現代は「ポジティブ・ケイパビリティ」の時代だ。ポジティブ・ケイパビリティとは「問題解決能力」のことで、情報収集、分析、計画を立てる、スピーチをするといった「物事を処理する能力」である。私たちは生まれてから死ぬまで、人生のあらゆるシーンでポジティブ・ケイパビリティが求められている。
ポジティブ・ケイパビリティの発揮には、その能力を発揮すべき状況や問題を理解し、それを行うための方法や学び方を知っていることが前提となる。しかし、その前提が成立しない場合はポジティブ・ケイパビリティだけでは対処できない。そこで登場するのが「ネガティブ・ケイパビリティ」である。
ネガティブ・ケイパビリティとは、何かを「しないでおく」能力のことである。たとえば悩み相談をされたとき、相手の話をじれったく感じて「だったらこうすればいいんじゃない?」とアドバイスしたことはないだろうか。相手のためを思った発言かもしれないが、実際は自分自身の居心地の悪さを解消するために、話を終わらせたかっただけかもしれない。
ネガティブ・ケイパビリティのある人は、いつまで続くかわからない話にも「うん、うん」と相手に寄り添いながら耳を傾けることができる。それは彼らがすぐに結論を出す、イライラする、諦める、決めつけるなどを「しないでおく」能力を持っているからである。そんなネガティブ・ケイパビリティとは「不確実性を許容する高度な能力」であり、「知的寛容さ」とも言い換えられる。
積極的に「行動する」「介入する」「意思決定する」ポジティブ・ケイパビリティに比べ、ネガティブ・ケイパビリティは“弱い能力”に見えるかもしれない。しかし、簡単に「反応しない」「結論を出さない」「思考停止しない」「切り捨てない」「不安や恐怖、非難にも屈しない」ことは、すぐに「行動する」よりも難しい。
ネガティブ・ケイパビリティとは、わからなさの中にとどまり続ける能力だ。それは「意思と目的をもって、そこでは結論を出さないこと」であり、真実に近づくために勇気をもって立ち止まることなのである。
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