成功の要諦

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成功の要諦
出版社
致知出版社
出版日
2014年11月25日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.5
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おすすめポイント

京セラとKDDIを世界的大企業へ成長させ、破綻した日本航空を再生させた、日本を代表する経営者である稲盛和夫氏。本書には、稲盛氏が五十五歳から八十一歳までに行った、経営者向けの六度の講演が採録されている。まさに「成功の要諦」というタイトルが示すように、人生と経営を成功に導く普遍の哲学が凝縮された一冊である。その教えは古びることはなく、情報が錯綜し心の拠り所を見つけづらい現代にこそ、確固とした人生の指針を提示してくれる。

臨場感に満ちた講演録を読み進めるうちに、まるで稲盛氏の講演を直接聴き、励まされているような気持ちになってくる。どんな逆境にあっても、ど真剣に生き、すべてのものごとへの感謝の気持ちを忘れない。自分の才能を世のため人のために使い、明るく前向きに努力し続けることで、運命を切り拓いてきた彼だからこそ到達した人生観が、自然と心に染みこんでくる。

「経営の極意は利他にあり。」「人生を生きる意味とは、自分の魂を磨くことにある。」こうした彼の哲学が生まれた背景と、経営における実践の軌跡をたどることで、真の豊かな人生を送るための心構えを体得できるはずだ。ビジネスを成功させる即効性のあるテクニックではなく、中国の古典や仏教の教えをもとに、より大局的な観点から「人生を切り拓いていくための知恵」を授けてくれる珠玉の一冊だ。人生の転機を迎える人や、壁を乗り越えようと試行錯誤している人にこそぜひ読んでほしい。

ライター画像
松尾美里

著者

稲盛 和夫(いなもり かずお)
昭和7年、鹿児島県生まれ。鹿児島大学工学部卒業。昭和34年、京都セラミック株式会社(現・京セラ)を設立。社長、会長を経て、平成9年より名誉会長。昭和59年には第二電電(現・KDDI)を設立、会長に就任、平成13年より最高顧問。22年には日本航空会長に就任し、代表取締役会長を経て、25年より名誉会長。昭和59年に稲盛財団を設立し、「京都賞」を創設。毎年、人類社会の進歩発展に功績のあった方々を顕彰している。また、若手経営者のための経営塾「盛和塾」の塾長として、後進の育成に心血を注ぐ。主な著書に『「成功」と「失敗」の法則』『人生と経営』『何のために生きるのか』(共著・いずれも致知出版社刊)『生き方』(サンマーク出版)『従業員をやる気にさせる7つのカギ』(日本経済新聞出版社)『ゼロからの挑戦』(PHP研究所)『ど真剣に生きる』(NHK出版)『燃える闘魂』(毎日新聞社)『働き方』(三笠書房)『賢く生きるより、辛抱強いバカになれ』(共著・朝日新聞出版)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    周囲に起こる現象は、自分の心の反映である。心に描いた通りになるには、強烈で持続した思いをもっていることと、美しい思いを描くことの二つの条件が必要になる。
  • 要点
    2
    経営者には哲学が必要であり、物事の判断を下すときには、「人間として正しい道」かどうかを基準にすることが大切である。
  • 要点
    3
    どんな苦難に遭っても「感謝しなければならない」ということを理性に刻みつけることが大切であり、人間性を高め、世のため人のために尽くすことが人生の目的だ。

要約

心と経営

「心に描いた通りになる」ための条件
Sergey Nivens/iStock/Thinkstock

著者は、人間の心が、経営にいかに大きな影響を及ぼすかを実感している。企業には、資本金の額や財務の健全性、技術開発力など数字で表せる「見える部分」と、トップの信念や従業員の心を反映した社風などの「見えざる部分」とがある。著者は後者の方が経営により大きな影響力を及ぼすと考えている。学歴も人材も資金力もない状態で、京セラが驚異的な発展を遂げることができたのは、見えざる部分の影響としか考えられない。

人間は、心に描いたことや意識したことによって左右され、心に描いた通りの現象が現れる。とはいえ、「こうありたい」と願う程度ではなかなか実現しない。心に描いたことが実現されるには、二つの条件が必要だ。一つは、強烈で持続した思いをもっていること。本人が一点の曇りもなく心の底から思わなければ、実現するわけがない。二つ目の条件は、「美しい思いを描くこと」である。たとえ「どうしても成功したい」という強烈な思いがあっても、それが「自分自身のエゴから生まれた思い」だった場合には、一時的な成功を収めても、永続的な成功にはつながらないのである。

この観点に立つと、企業のトップが常々心に描いているものが、会社に大きな影響を及ぼしていると言える。そして、借りものではないトップ自身の思いこそが「経営理念」となる。その理念を常に社員に話すことで、社員みんなに理念が浸透して社風がつくられる。トップから社員までの心の集積が、その会社の運命を決めるのだと考えている。

【必読ポイント!】 なぜ経営者には哲学が必要なのか

「人間として正しい道」を判断基準にする
whitetag/iStock/Thinkstock

経営者には哲学、つまりレベルの高い人生観が不可欠である。なぜなら、経営者は企業経営のあらゆる機会に、物事の判断を迫られるからだ。

京セラの前身である京都セラミックを起業した当時、著者が判断基準としたのは、小さい頃に両親から教えられたプリミティブな倫理観だった。この倫理観に裏打ちされた判断基準が、「人間として正しいこと」だったからこそ、今日まで京セラは発展したのだろう。経営者が物事の判断を下すときは、「人間として正しい道」を基準にしなくてはいけない。

中小企業が発展し続けるケースは決して多くない。途中で潰れる理由は主に次の2つである。一つは、会社を律する倫理観の欠如だ。倫理観を身につけていない人がリーダーになると、不祥事が起こり始める。会社を律すべき判断基準を全社員に浸透させていないために、社内に混乱が生じ、伸び悩みに陥ってしまうのだ。

もう一つは、経営管理システムの欠落である。多くの経営者は、「売り上げを増やせば経費も増える」と考えている。しかし、著者は「売り上げを最大化し、経費を最小化すること」が経営に必要だと考える。それを実現させるべく、工場や営業の現場など、全部門の採算がわかるシステム、「アメーバ経営」をつくりあげた。会社の規模が大きくなっても、各部門の採算状況が詳細かつリアルタイムに見えるので、どの事業部のどこが問題になっているかを短時間で把握することができる。社員一人ひとりが経営者と同じ意識で仕事に取り組めるシステムの構築が、京セラの発展につながった。

経営の極意は利他にある

人は成功するとついうぬぼれて、自分に才能があるから成功したと勘違いし、才能を私物化する。

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要約公開日 2015.03.27
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