ブランドとは、市場に存在するものではなく、消費者の頭の中にあるものだ。
たとえば、「アイスクリームが欲しいなぁ」と思ってコンビニに入り、色々見てからピノを買うのと、「ピノが欲しいなぁ」と思ってコンビニでピノを買うのとでは、全く意味合いが異なる。後者は前もって消費者が「ピノ」を指名しており、ブランドが記憶された状態だ。これは、トーナメント戦の「シード権」に例えると分かりやすい。将棋やテニスの強いプレーヤーがシード権をもって後半になって登場すれば、無駄なエネルギーを使わずに済む。これと同様に、シード権を得たブランドは選ばれる確率が高くなる。ただし、そこに至るには多くの時間がかかるものだ。
また、人々の関心は日々移りゆくため高いシード権を維持することは難しいものだ。そのため、企業は不断のブランディング活動によって、顧客の頭の中にあるブランドのシード権を上げる姿勢が問われている。
本書では、ブランディングを「利用者のブランドへの反響行動が、提供者のリターンとなって返ってくる仕組み」と定義する。反響行動とは、少し価格が高くても利用する、知り合いに推奨する、今後も継続利用するといった「提供者に望ましい、ブランドに対する利用者の自発的な行動」だ。
反響行動には代表的なものが3つある。
1つ目は、利用者が新たな利用者候補を導く反響行動である。利用者の推奨によって新規利用者を獲得できるため、広告やPRのコストが軽減できる。提供者側には情報の拡散をサポートするための「評判設計」が必要となる。
2つ目は、利用者の選択で優先順位が高くなる反響行動だ。提供者は利用者の強い記憶をサポートするための「シンボル設計」によってブランドの「らしさ」をつくり、利用者の感性に訴えることが必要となる。
そして3つ目は、利用者が継続的に購入してくれる反響行動である。自発的な自ブランドの再利用を起こすもので、提供者は体験の累積をサポートする「絆設計」が求められる。
ブランディングという抽象的な概念を具体的なアクションに落とし込むため、本書では「ブランディング・フレームワーク」を用いる。
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