異なる人と「対話」する本気のダイバーシティ経営

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異なる人と「対話」する本気のダイバーシティ経営
出版社
日本経済新聞出版

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出版日
2021年12月06日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

多様性後進国ニッポン――本書の序章に登場する言葉である。思わずドキッとする方も多いだろう。

本書によると、長年、男性中心の同質的な集団だった日本企業では、無意識的にマイノリティを排除する傾向がある。さらに、はっきりと言葉にすることを避け、「暗黙の了解」「あ・うんの呼吸」で物事を進めがちな風潮が、互いを深く理解するための「対話」を阻んできた。

本書には、そんな日本でダイバーシティ経営を実現するためのヒントが詰まっている。著者はジャーナリストで、「日経WOMAN」編集部でウーマン・オブ・ザ・イヤーを立ち上げた野村浩子氏だ。野村氏は本書で、ダイバーシティ経営のカギは「対話」であるとし、グローバル化や人材の多様化、働き方の変化などによる「多様性」の問題に向き合っている。

本書の特徴のひとつは、メルカリやキリンHD、東急電鉄、ソニーグループ、サントリーHDなど、多様性に本気で向き合う人・企業のリアルな取り組みを紹介している点だ。たとえばキリンビールでは、「なりキリンママ・パパ」研修を導入しているという。これは、子どものいない社員が、時間制約のある働き方を体験するという研修だ。この研修のおかげで、子育て社員への声かけが増えるとともに、家庭の事情をオープンに話せるようになり、心理的安全性が高まったそうだ。

近年、日本企業でも多様な人材が働くようになりつつある。異なる立場にある者同士の「対話」を進め、組織風土を改革しようとする人たちの実録に気づきをもらえること必至の一冊だ。

ライター画像
中村美音

著者

野村浩子(のむら ひろこ)
ジャーナリスト。1962年生まれ。1984年お茶の水女子大学卒業。日経ホーム出版社(現日経BP)発行の「日経WOMAN」編集部で1999年にウーマン・オブ・ザ・イヤーを立ち上げる。2003年同誌編集長。日本経済新聞社編集委員、淑徳大学教授などを経て、2020年4月東京家政学院大学特別招聘教授、東京都公立大学法人監事。財務省・財政制度等審議会、経済産業省・なでしこ銘柄基準検討委員会、横浜市人事委員会など政府、自治体の各種委員を務める。著書に『女性リーダーが生まれるとき』(光文社新書)、『未来が変わる働き方』(KADOKAWA)、『定年が見えてきた女性たちへ』(WAVE出版)、『働く女性の24時間』(日本経済新聞出版)、『市川房枝、そこから続く「長い列」』(亜紀書房)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    ダイバーシティ経営を実現するには、対話を活用した組織風土の改革が不可欠だ。
  • 要点
    2
    多様なメンバーが在籍する職場においては、管理職と部下一人ひとりとの「対話」が重要になる。その理由は「それぞれの事情を把握し、一人ひとり異なるモチベーションのスイッチを入れる必要があるから」と「経営層の言葉を現場に浸透させていく必要があるから」だ。
  • 要点
    3
    経営陣は「わが社におけるD&I推進の必要性」を自分の言葉で語る必要がある。これは、マイノリティ社員に対する「あなたはここにいてもいいんですよ」というメッセージとなる。

要約

なぜいま「対話」が必要なのか

対話が組織風土を変える

多様性後進国である日本ではいま、多くの企業がダイバーシティ経営の重要性に気づき、行動を起こしている。

ダイバーシティ経営を実現するには、働き方や人事制度の改革に加え、対話を活用した組織風土の改革が不可欠だ。その理由は2つある。

1つ目は、長らく男性中心であった日本社会には、ダイバーシティ&インクルージョン(多様性と包括)への抵抗感が根強く残っているからだ。この抵抗感をなくして組織風土を改革していくためには「対話」が効果的だ。

2つ目は、多様な人とともに働くためには、「暗黙の了解」や「あ・うんの呼吸」を求める「ハイコンテクスト社会」から脱却する必要があるからだ。多様性に富んだ組織では、「言わなくてもわかるだろう」はもはや通用しない。誰にでもわかる言葉で丁寧に対話し、コミュニケーションを取る必要がある。

【必読ポイント!】 管理職が組織の「対話」を変える

対話とダイバーシティ・マネジメント
Masafumi_Nakanishi/gettyimages

多様なメンバーが在籍する職場において、管理職にはダイバーシティ・マネジメントが求められる。ここでも部下一人ひとりとの「対話」がカギとなる。その理由は次の2つだ。

ひとつは、管理職はメンバー一人ひとりの事情を把握し、それぞれのモチベーションのスイッチを入れる必要があるからだ。上司と部下の1on1が急速に広まっている理由もここにある。スタッフの働き方が多様化し、テレワークの機会も増えるなかで、上司と部下の対話タイムを定例化することはきわめて合理的だ。

もうひとつの理由は、管理職は、経営層の言葉を現場に伝える役割を果たすからだ。経営理念やパーパス、ビジョン、ミッションなど、経営層から聞いたハイコンテクストな言葉を、具体的かつ明快な言葉に落とし込み、対話を通して現場に浸透させていく必要がある。

対話の方針を定める

コロナ禍に子育て社員との対話軸を変えたという、キリンビールの副部長、渡辺謙信さんの事例を紹介しよう。

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要約公開日 2023.05.07
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