ゴールドプランなら4,000冊以上が全文読み放題! 7日無料体験はこちらから
14歳からの社会学の表紙

14歳からの社会学

これからの社会を生きる君に


本書の要点

  • かつてあった「みんな」の共通の前提が崩れた社会では、他者からの「承認」を得ることが難しくなっている。「承認」を必要とせず、「尊厳」を投げ出す人のことを、著者は「脱社会的存在」と呼んだ。

  • 歴史的に仕事をきれいなものとしてとらえる日本人の感覚は、自分に向いた仕事を求める気持ちへと結びついている。仕事を生きがいにする以外の生き方にも目を向け、自分の幸せを自分で定義しなければならない。

  • 人は死を意識しながら生きるしかない。著者にとっての幸福な死とは、〈社会〉と〈世界〉のいずれにも接続しながら死んでいくことだ。

1 / 3

〈自分〉と〈他人〉——みんな仲良しというタテマエ

「みんな仲良し」の「みんな」はどこへ行ったのか

「みんな仲良し」といわれたとき、多くの人は「タテマエだ」と感じることだろう。著者が子どもの頃、学校で習った「みんな仲良し」はあらゆる場所で通用した。学校でも近所でも、「みんなおたがいさま」で丸く収まっていたのだ。

昔はとなり近所であればおたがいのことをよく知っていたが、いまでは同じマンションに住んでいる人の顔すら知らないことがほとんどだ。昔は「みんな」という言葉が誰から誰までを指しているのかイメージができたが、いまは「みんな」の顔が見えにくくなっている。だから、昔と同じように「みんな仲良く」と言われるとタテマエに聞こえてしまう。

「日本人」も「みんな」ではなくなった。海外との行き来が盛んになったいまでは、どんな国や民族、文化でも、人の出入りがある。所属している場にいる人がそのまま「みんな」になる時代は終わったのだ。

幸せに生きるための2つの条件

LSOphoto/gettyimages

社会学者は、人が幸せに生きるためには2つの条件が必要だと考えてきた。

1つめの条件は「自由」であること。選択肢を知って、それを選べることだ。もっと言えば、「選ぶ能力」があることも重要だ。選択肢を知っていても選ぶ力がなければ、つらい環境に身を置いたとき、安易に「他者のせい」にしたり「自分のせい」にしたりしかねない。

幸せに生きるための条件を「尊厳(自尊心・自己価値)」という観点からも考えてみよう。どんな社会にも文化があって、どんな人が自由に生きやすいかがある程度決まっている。「自由」があるだけでは、多数派や強い人たちの色に社会が染まりすぎてしまう。みんなが「尊厳」をいだいて生きられるようになるためには、「自由」と「多様性」の両方が必要だ。

自分は他者に受け入れられる存在だ、と「尊厳」をもてるようになるには、他者から「承認」された経験が必要だ。子どもは成長の過程で他者と交流し、「試行錯誤」を繰り返して、「尊厳」を得ていく。ところが、「みんな(他者)」のことがよくわからなくなったいまの社会では、安定した「承認」が得られなくなり、安定した「尊厳」も得られなくなった。すると、さらに「みんな」のことがわからなくなるという悪循環が生まれている。

もっと見る
この続きを見るには...
残り3696/4637文字

4,000冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2023.03.05
Copyright © 2025 Flier Inc. All rights reserved.

一緒に読まれている要約

スマホ時代の哲学
スマホ時代の哲学
谷川嘉浩
リヴァイアサン 上
リヴァイアサン 上
トマス・ホッブズ加藤節(訳)
目の見えない白鳥さんとアートを見にいく
目の見えない白鳥さんとアートを見にいく
川内有緒
都市のドラマトゥルギー
都市のドラマトゥルギー
吉見俊哉
君たちは夢をどうかなえるか
君たちは夢をどうかなえるか
松本零士
新時代の話す力
新時代の話す力
緒方憲太郎
世界インフレの謎
世界インフレの謎
渡辺努
人生のリアルオプション
人生のリアルオプション
湊隆幸

同じカテゴリーの要約

いいことが起こる人の習慣
いいことが起こる人の習慣
内藤誼人
頭の中がどんどん言葉になる瞬間言語化トレーニング
頭の中がどんどん言葉になる瞬間言語化トレーニング
荒木俊哉
すぐやる! 「行動力」を高める“科学的な”方法
すぐやる! 「行動力」を高める“科学的な”方法
菅原洋平
なぜ働く?誰と働く?いつまで働く?
なぜ働く?誰と働く?いつまで働く?
有山徹
無料
精神科医が教える 休みベタさんの休み方
精神科医が教える 休みベタさんの休み方
尾林誉史
なぜか機嫌がいい人がやっている100の習慣
なぜか機嫌がいい人がやっている100の習慣
藤本梨恵子
「自分には価値がない」の心理学
「自分には価値がない」の心理学
根本橘夫
決定版 アドラー心理学がマンガで3時間でマスターできる本
決定版 アドラー心理学がマンガで3時間でマスターできる本
吉田浩岩井俊憲 (監修)
そろそろ論語
そろそろ論語
浅田すぐる
なぜあの人は同じミスを何度もするのか
なぜあの人は同じミスを何度もするのか
榎本博明