空気を読む脳

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出版社
出版日
2020年02月19日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

「日本人は空気を読む」と言われることがある。礼儀正しく名誉を重んじる代わりに不安と同調圧力が強く、ひとたび怒り出すと手がつけられない。日本人は、日本においても海外においても、おおまかにそのようなイメージで捉えられているといってよいだろう。

これまでこうした性質は、主に文化的なものだと思われてきた。「島国」という言葉がなかば自嘲的に使われる点からは、地政学的なイメージも強いようだ。しかし実は、日本人を日本人たらしめているのは「脳」なのかもしれない。

本書の著者である中野信子氏は、日本人の脳はセロトニントランスポーターの密度が低いことに言及している。セロトニンとは安心感をもたらす脳内物質のひとつであり、日本人はそれを再取り込みする機能が低いことを意味する。すなわち、不安が強い日本人の性質は、教育や文化以前に、体質的なものであるという側面が強くあるということになる。

とはいえ、変えられないからといって悲観することはない。メカニズムを理解することは、的確に脳をコントロールし、よりよい方向に向けていくことに繋がっていく。政治経済から個人の生き方まで、その単位が人間である以上、脳に向き合うことは避けられない。脳についてその性能を詳しく知ることは、そのまま人間と世界を理解することになるのである。

ライター画像
池田明季哉

著者

中野信子(なかの のぶこ)
1975年、東京都生まれ。脳科学者、医学博士、認知科学者。東京大学工学部応用化学科卒業。同大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。フランス国立研究所ニューロスピン(高磁場MRI研究センター)に勤務後、帰国。脳や心理学をテーマに、人間社会に生じる事象を科学の視点をとおして明快に解説し、多くの支持を得ている。現在、東日本国際大学教授、京都芸術大学客員教授。著書に『サイコパス』(文春新書)、『脳の闇』(新潮新書)など多数。共著では『生贄探し 暴走する脳』(ヤマザキマリ、講談社+α新書)ほか。テレビ番組のコメンテーターとしても活躍中。

本書の要点

  • 要点
    1
    日本人の脳はセロトニントランスポーターの密度が低く、不安が強い傾向はこうした遺伝的要因が背景にある。
  • 要点
    2
    こうした性質は、日本人は自分が利益を失ってでも、不正をした相手に制裁を加えたいという気持ちが極めて強い民族であることをよく説明している。
  • 要点
    3
    日本人は慎重で思慮深いと思われがちであるが、それはもしかしたら褒められ方の問題があるかもしれない。素質を褒められた子供は失敗を恐れるようになる。困難に楽しんで向かうためには、過程や取り組みを褒める態度が望ましい。

要約

【必読ポイント!】 犯人は脳の中にいる 〜空気が人生に与える影響とは?

日本人はなぜ「醜くても勝つ」より「美しく負ける」を選ぶのか

2018年のサッカーワールドカップでは、戦略的な負けを選び日本チームの16強入りが決まったときよりも、決勝トーナメントで敗退して8強入りを逃したときのほうが、多くの賛辞が寄せられた。ニュース記事やSNSにおける反応は、海外のものも含めて「醜く勝ち上がるよりも、美しく負けるほうに価値がある」というコンセンサスを感じさせるものが多数を占めていた。

これは一見素晴らしいように見えて、非常に危険なものでもある。

なりふりかまわず勝ちを確実に取りに行くことは「醜い」と言われ、勝ち負け以外のことを大事にすることは「美しい」と評価される。歴史上の人物であれば悲劇的に人生を終えた人の物語が人気を集めるように、人間には悲劇性に美しさを感じてしまう性質があるようだ。

美を感じる脳の領域は前頭前野の一部、眼窩前頭皮質と内側前頭前皮質だと考えられている。眼窩前頭皮質は一般に「社会脳」と呼ばれる領域のひとつであり、他者への配慮や共感性、利他行動をコントロールしている。また内側前頭前皮質は、自分の行動の正誤、善悪を識別する部分であり、いわゆる「良心」を司っている領域であると考えられている。

すなわち、美しい・美しくないという基準と、配慮や利他行動は、本来まったく別の価値であるはずが、脳ではこれらが混同されやすいということが示唆される。

利他的な脳ほど不公正を憎む
Marcus Millo/gettyimages

ほかの動物と比べて突出して発達した「社会脳」の領域が、人間をここまで繁殖・繁栄させた源泉ではないかという見方もある。こうした機能によって社会性を維持することが、脆弱な人類にとっては死活問題であった。

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要約公開日 2023.05.04
Copyright © 2024 Flier Inc. All rights reserved.Copyright © 2023 中野信子All Rights Reserved. 本文およびデータ等の著作権を含む知的所有権は中野信子、株式会社フライヤーに帰属し、事前に中野信子、株式会社フライヤーへの書面による承諾を得ることなく本資料の活用、およびその複製物に修正・加工することは堅く禁じられています。また、本資料およびその複製物を送信、複製および配布・譲渡することは堅く禁じられています。
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