たちは、どのようにスタートアップを探しているのか。本書はそれを解き明かすべく、アメリカ全土と主要国にVCのネットワークを持つSozoVentures(ソーゾー・ベンチャーズ)と協力し、謎に包まれた人たちへのインタビューを実現させていった。

取材を重ねると、トップレベルのVCは、それぞれ全く異なる戦略によって、スタートアップを見つけているようだった。一方、「独自の仮説によって勝ちパターンを出す」という「再現性」へのこだわりという点においては、みな共通していた。

「まぐれ」ではなく、「計算されたリスク」に基づき、大きなイノベーションを起こすスタートアップを世に送り出すことに成功してきた。

もっと見る
この続きを見るには...
残り2197/3643文字
会員登録(7日間無料)

3,400冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2022.06.04
Copyright © 2024 Flier Inc. All rights reserved.
一緒に読まれている要約
市民政府論
市民政府論
ロック角田安正(訳)
未読
GAFA next stage  ガーファ ネクストステージ
GAFA next stage  ガーファ ネクストステージ
渡会圭子(訳)スコット・ギャロウェイ
未読
自分で始めた人たち
自分で始めた人たち
宇野重規
未読
あのひととここだけのおしゃべり
あのひととここだけのおしゃべり
よしながふみ
未読
何があっても潰れない会社
何があっても潰れない会社
田宮寛之
未読
社会契約論/ジュネーヴ草稿
社会契約論/ジュネーヴ草稿
ルソー中山元(訳)
未読
メタバースとWeb3
メタバースとWeb3
國光宏尚
未読
コトラーのマーケティング入門【原書14版】
コトラーのマーケティング入門【原書14版】
フィリップ・コトラーゲイリー・アームストロングマーク・オリバー・オプレスニク恩藏直人(監訳)アーヴィン香苗(訳)小林朋子(訳)パリジェン聖絵(訳)宮崎江美(訳)
未読
法人導入をお考えのお客様