デジタル人材がいない中小企業のためのDX入門

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デジタル人材がいない中小企業のためのDX入門
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デジタル人材がいない中小企業のためのDX入門
出版社
出版日
2022年10月20日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

2023年10月からインボイス制度がスタートし、2024年1月より改正電子帳簿保存法が完全施行となる。中小企業においても、DXの流れは「待ったなし」の状況といえる。一方、「中小企業のDX推進に関する調査(2022年5月)」によると、DXを推進または検討している企業は24.8%であり、「取り組む予定はない」が41.1%にのぼった。デジタル人材もおらず、資金的にも余裕がないという中小企業は多いのではないだろうか。そんな状況を乗り越えるための実践的な戦略書が本書だ。

著者は、孫子の兵法を経営に活かし、9000社以上の中小企業を支援してきたトップコンサルタントの長尾一洋氏。ノウハウや予算、専門知識がなくても実行できる8つの戦略を紹介していく。具体的には、ノーコーダーの育成、会わずに売れる営業モデルの確立、業務プロセス効率化、外部人材を活用した組織づくりなどだ。

DX戦略の解説書は、海外や大企業の成功事例をまとめたものが多い。「デジタル人材を採用せよ」と説かれても、「それができたら苦労しないよ」と思う方もいるのではないか。それに対し著者は、中小企業の経営者たちの課題意識や実情に寄り添った提案に徹している。

DXの本質とは、ビジネスモデルだけでなく企業文化や風土まで変革し、競争上の優位性を生み出すことだという。中小企業には中小企業の戦い方がある。デジタルブームの波を乗り越え、成長につなげるためのバイブルとして、本書を経営者やリーダーにおすすめしたい。

ライター画像
松尾美里

著者

長尾一洋(ながお かずひろ)
株式会社NIコンサルティング代表取締役。中小企業診断士。自社開発のITツール「可視化経営システム」は、9000社を超える企業に導入され、営業力強化や業務改革をローコストで実現している。また、2500年前から伝わる兵法『孫子』の知恵を現代企業の経営に活かす孫子兵法家としても活動。
著書に『コンタクトレス・アプローチ テレワーク時代の営業の強化書』『営業の見える化』(KADOKAWA)、『AIに振り回される社長 したたかに使う社長』(日経BP)、『普通の人でも確実に成果が上がる営業の方法』『まんがで身につく孫子の兵法』(ともに、あさ出版)、他多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    DXとは、デジタルの力によるコストダウンにとどまらず、企業文化や風土まで変革し、競争上の優位性を生み出すことである。中小企業におけるDXの本質とは、限界費用ゼロでビジネスを拡大させるという武器を手に入れることだ。
  • 要点
    2
    中小企業のDX人材に求められる力は、自社の業務を理解し、デジタルを活用しながら、どのような戦略を立てるかを設計する力である。
  • 要点
    3
    オンラインの営業では、アプローチ件数を増やすことでパフォーマンスの総量を上げることが大切になる。

要約

DXとは何か?

DXで実現できること
HAKINMHAN/gettyimages

そもそもDXとは何か。経済産業省が2018年に発表した「DX推進ガイドライン」の定義をもとにすると、DXとは、継続的に取り組みながら、企業活動に何らかの「変革」をもたらすものである。企業文化や風土まで変革し、競争上の優位性を生み出していくことこそ、DXの本質だ。

しかし、現状を見ると、紙をデジタルに置き換える「ペーパーレス」や、押印という人的作業をデジタル化した「はんこレス」をDXだととらえている節がある。これは本来のDXとはほど遠いものだ。

たしかに、紙や印刷コスト、人的コストの削減など「コストダウン」にはつながる。しかし、コストダウンはあくまで、今かかっているコストをゼロや「今より少ないコスト」にすることである。そもそも中小企業の場合、削減するためのコスト自体がそれほど大きくないこともある。すると、デジタル化に向けたシステム導入の初期費用に対し、費用対効果がつりあわなくなり、デジタル活用に足踏みしてしまう。

大事なことは、デジタル化の最大の価値は、コストダウンではなく「限界費用がゼロ」という点だ。限界費用とは、商品を1つ生産(販売)するときに発生する追加費用を意味する。デジタル化にはこの限界費用がかからない。商品が追加で売れ、顧客が増えても、限界費用ゼロ(=固定費は変わらない)ため、売上点数や顧客数をどんどん増やせばいい。中小企業におけるDXの本質とは、限界費用ゼロでビジネスを拡大させるという武器を手に入れることなのだ。

「DX成功の3つの条件」は無視せよ

中小企業経営者がDXを進めようとして立ちはだかる壁は、巷に流れる「DX成功に必要な3つの条件」だ。

(1)「経営者がDXにコミットしなければならない」

(2)経営者がDXを含めたビジョンを描く必要がある

(3)デジタル人材を確保しなければならない

実のところ、これら3つを無理に適用する必要はない。

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要約公開日 2022.11.13
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