ゴールドプランなら4,000冊以上が全文読み放題! 7日無料体験はこちらから

本書の要点

  • 高校までの初等中等教育では「正しい答えがある」ことが前提の問題に取り組む。しかし実社会に出れば、そのような答えのある〈問題〉はほとんどない。

  • 問題にはひとつの答えがあるものだと思ってきた教育と、なにひとつ絶対的な答えがない実社会の間に設けられるべき緩衝帯となることが、大学の役割である。

  • 想定外の問題に自分で対処するための「知の体力」が必要になる。それは知識の習得以上に、得た知識を再編して目の前の問題に適用していく考え方の訓練である。

1 / 3

知の体力とはなにか

答えがないことを前提として

その人生の大半を研究者として生きてきた著者は、あるとき京都産業大学の新学部設立に伴い、学部長になった。教育者として新入生たちに向かって話をするという新鮮な体験の中で、これまで考えなかったさまざまなことを考えざるを得なくなったという。

そこでもっとも強く感じたのは、新しく大学に入った新入生に「生徒」から「学生」になったという自覚が極めて薄いということだった。

高校までの初等中等教育では「正しい答えがある」ことが前提となった問題に取り組む。しかし実社会に出れば、そのような答えのある〈問題〉はほとんどない。問題にはひとつの答えがあるものだと思ってきた教育と、なにひとつ絶対的な答えがない実社会の間に設けられるべき緩衝帯となることが、大学の役割なのではないだろうか。

質問からすべてははじまる

たとえば研究発表の場で、質問を一切しない人がいる。しかし話された内容をただひたすら覚えたり吸収しようとするだけでは、その知識は自分のものにならない。話された内容を自分の知の体系のなかに位置づけるためには「能動的に聞く」ということが必要である。そうすれば、外部からインプットされてくる内容と、既存の自らの知とのあいだに生まれる軋轢が、質問を促すはずだ。まさに質問から、すべてははじまるのである。

想定外を乗り切る「知」の体力を

Marco VDM/gettyimages

誰にも未来はわからない以上、私たちにこれから起こることは、すべて想定外のことであると言える。それを自分の力で乗り越えていくことが生きるということだとしたら、想定外の問題に自分で対処するための「知の体力」が必要になる。それは知識の習得以上に、考え方の訓練である。

もっと見る
この続きを見るには...
残り3761/4466文字

4,000冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2023.09.10
Copyright © 2025 Flier Inc. All rights reserved.

一緒に読まれている要約

経営センスの論理
経営センスの論理
楠木建
仕事の思想
仕事の思想
田坂広志
今日はこのぐらいにして休みます
今日はこのぐらいにして休みます
ソン・ヒムチャン(緒方真理人)黒河星子(訳)
脳の闇
脳の闇
中野信子
不老脳
不老脳
和田秀樹
仮説脳
仮説脳
竹内薫
考える。動く。自由になる。
考える。動く。自由になる。
工藤勇一
答えを急がない勇気 
答えを急がない勇気 
枝廣淳子

同じカテゴリーの要約

いいことが起こる人の習慣
いいことが起こる人の習慣
内藤誼人
頭の中がどんどん言葉になる瞬間言語化トレーニング
頭の中がどんどん言葉になる瞬間言語化トレーニング
荒木俊哉
すぐやる! 「行動力」を高める“科学的な”方法
すぐやる! 「行動力」を高める“科学的な”方法
菅原洋平
なぜ働く?誰と働く?いつまで働く?
なぜ働く?誰と働く?いつまで働く?
有山徹
無料
精神科医が教える 休みベタさんの休み方
精神科医が教える 休みベタさんの休み方
尾林誉史
なぜか機嫌がいい人がやっている100の習慣
なぜか機嫌がいい人がやっている100の習慣
藤本梨恵子
「自分には価値がない」の心理学
「自分には価値がない」の心理学
根本橘夫
決定版 アドラー心理学がマンガで3時間でマスターできる本
決定版 アドラー心理学がマンガで3時間でマスターできる本
吉田浩岩井俊憲 (監修)
そろそろ論語
そろそろ論語
浅田すぐる
なぜあの人は同じミスを何度もするのか
なぜあの人は同じミスを何度もするのか
榎本博明