本書の要点

  • 日本は、量的金融緩和のつけ、新冷戦、日本の財政赤字などの要因から、本格的なインフレ時代を迎えつつある。

  • 現金の価値が相対的に上がっていたデフレ時代とは異なり、インフレ時代においては現金の価値は目減りしていく。よって資産運用が大事になる。大局観を養い、「経済指標」を読む力を身につける必要がある。

  • 米国を中心とした12個の経済指標を読み解けば、相場の大局観を掴むことができる。

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デフレ脳からインフレ脳へ

低インフレ・低金利の時代は終わった

世界経済は、50年に一度ともいうべき大きな転換点に差しかかっている。2008年のリーマンショック以降、多くの先進国は低成長率とデフレリスクに悩まされたが、2021年5月頃から米国は急激なインフレへと転じた。その理由のひとつは、米国の中央銀行であるFRBが大幅な金融緩和を進め、特にコロナショック後に物凄い勢いでマネーサプライを増やしたことにある。ふたつめの理由は、米中間の新冷戦による「世界の工場」中国の切り離し、ウクライナ戦争による希少資源価格の高騰、といった地政学的な要因である。日本にいるとインフレを実感する機会がなかったが、2022年に日本銀行と日本政府が目標とするインフレ率を達成し、過去30年ほど続いたデフレ経済からようやく脱却できた。さらに、日本国内では多くの企業が初任給をはじめとして賃金の引き上げを始めたのである。

日本でインフレが定着する理由

ardasavasciogullari/gettyimages

日本でインフレが定着する可能性がある最大の理由は、FRBの極端な量的金融緩和である。米国では、短期間で、かつ非常に莫大なバランスシートの拡大が行われた。2008年のリーマンショックをきっかけに3回にわたって量的金融緩和を実施。その後、市中にばら撒いた資金の量を減らし始めて、2020年にはコロナショックに見舞われた。

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要約公開日 2023.09.02
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