心配しないこと

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心配しないこと
出版社
定価
1,540円(税込)
出版日
2023年02月20日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

人生には不安がつきまとう。なんの不安もなく生きている人間などいないだろう。

不安をコントロールするために、さまざまなアプローチがある。その中でも古くからあるのが、仏教である。本書はスリランカ上座仏教長老であるアルボムッレ・スマナサーラ氏が、仏教の教えの中でも特に心の動きに注目し、そのメカニズムを解説したものだ。

仏教と聞いて身構えたり、「自分は無宗教だから」と敬遠したりする人もいるかもしれない。しかし、本書を読むと、仏教とは人の感情や心の動きを解き明かす、心理学や哲学的な側面も持ち合わせているということがよくわかる。その教えは仏教誕生から2000年以上経った現在でも十分通用する普遍性を持つ。

本書では、「わからない」ことが不安を増長させると説いている。心の動きや仕組みを観察し、理解することで、感情の暴走は食い止めることができる。また、2000年以上も前の理論が矛盾なく人の心の動きを解明していることが単純に新鮮で、興味深くもある。

日々を平穏に過ごしたいと願う人はもちろん、仏教哲学の入門書としてもおすすめしたい。本書はこれまでにない「仏教」との向き合い方に気付かせてくれるはずだ。仏教の教えは古臭いものでは決してなく、現代を生きる私たちの悩みにも丁寧に応えてくれる、極めて今日的な訓示に満ちている。シンプルなタイトルとは裏腹に、刺激的な読書体験を提供してくれる一冊となるだろう。

ライター画像
千葉佳奈美

著者

アルボムッレ・スマナサーラ(Alubomulle Sumanasara)
スリランカ上座仏教(テーラワーダ仏教)長老。1945年、スリランカ生まれ。13歳で出家得度。国立ケラニヤ大学で仏教哲学の教鞭をとったのち、1980年に国費留学生として来日。駒澤大学大学院博士課程で道元の思想を研究。現在、宗教法人日本テーラワーダ仏教協会で初期仏教の伝道と瞑想指導に従事し、ブッダの根本の教えを説きつづけている。朝日カルチャーセンター(東京)の講師を務めるほか、NHKテレビ「こころの時代」などにも出演。著書に『怒らないこと』『怒らないこと2』(だいわ文庫)、『死後はどうなるの?』(角川文庫)、『ブッダに学ぶほんとうの禅語』(アルタープレス)、『ブッダが教える心の仕組み』(誠文堂新光社)、『スッタニパータ「犀の経典」を読む』(サンガ新社)など多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    自分も周囲も変化し続けるし、人はいずれ必ず死ぬ。どんなに好ましい状態も、「現状維持」は不可能である。まずはこの当たり前の現実を受け入れなければならない。
  • 要点
    2
    人は「自分」という存在に価値をおいている。だから自分と他人を比較し、自我を確立しようとする。この心の働きが「慢」であり、「慢」の暴走がトラブルを生む。
  • 要点
    3
    「わからない」という状態のとき、不安は大きくなる。「無明」は無知であり、感情を暴走させる。それを防ぐのに大切なのは、理性を働かせ、客観的に判断することだ。

要約

不安のメカニズム

私たちは、何もわからない

私たちの人生は、不安に満ちている。自分の身のまわりのことから世界情勢などの巨視的な問題まで、誰もが大なり小なり不安や心配を抱えているだろう。不安や心配は、現状が変化することへの恐れだといえる。

しかし、よく考えてみれば、この世のすべては常に変化し、私たち自身も変わり続けている。将来を見通せないことなど当たり前だし、どんなに好ましい状態でも「現状維持」など不可能なのだ。自分は変化し、周囲も変わる。そして、いつかみんな死んでしまう。これが現実だ。

ブッダは「変化しないという錯覚に酔うことをやめなさい」と説いている。自分が変わること、自分の生活が変わること、未来がわからないことはすべて当たり前なのだ。私たちは当たり前の現実を認めることから、人生をやり直さなければならない。

不安は自分の心が生み出すもの
Natalie_/gettyimages

「老後の生活は大丈夫だろうか」「明日のプレゼンテーションはうまくいくだろうか」「資格試験に合格できるだろうか」など、私たちはいつも未来のことを心配する。

しかし、未来がどうなるのかなど誰にもわからない。仏教は、未来を知ることは不可能だと断言している。

一見当たり前のようだが、市場の動向や株価の変動、天気予報など、私たちはいつもわからない未来を知ろうとしている。未来が不透明であることを受け入れれば、将来に対する不安や心配を格段に減らせる。わからないことを心配しても仕方がなく、私たちはいつも最善を尽くすしかないのだ。

また、人には欲がある。「もっとお金が欲しい」「出世したい」など、さまざまな欲だ。

しかし、こうした欲が完全に満たされることはない。たとえ望むものをすべて手に入れたとしても、幸せだとは限らない。

お金を得ればお金がなくなることが不安になり、出世すればその地位を失うことが心配になる。不安や心配は外からやってくるのではなく、自分の心が生み出しているのだ。

「慢」という煩悩

仏教心理学では、あらゆる生命の心に「慢」という煩悩があると教えている。これは経典の言葉であるパーリ語では「māna(マーナ)」といい、日本語の「測る」という意味だ。慢は「自分を測る」心の働きである。

ここでの「測る」は、自分の存在を測るという意味だ。自分が何者なのかを知るために、人は自分と他人を比較する。この心の働きが慢であり、自己評価の煩悩である。

私たちの中には自我意識が存在する。他人と比較して測ることで、「自分はこういうものだ」という自我を確立しようとしているのだ。だから私たちは出会う人すべてと自分を比べている。比べることで自分にどの程度の価値があるかを知ろうとしている。

人は、自分だけでなくすべてのものに対して価値を測り、評価を定め、それに合わせて対応している。これが生命の基本だ。

道に落ちているのが1円玉なら価値が低いので放置するが、1万円なら価値が高いので拾うかもしれない。家に出た黒い虫がゴキブリなら悲鳴をあげるが、カブトムシなら喜ぶかもしれない。

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要約公開日 2023.05.23
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