答えを急がない勇気 の表紙

答えを急がない勇気 

ネガティブ・ケイパビリティのススメ


本書の要点

  • ネガティブ・ケイパビリティとは、何かを「しないでおく」能力のことである。不確実性を許容する高度な能力であり、真実に近づくために勇気を持って立ち止まることである。

  • ネガティブ・ケイパビリティが高まると、「ありたい自分」に近づくことができる。心の中の違和感と向き合うことで、納得度の高い人生が送れるようになる。

  • リーダーは自らネガティブ・ケイパビリティを発揮すべきだ。組織風土にネガティブ・ケイパビリティが浸透すると、普段は効率的に仕事を進めながらも、不確かなことはじっくりと考えられる組織に成長する。

1 / 4

「ネガティブ・ケイパビリティ」という能力

ポジティブ・ケイパビリティの時代

現代は「ポジティブ・ケイパビリティ」の時代だ。ポジティブ・ケイパビリティとは「問題解決能力」のことで、情報収集、分析、計画を立てる、スピーチをするといった「物事を処理する能力」である。私たちは生まれてから死ぬまで、人生のあらゆるシーンでポジティブ・ケイパビリティが求められている。ポジティブ・ケイパビリティの発揮には、その能力を発揮すべき状況や問題を理解し、それを行うための方法や学び方を知っていることが前提となる。しかし、その前提が成立しない場合はポジティブ・ケイパビリティだけでは対処できない。そこで登場するのが「ネガティブ・ケイパビリティ」である。

不確実性を許容する

MStudioImages/gettyimages

ネガティブ・ケイパビリティとは、何かを「しないでおく」能力のことである。たとえば悩み相談をされたとき、相手の話をじれったく感じて「だったらこうすればいいんじゃない?」とアドバイスしたことはないだろうか。相手のためを思った発言かもしれないが、実際は自分自身の居心地の悪さを解消するために、話を終わらせたかっただけかもしれない。ネガティブ・ケイパビリティのある人は、いつまで続くかわからない話にも「うん、うん」と相手に寄り添いながら耳を傾けることができる。それは彼らがすぐに結論を出す、イライラする、諦める、決めつけるなどを「しないでおく」能力を持っているからである。そんなネガティブ・ケイパビリティとは「不確実性を許容する高度な能力」であり、「知的寛容さ」とも言い換えられる。積極的に「行動する」「介入する」「意思決定する」ポジティブ・ケイパビリティに比べ、ネガティブ・ケイパビリティは“弱い能力”に見えるかもしれない。しかし、簡単に「反応しない」「結論を出さない」「思考停止しない」「切り捨てない」「不安や恐怖、非難にも屈しない」ことは、すぐに「行動する」よりも難しい。ネガティブ・ケイパビリティとは、わからなさの中にとどまり続ける能力だ。それは「意思と目的をもって、そこでは結論を出さないこと」であり、真実に近づくために勇気をもって立ち止まることなのである。

もっと見る
この続きを見るには...
残り3633/4535文字

4,000冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2023.08.25
Copyright © 2025 Flier Inc. All rights reserved.

一緒に読まれている要約

考える。動く。自由になる。
考える。動く。自由になる。
工藤勇一
聞く習慣
聞く習慣
いしかわゆき
心と体がラクになる読書セラピー
心と体がラクになる読書セラピー
寺田真理子
人生の道しるべになる 座右の寓話
人生の道しるべになる 座右の寓話
戸田智弘
自律神経の科学
自律神経の科学
鈴木郁子
知の体力
知の体力
永田和宏
脳の地図を書き換える
脳の地図を書き換える
梶山あゆみ(訳)デイヴィッド・イーグルマン
あの日、選ばれなかった君へ
あの日、選ばれなかった君へ
阿部広太郎

同じカテゴリーの要約

壁打ちは最強の思考術である
壁打ちは最強の思考術である
伊藤羊一
しんどい世の中でどうすれば幸せになれますか?
しんどい世の中でどうすれば幸せになれますか?
橘玲樺山美夏
とりあえずやってみる技術
とりあえずやってみる技術
堀田秀吾
無料
肩書がなくても選ばれる人になる
肩書がなくても選ばれる人になる
有川真由美
子どもが本当に思っていること
子どもが本当に思っていること
精神科医さわ
忘我思考
忘我思考
伊藤東凌
ハーバード、スタンフォード、オックスフォード… 科学的に証明された すごい習慣大百科
ハーバード、スタンフォード、オックスフォード… 科学的に証明された すごい習慣大百科
堀田秀吾
ハーバードの心理学講義
ハーバードの心理学講義
ブライアン・R・リトル児島修(訳)
なぜあの人は同じミスを何度もするのか
なぜあの人は同じミスを何度もするのか
榎本博明
1つの習慣
1つの習慣
横山直宏