デンマーク人はなぜ会議より3分の雑談を大切にするのか
デンマーク人はなぜ会議より3分の雑談を大切にするのか
デンマーク人はなぜ会議より3分の雑談を大切にするのか
出版社
出版日
2025年04月02日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

ビジネス効率性が高く、国際競争力でも常に上位にランクインするデンマーク。その背景にあるのは、最先端の技術や特別な経営手法ではなく、意外にも「雑談」かもしれない――本書『デンマーク人はなぜ会議より3分の雑談を大切にするのか』は、そんな驚きと納得を与えてくれる一冊だ。

著者の針貝有佳氏は、15年以上デンマークに在住し、現地の社会や文化を観察してきたデンマーク文化研究家である。本書の執筆に際しては、40人以上のデンマーク人にインタビューし、彼らが日々どのようにコミュニケーションを取り、成果を生み出しているのかを丹念に取材している。

本書によれば、デンマークの創造的なイノベーションや組織の成長を支えているのは、「3分の雑談」だ。勤務中にプライベートも含め、相手の近況や興味をサクッと知り、気軽な気持ちでアイデアを口にする。それが、仕事上で配慮につながったり、画期的なイノベーションの種になったりする。ちょっとした雑談が、メンバーの力を最大限に引き出す創造的な働き方を支えているのだ。

日本の職場環境で、すべてを一気に取り入れることは難しいかもしれないが、閉塞感のある職場に風を通し、チームの活性化を促す際に、本書の考え方は参考になる点が多い。職場の人間関係に悩む人、チームとのコミュニケーションを改善したいと思う人、イノベーションを生み出すヒントを探している人に、広く本書をおすすめしたい。雑談から始まる、新しい働き方のヒントが得られるはずだ。

ライター画像
池田友美

著者

針貝有佳(はりかい ゆか)
デンマーク文化研究家
デンマーク在住。1982年生まれ。早稲田大学大学院社会科学研究科にてデンマークの労働市場政策「フレキシキュリティ・モデル」を研究して修士号取得。2009年末にデンマーク移住後、15年以上にわたってテレビ・ラジオ・新聞・雑誌・ウェブ等からデンマーク現地情報を発信。社会学的アプローチで社会を観察し、デンマーク語で現地の第一次情報にアクセスし、情報・世論・市民の声を届ける。著書に、『デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか』(PHPビジネス新書)、『北欧のあたたかな暮らし 小さな愉しみ』(共著・学研)など。最近は、企業・自治体・教育・研究機関向けに、働き方やキャリアに関する講演を精力的に行なっている。執筆記事400以上、商品・都市開発のヒントとなる事例レポート300以上。『ビートたけしのTVタックル』『ミヤネ屋』等に取材協力・出演。時代に新風を吹き込むクリエイターのコンテンツ制作・PRサポートもてがける。

本書の要点

  • 要点
    1
    デンマークの職場のコミュニケーションでは、「軽い雑談」がコミュニケーションの手段として大切にされている。これが、高い効率性やイノベーションの創出を支えている。
  • 要点
    2
    メンバーが自分のやりたい仕事をすればするほど組織も成長する。こんな好循環を実現するのは、「ラクなコミュニケーション」「アイデアを引き出すポジティブなコミュニケーション」「トラブル対処法」の3つだ。
  • 要点
    3
    デンマークでは、仕事でもプライベートでも、人が人をつないでいく。人を介したマッチングがうまくいくのは、普段から良質な「雑談」と「対話」を重ねているからこそだ。

要約

【必読ポイント!】 雑談をなめるな!

ビジネス効率性5年連続1位の国は「雑談」に支えられている
metamorworks/gettyimages

ビジネス効率性5年連続1位のデンマークは、人口は約600万人でありながら、グローバルに活躍するユニークな企業をいくつも排出している。ビジネス効率性が高いと聞くと、テキパキと仕事だけをしている様子をイメージするかもしれないが、実際のデンマークの職場はのんびりしている。短い勤務時間の中に「軽い雑談」を取り入れ、週に1回の朝食会の開催からチームメンバーの誕生日祝いまでする。

そんなデンマーク人への取材を通して見えてきたのは、仕事とは関係なさそうな「軽い雑談」がイノベーションを起こすきっかけとなり、仕事の成果につながっているということだ。たとえば、長時間にわたる会議で解決しなかった問題の解決策が、たわいもない会話の中でパッと思い浮かんだことはないだろうか。矛盾するようだが、「真面目に」ばかり向き合っては、本当に良い仕事はできない。むしろ気楽にかまえて誰かと雑談すると、意外な突破口が見えてくることがある。

国際競争力トップクラスで、世界有数のアイデア大国であるデンマークを支えるのは、成果を最大化させる「コミュニケーション」だ。もしあなたが本当に向かうべき「仕事」そのものにうまく向かえていないとしたら、デンマーク流のコミュニケーションが役に立つかもしれない。コミュニケーションが円滑にできれば、仕事でもプライベートでも、もっとラクにやりたいことができるようになる。

「ちょっと話そう」がきっかけで大きな成果が生まれる

コペンハーゲンの運河沿いの建物内にある「ブロックスハブ」という機関は、サステナビリティ事業に関わる企業や個人のみが会員になれるというユニークなコワーキングスペースを運営している。そこではカジュアルに立ち話やおしゃべりができる環境が整っており、「カジュアルな場のチカラ」を活かして、国内外の多様なステイクホルダーをつなげる役割を果たしている。

同機関で働くヤコブは、カジュアルな場での「数分間の雑談」が侮れない成果を生み出すと指摘する。実際、ヤコブ自身もその日は5分会議を2回行っていたが、それによって一緒に仕事ができる可能性が見え、全体像もつかめたという。カジュアルなスペースでする軽い会話から自然と協力関係が生まれ、その後の成果につながるという実感があるそうだ。

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要約公開日 2025.05.12
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