コンピューターの普及以前、情報ネットワークの連鎖は主に人間が担っており、それによって教会や国家といった大規模な社会的構造を築いた。たとえば、口伝えで情報を伝える人間同士の連鎖や、手紙という文書と人間の連鎖がそれだ。
逆に言えば、文書と文書を結びつけて新たな情報の連鎖を作り出すためには、必ず人間の関与が必要だった。どんな文書でも、それ自体が別の文書を生み出すのではなく、人間の思考を通過してはじめて、別の文書への道が作られた。
これに対し、コンピューターは人間の介入なしで文書や情報同士を繋ぐことができるという点で、以前のテクノロジーとは根本的に異なる。人間というメンバー同士を結びつけるだけの粘土板、印刷機、ラジオなどとは違い、コンピューターは本質的に、能動的に情報を処理し、意思決定を行う役割を果たすことができる。
コンピューターは情報ネットワークの新たなメンバーとなり、人間の役割を超え、多くの分野で強大な力を手にする可能性を秘めている。たとえば、金融の実態や法制度を把握し、自ら金融ツールを生み出して市場を支配したり、法令違反を監視したりするようになるかもしれない。
コンピューターの力が増すことで、新しいネットワークが登場することは避けられないだろう。もちろん、それがすべてを一新するわけではなく、しばらくの間は従来の情報の流れも続くと考えられる。しかし、この新しいネットワークには2つの新しい連鎖が次第に加わっていくはずだ。
1つ目は、コンピューターと人間の連鎖である。コンピューターが人間同士を繋げるだけでなく、時には人間の行動をコントロールする。たとえば、フェイスブックやティックトックといったソーシャルメディアの仕組みがこれに該当する。このタイプの連鎖は、従来の「人間と文書」という結びつきとは大きく異なる。コンピューターは意思決定を行ったり、新たなアイデアを生み出したり、時には偽りの親密さを作り出したりする能力を持っており、文書では達成できないような形で人々に影響を及ぼすからだ。
2つ目は、コンピューター同士が独立してやり取りを行う、コンピューター間の連鎖である。今後、人間はそのネットワークから排除され、その中で何が起きているのかを理解することすら難しくなっていく。
この進化のうちでは、AIは「Artificial Intelligence(人工知能)」の頭字語ではなく、「Alien Intelligence(人間のものとは異質の知能)」と考えるべきかもしれない。
数百年、あるいは数千年にわたるコンピューターベースのネットワークの進化を予測することは難しいが、現時点での進化については見えている。それは誰に対しても即座に政治的・個人的な影響を与えるため、その動向を理解することは極めて重要だ。
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