flier_logo
ゴールドプランなら4,000冊以上が全文読み放題! 7日無料体験はこちらから
スマホ時代の哲学の表紙

スマホ時代の哲学

失われた孤独をめぐる冒険


本書の要点

  • 現代人は自己逃避に勤しんでいる。自らを「激務」で取り巻き、自分以外のことには平気で疑いを向けるにもかかわらず、自分自身を疑うことはない。まるで「ゾンビ映画ですぐ死ぬやつ」のような生き方だ。

  • スマホによって常時接続が可能になった結果、私たちは、自分自身と向き合うために欠かせない「孤立」と「孤独」、そしてネガティヴ・ケイパビリティを失った。

  • 私たちは何かを作ったり育てたりする趣味を通して、自分の外側に立ち現れた謎と繰り返し対峙し、自己対話を行う。

1 / 4

現代人の「不安」との付き合い方

不安を逃れるための「激務」

ドイツの哲学者フリードリヒ・ニーチェは、著書『ツァラトゥストラ』でこのように語っている。

「君たちにとっても、生きることは激務であり、不安だから、君たちは生きることにうんざりしているんじゃないか?[……]君たちはみんな激務が好きだ。速いことや新しいことや未知のことが好きだ。――君たちは自分に耐えることが下手だ。なんとかして、君たちは自分を忘れて、自分自身から逃げようとしている」

自らを「激務」で取り囲もうとする現代人にとって、この指摘は他人事ではないはずだ。私たち現代人は、生きることの不安から逃げるために、予定を詰め込んだり、誰かにメッセージを送ったりせずにはいられない。

自分自身を決して疑わない人たち

S-S-S/gettyimages

私たちの「自己逃避っぷり」を考えるうえでは、スペインの哲学者オルテガ・イ・ガセットの著書『大衆の反逆』も参考になる。オルテガは、現代社会を分析するにあたって都市を取り上げ、都市の特徴は人の多さ、つまり多様な人たちがみな同じ場所に殺到していることだとした。

新型コロナウイルスの感染拡大や働き方の多様化、地方移住ブームなどによって、事情は少し変わったかもしれない。だが「多様な人たちがみな同じ場所に殺到していること」を「話題に居合わせること」へのこだわりだと理解すれば、オルテガの議論は変わらず有効だ。話題のニュースやコンテンツに人が群がっているさまは、まさに都市に人が群がっているのと同じである。

では、人は都市に集まって何をしているのか。オルテガによると、人は他人の話も聞かずに、とにかく自分の考えを自身満々でしゃべりまくっている。

ソーシャルメディアやカフェ、繁華街などにおける人々の姿を思い出すと、心当たりのある人は少なくないだろう。誰もが自己発信やセルフイメージばかりを気にしており、自分の考えを疑わず、自信満々にリプライを飛ばしている。自分以外のことには平気で疑いを向けるのに、自分自身を疑うことはない。そこに私たちの自己逃避っぷりが現れている。

「ゾンビ映画ですぐ死ぬやつみたいな生き方」をしていないか

現代人の生き方は、ゾンビ映画のモブキャラのそれに似ている。「俺は絶対死なねぇ」と自信満々の人、「お前らみたいなやつが集団を危機にさらすんだ」と他人を非難してばかりの人、「キャンプはこっちのほうが安全に決まっている」と言って寝ちゃう人……これらのセリフを聞いて「あかんフラグや」などと笑う人がいるかもしれないが、これこそ私たちの姿なのである。

もっと見る
この続きを見るには...
残り2704/3757文字

4,000冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2023.02.26
Copyright © 2026 Flier Inc. All rights reserved.

一緒に読まれている要約

14歳からの社会学
14歳からの社会学
宮台真司
都市のドラマトゥルギー
都市のドラマトゥルギー
吉見俊哉
もう一度、学ぶ技術
もう一度、学ぶ技術
石田淳
世界インフレの謎
世界インフレの謎
渡辺努
1日1アイデア
1日1アイデア
高橋晋平
冒険の書
冒険の書
孫泰蔵あけたらしろめ(挿絵)
新時代の話す力
新時代の話す力
緒方憲太郎
目の見えない白鳥さんとアートを見にいく
目の見えない白鳥さんとアートを見にいく
川内有緒

同じカテゴリーの要約

考えてはいけないことリスト
考えてはいけないことリスト
堀田秀吾
上手に「指示できる人」と「できない人」の習慣
上手に「指示できる人」と「できない人」の習慣
鶴野充茂
ミニマル脳習慣
ミニマル脳習慣
菅原道仁
服捨て
服捨て
昼田祥子
「気が利く」とはどういうことか
「気が利く」とはどういうことか
唐沢かおり
無料
「頭」を使える良問
「頭」を使える良問
高松智史
誰とでもうまく「話せる人」と「話せない人」の習慣
誰とでもうまく「話せる人」と「話せない人」の習慣
松橋良紀
IKIGAI シンプルに、豊かに生きる
IKIGAI シンプルに、豊かに生きる
エクトル・ガルシアフランセスク・ミラージェス長澤あかね(訳)大岩央(編・監修・解説)
無料
グズを直す本
グズを直す本
名取芳彦
耐えない思考
耐えない思考
なーすけ