下剋上球児

三重県立白山高校、甲子園までのミラクル
未読
下剋上球児
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三重県立白山高校、甲子園までのミラクル
未読
下剋上球児
出版社
定価
1,650円(税込)
出版日
2019年03月28日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.5
革新性
4.0
応用性
3.0
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おすすめポイント

部員は9人に満たず、グラウンドは雑草だらけ。地元からは“ヤンキー校”として煙たがられている高校の野球部が、まさかの甲子園出場を決めた――。本書はそんな、嘘のような本当の話である。

舞台は三重県津市白山町にある、三重県立白山高校。話は2013年春、高校教師の東拓司が白山高校に着任するところから始まる。野球部を指導する東は、前任の学校で県大会ベスト4の結果を残した若き名将だ。「思いきり野球がしたい」と希望を出した異動先は、悪評の高い「白山」。白山野球部は夏の県予選で毎年敗退をしている、文字通りの「弱小チーム」であった。東は絶望感を覚えるも「白山でもどこでもやってやる!」と闘志を燃やし、野球部の改革に取りかかる。環境整備、選手集め、問題を起こす部員の対応など数々の困難を乗り越えて、5年後の2018年夏、ついに白山高校を甲子園出場に導いたのであった。

本書では、東の奮闘を中心に、白山高校野球部の5年間の軌跡が綴られている。コーチ陣や部員たち、学校関係者や対戦チーム、地元の支援者についても詳細に掘り下げられており、著者の圧倒的な取材力が感じられる。

本書のタイトルにある「下剋上」は、県大会決勝戦前に、キャプテンがインタビューで答えた言葉からつけられた。「明日は、日本一の下剋上をします!」。この言葉通りになったミラクルストーリーを楽しんでいただきたい。

ライター画像
矢羽野晶子

著者

菊地高弘(きくち たかひろ)
1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、ライターとして独立。『中学野球太郎』誌上では打者として有望中学生投手と真剣勝負する「菊地選手のホームランプロジェクト」を連載中。著書に『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)、『野球部あるある』シリーズ(「菊地選手」名義/集英社)がある。
Twitterアカウント:@kikuchiplayer

本書の要点

  • 要点
    1
    本書は、夏の高校野球三重県大会で「10年連続初戦敗退」の三重県立白山高校野球部が、甲子園出場を決めるまでの5年間を綴ったノンフィクションである。
  • 要点
    2
    2013年春、高校教師の東拓司は白山高校に赴任した。白山高校は学力レベルが低く、野球部は人数が足りず廃部寸前。東は着任後、雑草だらけのグラウンドの整備を始め、部員たちと一緒に野球ができる環境を作っていった。
  • 要点
    3
    2016年夏の県大会、初戦で負けた白山は「10年連続初戦敗退」となった。
  • 要点
    4
    第100回全国高校野球選手権記念三重大会にて白山高校は決勝を制し、ついに「日本一の下剋上」を成し遂げた。

要約

雑草だらけのグラウンド

絶望的な異動

三重県の公立高校で教鞭をとる東拓司は、初任の上野高校で野球部を指導し、4年目の夏には県大会ベスト4に導いた。

公立校の教師に異動はつきものだ。「思いきり部活ができる学校に行きたい」と希望を伝えていた東は、校長に呼び出されてこう告げられた。「すまん、キミの野球人生を終わらせてしまった……」。

異動先は「白山」だった。1年前の夏、上野高校と対戦してコールドで勝ったチームである。白山は野球が弱いだけでなく、教育困難校と悪評高い学校でもあった。東の目の前には、黒いもやが立ち込めてくるようだった。

白山高校は、1959年に開校した歴史ある学校だ。かつては全校生徒1000名を超えた時代もあったが、2010年以降は1学年120名の定員を割るようになった。三重県内の公立高校偏差値一覧によると、白山は「40」と最低ライン。ここの生徒の多くは、志望校に落ちて「ほかに行く学校がないから」と仕方なく入学してくる。地元の人からも「ゴミを散らかすし、田んぼに隠れてタバコを吸う子もたくさんいる」と、煙たがられる存在であった。

2013年4月、東は白山へと赴任した。

廃部寸前の野球部
Steve Gronowski/gettyimages

「どうせコールドで負けるんやから、壮行会なんてやらんでええやろ!」と、体育館に大声が響いた。2013年夏の三重大会に挑む野球部の壮行会、壇上には新監督の東や11人の野球部員たちが上がっていた。

東の赴任時、野球部員は5名で、4名の新入生が入部した。東は退部した生徒をひとり呼び戻し、自分が担任を務めるクラスで中学時代に野球部だった生徒に頼み込み、なんとか頭数を揃えた。

初戦の対戦相手は、三重県最南端にある県立紀南高校。三重大会は5回終了時に10点差、7回終了時に7点差がついていたらコールドゲームになる。東は、地理的に生徒が集まりにくい紀南を相手に「さすがにコールドにはならないだろう」と踏んでいた。

しかし、ゲームは「地獄」であった。3回表を終えた時点では2対2の同点であったが、そこから白山守備陣は四球やエラーを連発し、失点を重ねていく。5回裏には3点を奪われ、2対12のコールドゲームが成立した。

皮肉にも、壮行会でヤジを飛ばしたヤンキーの予言は的中してしまった。

軍手をはめた部員たち

東が着任する前、野球部のグラウンドは荒れ果てていた。フィールドこそ広いがホームベースは見当たらず、外野部分には膝丈の雑草が生い茂り、とても野球ができる状態にはなかった。東は着任直後から環境整備に取りかかり、耕運機で土を掘り起こしてレーキでならし、金属製整備具をつけた軽トラックを牽引して、野球ができるグラウンドを作っていった。

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要約公開日 2023.11.30
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