LGBTQの働き方をケアする本

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出版社
自由国民社

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出版日
2022年05月22日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

あなたの職場にLGBTQはいますか? 「はい」と答える人は、「LGBTQ」という言葉の広がりに反して、さほど多くないだろう。「うちにはLGBTQはいないのだから対策は不要なのでは」と思いたくなるかもしれないが、そうはいかない。大阪府の調査結果を見ると、12人に1人はセクシュアルマイノリティという計算だ。あらゆる企業のステークホルダーの中に「LGBTQの当事者がいるかもしれない」と想定しておく必要がある。特に、LGBTQの従業員への対応は、喫緊の課題だといえる。

本書は、LGBTQの働き方を考えるうえでの基礎知識をわかりやすく解説するとともに、LGBTQへの対応方法、さらにはLGBTQに抵抗感を感じる他の従業員への対応方法を紹介する。業務上で必要な配慮から、意見の擦り合わせ、日常の会話での注意点まで、知っておきたい情報が網羅されている。

自らもトランスジェンダー当事者である著者の宮川直己氏は、LGBTQが働きやすい職場をつくることは、誰にとっても働きやすい職場をつくることにもなると説明する。本書におけるLGBTQへの対応を端的にまとめるならば、自分の常識を押しつけずに、相手のあるがままを受け入れ、人として尊重するということに尽きる。こうした扱いを望んでいるのは、セクシュアルマイノリティだけではないはずだ。本書の取り組みを実践することは、あらゆる人が人として尊重され、働きやすい職場をつくることに直結しているのである。LGBTQの働き方について知りたい、多様な人が働きやすい職場をつくりたいと思ったら、本書をおすすめしたい。

ライター画像
池田友美

著者

宮川直己 (みやがわ なおき)
トランスジェンダー当事者
組織の生産性向上と人間関係改善をサポートするメンタルコーチ
株式会社マクアケデザイン代表取締役
九州大学文学部卒(人間科学科地域福祉社会学専攻)

1977年、長崎県にて女性として出生。幼少期より性別違和を感じていたが、小学校入学直前に「黒いランドセルが欲しいといえば大人を困らせる」と悟り、以後は自分の想いを抑圧して生きるようになる。

大学卒業後、2002年に福岡市役所入庁。児童相談所での児童虐待・非行相談対応など、相談支援業務を中心に10年間従事する。

30代半ばで男性として生きることを決意。性同一性障害の診断を受け、身体療法および戸籍名の変更を行う。同時に女性としての過去を捨てるため市役所を退職。しかしその後はセクシュアリティを隠すために嘘を重ねる毎日で、生きることの苦しみは逆に深まるばかりとなる。

あるとき、期せずしてカミングアウトする機会に遭遇。自分を偽らずに受け入れてもらう体験が、何よりも人をエンパワーメントすることを実感。現在はトランスジェンダー当事者であることをオープンにして生活している。

2016年より心理学、脳科学、NLPを用いたコンサルティング事業を開始。
管理職を対象としたコミュニケーション講座やメンタルコーチング等を提供している。
神奈川県在住。

内田和利 (うちだ かずとし)
こすぎ法律事務所パートナー弁護士
神奈川県弁護士会所属
LGBT法律家ネットワーク、LGBTとアライのための法律家ネットワーク所属
1981年6月生まれ

自身も男性同性愛者であることを公表しつつ、LGBT/SOGIに関する法的問題に取り組み、法律相談を受ける他、企業や労働組合、団体などで研修講師も務める。毎月1回オンライン交流イベント「ボーダーレス交流会Na・Na・ji」を主催。

主な共著書として、手島美衣・内田和利・長谷川博史著『LGBTと労務』(株)労働新聞社(第4章ケーススタディ(LGBTと法務)。第5章関連裁判所例・第6章企業インタビュー部分を執筆)、教師と弁護士でつくる法教育研究会編著『教室から学ぶ法教育2 学校で求められる法的思考』(株)現代人文社(「センシティブな問題を抱えるマイノリティ」の解説部分を執筆)、平良愛香編著『LGBTとキリスト教:20人のストーリー』日本キリスト教団出版局(「法とLGBT—個が尊重される社会を実現するために……内田和利」部分を執筆)。

本書の要点

  • 要点
    1
    LGBTQの従業員への対応は、優秀な人材の確保、法的リスク回避の観点であらゆる企業にとって重要な課題だ。
  • 要点
    2
    多数派も含め、セクシュアリティは一人ひとり異なる。自分の「当たり前」を押しつけず、普段の言動に注意を払うことが、全ての人にとって安心して働ける職場づくりの第一歩だ。
  • 要点
    3
    カミングアウトを受けた時は、まずは黙って聴く。そして、「話してくれてありがとう」「秘密は守ります」とだけ伝えよう。

要約

LGBTQへの対応が全ての企業の重要な経営課題に

LGBTQへの対応は難しい?

あらゆるステークホルダーの中にLGBTQ(性的少数者・セクシュアルマイノリティ)が存在することが明らかになるにつれ、全ての企業にとってLGBTQを意識した経営の重要性が高まっている。とりわけLGBTQの従業員への対応は、優秀な人材の確保、法的リスク回避の観点から重要な経営課題の一つだ。多数の企業が何らかの取り組みを実施済み、検討中であり、取り組みを対外的に表明する「LGBTフレンドリー企業」も増えている。「パワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)」では性的指向や性自認に関するハラスメントも事業主に防止対策が義務付けられ、国も企業に対してLGBTQに対するハラスメントや差別禁止を求めている。

対応を迫られる国内企業の管理職や人事担当者からは、戸惑いの声があがっている。接し方がわからなかったり、LGBTQの従業員を特別扱いすることが気になったり、社内に好ましく思わない人がいたりと、頭を悩ませているようだ。本書は、こうした悩みに応える形で、ハラスメントを防ぎながら生産性の高い職場づくりを行うためのコミュニケーションの手順を解説している。

コミュニケーションのポイントは3つ
Flashvector/gettyimages

著者の宮川直己氏は、LGBTQ当事者のひとりとして多くの当事者や企業担当者のコミュニケーション支援を行なってきた。その経験から、大切なのは、(1)正しい知識を身につけること、(2)相手を人として尊重する意思を言葉と行動で示すこと、(3)丁寧に対話を重ねることの3つだけだという。

誰かを愛することや自分自身の性別をどう認識するかといった性のあり方は、努力で変えることのできない属性だ。それによって差別やハラスメントを受けることのない職場環境を整えることは、なんら特別な権利を与えるものではない。多様な属性の存在が受け入れられる会社は、全ての従業員が安心して能力を発揮できる場にもなる。組織全体の生産性や、業績、優秀な人材の定着など、多方面に良い影響をもたらすことだろう。

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要約公開日 2022.07.30
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