虚言癖、嘘つきは病気かの表紙

虚言癖、嘘つきは病気か

Dr.林のこころと脳の相談室 特別編


本書の要点

  • 世の中には病的な虚言のある人が想像以上に多く存在している。彼らはたくさんの嘘をつく、普通では考えられないような嘘をつく、かなり細かい話を作り上げる、外見は嘘つきに見えない、虚言の瞬間は無自覚だが後からは虚言だという自覚がある、などの特徴がある。

  • 病的な虚言者に関しては、自己愛性パーソナリティ障害、演技性パーソナリティ障害、境界性パーソナリティ障害、といったパーソナリティ障害の可能性を想定するべきだ。

  • 森口尚史氏、佐村河内守氏は演技性パーソナリティ障害と思われる。また、小保方晴子氏も、あくまで報道内容が事実だとすれば、いずれかのパーソナリティ障害であるという仮定もできる。

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【必読ポイント!】虚言癖の典型例

Case1 嘘ばかりの夫

本書は著者が運営するサイト「精神科Q&A」に寄せられた質問とその回答を中心に、虚言者と思われるケースに対する中立的な立場での分析がまとめられた書である。この要約では、Case1から順に象徴的な事例を取り上げていきたい。まずは30代の夫に対する妻による相談である。その夫の話は虚言で埋め尽くされている。金融関係のサラリーマンであるにも関わらず、自分の職業を外科医であると言い、医者になろうとした経過や、医学部で成績優秀であったことなど、細かな話を作り上げている。父親も健在であるにも関わらず、2度死んだことになっていて、葬式のやり取りまでリアルに語り、落ち込んで一日中ソファーで寝込むこともあった。あるときはガンを患ったと言い、当初は肺ガンで、次第に睾丸ガン、脳ガンへと移行したと言うが、実際は検査もしていないのだそうだ。著者によると、病的な虚言のある人は世の中には想像以上に多いという。その特徴は、たくさんの嘘をつく、普通では考えられないような嘘をつく、かなり細かい話を作り上げる、外見は嘘つきに見えない、虚言の瞬間は無自覚だが後からは虚言だという自覚がある、などがあり、当てはまる場合は病的な虚言を疑うべきだ。

Case3 異常なプライド ~自己愛性パーソナリティ障害~

続いて、30代前半の女性による、同僚の女性(Aさん)の虚言に対する相談である。前もって伝えた仕事を「無理!」とヒステリックに怒鳴り床に書類などを投げつける。他人の手柄を奪い、自分に都合が悪いことはごまかす。日常的に嘘を繰り返し、当事者がいなければ、「○○さんがそう言っていたからやったのに」と嘘をつく。学歴も専門学校卒と言っていたのに、いつの間にか「短大卒」に、そして「四大卒」という形に移行している。気に食わない人に対しては、SNS上で根も葉もないことを書くのだそうだ。著者によると、このAさんは自己愛性パーソナリティ障害が疑われるようである。その特徴は次の通りで、精神医学の基準からはそのうち5つ以上を満たすことが必要条件となる。1.自分の価値を誇大的に評価している。2.夢想にとらわれている。3.自分は特別な存在だと信じている。そんな自分を理解できるのは特別な人だけだと信じている。4.過剰な賞賛を求める。5.特権意識を持っている。6.自分の利益のために巧みに人を利用する。7.人への共感性に欠ける。人の人格や気持ちを無視する。8.嫉妬する。または人が自分を嫉妬していると思い込む。9.尊大で傲慢な態度や行動。嘘であることを本人につきつけ、罰するようにしていかなければ、虚言は増幅していくことに注意が必要である。

Case4 美容整形を繰り返し、演技ばかりの私 ~演技性パーソナリティ障害~

20歳の女性による自分に関する相談である。自分は小さい頃から太っていて、見た目もパッとしないと認識していたが、高校で県内屈指の進学校に入学したころから、気持ちが変化する。アイプチで目を二重にすることを皮切りに、SNSのトップ画像をモデルにして知らない男性から褒められ、綺麗で人気者であるかのような演技を始める。

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要約公開日 2014.10.24
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