本書の要点

  • IT技術の発展は私たちに恩恵をもたらした一方で、社会の分断も生んだ。民主主義とITは相いれないものとされ、互いに攻撃するようになった。

  • 台湾の政治は、ITと民主主義が手を取り合った希有な例である。民主主義とITの深刻な分断を乗り越えデジタル民主主義を成熟させていった。

  • 「プルラリティ(多元性)」は技術の方向性を定め、社会の発展につなげるための概念である。それはまず、社会は様々な要素が関連し合う、複雑かつ多元なものであるという理解からはじまる。

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分断の狭間で

世界はひとつの声に支配されるべきではない

対立を創造に変え、新たな可能性を生む――。「プルラリティ(多元性)」はそのための道しるべである。技術革新の時代に、技術は世界をつなぎ、同時に分断も生み出した。台湾は複雑な歴史と幾多の分断を越え、デジタル民主主義を生んだ。人々の声を可視化し、多数決が見落としてきた声を掬い上げる。多様な声が響きあい、民主的な対話が社会のゆく道を決めるのだ。

敵対するITと民主主義

smartboy10/gettyimages

1960年代に産声を上げたインターネットという新技術は、遠く離れた人とつながる可能性をかつてないほど高めた。知識が国境を超え、そして言葉の壁や文化を越えて拡散する時代が来たのである。一方で、グローバル化は社会の格差を推し進め、巨大ハイテク企業が台頭した。人々は極端な意見に走り、分断の亀裂はいっそう深くなっていく。

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要約公開日 2025.06.15
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