14歳からの社会学

これからの社会を生きる君に
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14歳からの社会学
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14歳からの社会学
出版社
定価
748円(税込)
出版日
2013年01月10日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

これからの社会をどう生きればいいのか。いつの時代にもこんな悩みはつきない。誰かが答えを用意してくれることはない。

社会を分析する専門家、社会学者の宮台真司氏は、本書を通じてわたしたちの生きる社会の様子を描き、その中でいかに生きるべきかという問いに向き合っている。その様子は読者が自分なりの答えを見つけるための「試行錯誤」のヒントを与えてくれる。

なぜ「みんな仲良し」ではいられないのか。なぜ社会には「ルール」があるのか。「恋愛」と「性」、「仕事」と「生活」、「生」と「死」。扱われるテーマはどれも身近でありながら、深い問いへとつながっていく。底本は2008年刊であるため時代の流れを感じさせる記述もあるが、個人的なエピソードを交えながら語られる、宮台氏なりの「試行錯誤」の結果は、読む人にも考える力を与えてくれる。

14歳という、生への不安がもっとも高まる思春期の子どもたちに向けて書かれた本書は、大人が読んでも十分に読みごたえがある。巻末のブックセレクションとあわせて読めば、本書への理解はさらに深まることだろう。

新たな時代をどう生きるか、どう生きれば自分は幸せなのかは、結局のところ自分で考えるしかない。わたしたちを取り巻く社会について知ること、他者の「試行錯誤」の軌跡を追うことは、その一助になるはずだ。

ライター画像
池田友美

著者

宮台真司(みやだい しんじ)
社会学者。1959年仙台市生まれ。東京大学大学院博士課程修了。社会学博士。首都大学東京教授。社会システム理論専攻。著書に『終わりなき日常を生きろ』『増補 サブカルチャー神話解体』『人生の教科書[よのなかのルール]』『挑発する知』『14歳からの社会学』(以上、ちくま文庫)、『オタク的想像力のリミット』(監修・筑摩書房)、『日本の難点』(幻冬舎新書)、『宮台教授の就活原論』『愚民社会』(共著、共に太田出版)、『きみがモテれば、社会は変わる。』(よりみちパン!セ)等多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    かつてあった「みんな」の共通の前提が崩れた社会では、他者からの「承認」を得ることが難しくなっている。「承認」を必要とせず、「尊厳」を投げ出す人のことを、著者は「脱社会的存在」と呼んだ。
  • 要点
    2
    歴史的に仕事をきれいなものとしてとらえる日本人の感覚は、自分に向いた仕事を求める気持ちへと結びついている。仕事を生きがいにする以外の生き方にも目を向け、自分の幸せを自分で定義しなければならない。
  • 要点
    3
    人は死を意識しながら生きるしかない。著者にとっての幸福な死とは、〈社会〉と〈世界〉のいずれにも接続しながら死んでいくことだ。

要約

〈自分〉と〈他人〉——みんな仲良しというタテマエ

「みんな仲良し」の「みんな」はどこへ行ったのか

「みんな仲良し」といわれたとき、多くの人は「タテマエだ」と感じることだろう。著者が子どもの頃、学校で習った「みんな仲良し」はあらゆる場所で通用した。学校でも近所でも、「みんなおたがいさま」で丸く収まっていたのだ。

昔はとなり近所であればおたがいのことをよく知っていたが、いまでは同じマンションに住んでいる人の顔すら知らないことがほとんどだ。昔は「みんな」という言葉が誰から誰までを指しているのかイメージができたが、いまは「みんな」の顔が見えにくくなっている。だから、昔と同じように「みんな仲良く」と言われるとタテマエに聞こえてしまう。

「日本人」も「みんな」ではなくなった。海外との行き来が盛んになったいまでは、どんな国や民族、文化でも、人の出入りがある。所属している場にいる人がそのまま「みんな」になる時代は終わったのだ。

幸せに生きるための2つの条件
LSOphoto/gettyimages

社会学者は、人が幸せに生きるためには2つの条件が必要だと考えてきた。

1つめの条件は「自由」であること。選択肢を知って、それを選べることだ。もっと言えば、「選ぶ能力」があることも重要だ。選択肢を知っていても選ぶ力がなければ、つらい環境に身を置いたとき、安易に「他者のせい」にしたり「自分のせい」にしたりしかねない。

幸せに生きるための条件を「尊厳(自尊心・自己価値)」という観点からも考えてみよう。どんな社会にも文化があって、どんな人が自由に生きやすいかがある程度決まっている。「自由」があるだけでは、多数派や強い人たちの色に社会が染まりすぎてしまう。みんなが「尊厳」をいだいて生きられるようになるためには、「自由」と「多様性」の両方が必要だ。

自分は他者に受け入れられる存在だ、と「尊厳」をもてるようになるには、他者から「承認」された経験が必要だ。子どもは成長の過程で他者と交流し、「試行錯誤」を繰り返して、「尊厳」を得ていく。ところが、「みんな(他者)」のことがよくわからなくなったいまの社会では、安定した「承認」が得られなくなり、安定した「尊厳」も得られなくなった。すると、さらに「みんな」のことがわからなくなるという悪循環が生まれている。

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