答えを急がない勇気 

ネガティブ・ケイパビリティのススメ
未読
答えを急がない勇気 
答えを急がない勇気 
ネガティブ・ケイパビリティのススメ
未読
答えを急がない勇気 
出版社
イースト・プレス

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出版日
2023年02月22日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

デキるリーダーは素早く判断し、行動する――。そんなイメージを持ってはいないだろうか。それに疑問を投げかけているのが本書である。

本書では、何かを「しないでおく」能力である「ネガティブ・ケイパビリティ」の重要性を訴える。「何もしないでおく」といっても問題を放置するということではない。問題には「正解がある問題」と「正解がない問題」があるが、リーダーがビジネスシーンで直面する多くは「正解がない問題」だろう。ビジネスシーンでは常にスピードが求められるが、「正解がない問題」に対する解決策を導き出すには、じっくり時間をかけて向き合う必要がある。この、本質に近づくために勇気を持って立ち止まる力こそがネガティブ・ケイパビリティなのだ。

著者は、環境ジャーナリスト・翻訳家の枝廣淳子氏だ。枝廣氏は、素早いレスポンスや行動が評価される今の時代こそ、ネガティブ・ケイパビリティが必要だと言う。ネガティブ・ケイパビリティは創造力や新しい学びの扉を開くカギであり、自分らしい幸せな人生の礎となるそうだ。

タイトルにもある「答えを急がない」ことは、一見簡単そうにも思える。しかし実際に本書を読んでみると、まさに「勇気」が必要だということを痛感する。問題が起きたとき、安易な解決策に飛びついたり、そこから生まれるはずの可能性を摘み取ったりしていないだろうか。モヤモヤするのは実は大切なこと――。そんな示唆が得られる一冊である。

ライター画像
中山寒稀

著者

枝廣淳子(えだひろ じゅんこ)
大学院大学至善館教授、有限会社イーズ代表取締役、株式会社未来創造部代表取締役社長、幸せ経済研究所所長、環境ジャーナリスト、翻訳家
東京大学大学院教育心理学専攻修士課程修了。『不都合な真実』(アル・ゴア氏著)の翻訳をはじめ、環境・エネルギー問題に関する講演、執筆、企業のCSRコンサルティングや異業種勉強会等の活動を通じて、地球環境の現状や国内外の動きを発信。持続可能な未来に向けて新しい経済や社会のあり方、幸福度、レジリエンス(しなやかな強さ)を高めるための考え方や事例を研究。「伝えること」で変化を創り、「つながり」と「対話」でしなやかに強く、幸せな未来の共創をめざす。
心理学をもとにしたビジョンづくりやセルフマネジメント術でひとり一人の自己実現をお手伝いするとともに、システム思考やシナリオプランニングを生かした合意形成に向けての場づくり・ファシリテーターを、企業や自治体で数多く務める。教育機関で次世代の育成に力を注ぐとともに、島根県隠岐諸島の海士町や徳島県上勝町、宮城県気仙沼市、熊本県南小国町、北海道の下川町等、意志ある未来を描く地方創生と地元経済を創りなおすプロジェクトにアドバイザーとしてかかわっている。

本書の要点

  • 要点
    1
    ネガティブ・ケイパビリティとは、何かを「しないでおく」能力のことである。不確実性を許容する高度な能力であり、真実に近づくために勇気を持って立ち止まることである。
  • 要点
    2
    ネガティブ・ケイパビリティが高まると、「ありたい自分」に近づくことができる。心の中の違和感と向き合うことで、納得度の高い人生が送れるようになる。
  • 要点
    3
    リーダーは自らネガティブ・ケイパビリティを発揮すべきだ。組織風土にネガティブ・ケイパビリティが浸透すると、普段は効率的に仕事を進めながらも、不確かなことはじっくりと考えられる組織に成長する。

要約

「ネガティブ・ケイパビリティ」という能力

ポジティブ・ケイパビリティの時代

現代は「ポジティブ・ケイパビリティ」の時代だ。ポジティブ・ケイパビリティとは「問題解決能力」のことで、情報収集、分析、計画を立てる、スピーチをするといった「物事を処理する能力」である。私たちは生まれてから死ぬまで、人生のあらゆるシーンでポジティブ・ケイパビリティが求められている。

ポジティブ・ケイパビリティの発揮には、その能力を発揮すべき状況や問題を理解し、それを行うための方法や学び方を知っていることが前提となる。しかし、その前提が成立しない場合はポジティブ・ケイパビリティだけでは対処できない。そこで登場するのが「ネガティブ・ケイパビリティ」である。

不確実性を許容する
MStudioImages/gettyimages

ネガティブ・ケイパビリティとは、何かを「しないでおく」能力のことである。たとえば悩み相談をされたとき、相手の話をじれったく感じて「だったらこうすればいいんじゃない?」とアドバイスしたことはないだろうか。相手のためを思った発言かもしれないが、実際は自分自身の居心地の悪さを解消するために、話を終わらせたかっただけかもしれない。

ネガティブ・ケイパビリティのある人は、いつまで続くかわからない話にも「うん、うん」と相手に寄り添いながら耳を傾けることができる。それは彼らがすぐに結論を出す、イライラする、諦める、決めつけるなどを「しないでおく」能力を持っているからである。そんなネガティブ・ケイパビリティとは「不確実性を許容する高度な能力」であり、「知的寛容さ」とも言い換えられる。

積極的に「行動する」「介入する」「意思決定する」ポジティブ・ケイパビリティに比べ、ネガティブ・ケイパビリティは“弱い能力”に見えるかもしれない。しかし、簡単に「反応しない」「結論を出さない」「思考停止しない」「切り捨てない」「不安や恐怖、非難にも屈しない」ことは、すぐに「行動する」よりも難しい。

ネガティブ・ケイパビリティとは、わからなさの中にとどまり続ける能力だ。それは「意思と目的をもって、そこでは結論を出さないこと」であり、真実に近づくために勇気をもって立ち止まることなのである。

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要約公開日 2023.08.25
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