虚言癖、嘘つきは病気か

Dr.林のこころと脳の相談室 特別編
未読
虚言癖、嘘つきは病気か
虚言癖、嘘つきは病気か
Dr.林のこころと脳の相談室 特別編
著者
未読
虚言癖、嘘つきは病気か
ジャンル
著者
出版社
インプレス
出版日
2017年07月03日
評点
総合
4.0
明瞭性
5.0
革新性
4.0
応用性
3.0
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おすすめポイント

本書はflierでも紹介した、衝撃的な書籍、『こころと脳の相談室名作選集 家の中にストーカーがいます』の著者、林公一氏の新作であり、虚言に関わる障害に焦点を当てたものである。著者のサイトに寄せられる相談も生々しいものが多く、それだけでも引き込まれていくが、彼の客観性、専門性、論理性の高さによりそれらに対する回答が驚くほど歯切れが良く、感心させられることだろう。

相談内容の紹介と合わせて、虚言と関連の深いパーソナリティ障害である、自己愛性パーソナリティ障害、演技性パーソナリティ障害、境界性パーソナリティ障害に関して、詳しい解説がなされている。病的な虚言のある人は想像以上に多いらしく、もちろん専門家ではないので軽々に診断することはできないが、今までに出会った人に当てはめてみると意外な発見があるかもしれない。

さらに、近年話題になった著名な虚言者と思われる、森口尚史氏、佐村河内守氏、小保方晴子氏に関する、精神医学的な見地が述べられている点も興味深い。このような事例は、マスコミの報道で追いかけていくだけではなく、パーソナリティ障害を疑うという違った目で分析してみると一層深い理解が得られるだろう。

本書は、職場の人物に関する相談など、ビジネスパーソンにとっても身近に感じるトピックが多く読みやすい書である。加えて、精神医学という世界観を垣間見れ、知的好奇心が満たされる良書と言えるだろう。

ライター画像
大賀康史

著者

林 公一(はやし きみかず)
精神科医。医学博士。ウェブサイト「Dr.林のこころと脳の相談室」を1997年に開設。月のアクセス数が150万を超えるこのサイトのメインコンテンツである「精神科Q&A」は、インターネットの読者からの受け付けた質問に、林医師が事実を回答するもの。なお、サイトがクリニックの宣伝の要素を持つことを避けるため、実際の診療場所などは一切公開していない。

本書の要点

  • 要点
    1
    世の中には病的な虚言のある人が想像以上に多く存在している。彼らはたくさんの嘘をつく、普通では考えられないような嘘をつく、かなり細かい話を作り上げる、外見は嘘つきに見えない、虚言の瞬間は無自覚だが後からは虚言だという自覚がある、などの特徴がある。
  • 要点
    2
    病的な虚言者に関しては、自己愛性パーソナリティ障害、演技性パーソナリティ障害、境界性パーソナリティ障害、といったパーソナリティ障害の可能性を想定するべきだ。
  • 要点
    3
    森口尚史氏、佐村河内守氏は演技性パーソナリティ障害と思われる。また、小保方晴子氏も、あくまで報道内容が事実だとすれば、いずれかのパーソナリティ障害であるという仮定もできる。

要約

【必読ポイント!】虚言癖の典型例

STEFANOLUNARDI/iStock/Thinkstock
Case1 嘘ばかりの夫

本書は著者が運営するサイト「精神科Q&A」に寄せられた質問とその回答を中心に、虚言者と思われるケースに対する中立的な立場での分析がまとめられた書である。この要約では、Case1から順に象徴的な事例を取り上げていきたい。

まずは30代の夫に対する妻による相談である。その夫の話は虚言で埋め尽くされている。金融関係のサラリーマンであるにも関わらず、自分の職業を外科医であると言い、医者になろうとした経過や、医学部で成績優秀であったことなど、細かな話を作り上げている。父親も健在であるにも関わらず、2度死んだことになっていて、葬式のやり取りまでリアルに語り、落ち込んで一日中ソファーで寝込むこともあった。

あるときはガンを患ったと言い、当初は肺ガンで、次第に睾丸ガン、脳ガンへと移行したと言うが、実際は検査もしていないのだそうだ。

著者によると、病的な虚言のある人は世の中には想像以上に多いという。その特徴は、たくさんの嘘をつく、普通では考えられないような嘘をつく、かなり細かい話を作り上げる、外見は嘘つきに見えない、虚言の瞬間は無自覚だが後からは虚言だという自覚がある、などがあり、当てはまる場合は病的な虚言を疑うべきだ。

Case3 異常なプライド ~自己愛性パーソナリティ障害~

続いて、30代前半の女性による、同僚の女性(Aさん)の虚言に対する相談である。

前もって伝えた仕事を「無理!」とヒステリックに怒鳴り床に書類などを投げつける。他人の手柄を奪い、自分に都合が悪いことはごまかす。日常的に嘘を繰り返し、当事者がいなければ、「○○さんがそう言っていたからやったのに」と嘘をつく。学歴も専門学校卒と言っていたのに、いつの間にか「短大卒」に、そして「四大卒」という形に移行している。

気に食わない人に対しては、SNS上で根も葉もないことを書くのだそうだ。

著者によると、このAさんは自己愛性パーソナリティ障害が疑われるようである。その特徴は次の通りで、精神医学の基準からはそのうち5つ以上を満たすことが必要条件となる。

1.自分の価値を誇大的に評価している。

2.夢想にとらわれている。

3.自分は特別な存在だと信じている。そんな自分を理解できるのは特別な人だけだと信じている。

4.過剰な賞賛を求める。

5.特権意識を持っている。

6.自分の利益のために巧みに人を利用する。

7.人への共感性に欠ける。人の人格や気持ちを無視する。

8.嫉妬する。または人が自分を嫉妬していると思い込む。

9.尊大で傲慢な態度や行動。

嘘であることを本人につきつけ、罰するようにしていかなければ、虚言は増幅していくことに注意が必要である。

Case4 美容整形を繰り返し、演技ばかりの私 ~演技性パーソナリティ障害~

20歳の女性による自分に関する相談である。自分は小さい頃から太っていて、見た目もパッとしないと認識していたが、高校で県内屈指の進学校に入学したころから、気持ちが変化する。

アイプチで目を二重にすることを皮切りに、SNSのトップ画像をモデルにして知らない男性から褒められ、綺麗で人気者であるかのような演技を始める。

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要約公開日 2014.10.24
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