ある日曜日の午後、山本隆は週明けのタスク処理に向けて自宅で作業を行なっていた。やりはじめてからもう2時間も経っているのに、作業は一向に進んでいない。そこへチャイムを鳴らす音とともに、宅配業者がやってきた。心当たりのない大きな荷物を開けてみると、電子レンジくらいのサイズで白く四角い超合金のおもちゃのようなものが入っていた。その正体はAIロボット「コウゾウVer.1」。思考を構造的に整理できるAIロボット。タカシはすっかり忘れていたが、以前ふと目にしたSNSから応募したロボットモニターに当選したのだ。
スイッチを入れて設定をすると、コウゾウは小学生の男の子の声で話し始めた。「タカシくんの悩みは何ですか? お役に立ちますよ?」
タカシはメンターから構造化して考えることが苦手だと指摘を受け、悩んでいたが、自分ではうまく解決できずにいた。そこで手始めに、考え方を構造的に整理するための基本的な頭の使い方を教えてほしいとお願いした。
そもそも、構造化とは何か。コウゾウは次のように説明する。構造化とは「複雑なモノや情報を、目的に最適な形で、視覚的にわかりやすくまとめること」だ。たとえば、構造化というと何でもマトリクスにしようとする人がいるが、まず考えなければならないのは、何のために構造化するのかという、「目的への最適性」である。次に大切なのが、「視覚的」にまとめるということ。ノートやホワイトボードなどに構造が見える状態で整理されれば、思考を静止画としてとらえられるようになり、より深く、客観的に考えられるようになる。
自分の視点で物事を構造化して捉えることができるようになれば、その物事を批判的に考えることもできる。その意味で、構造化思考は、「クリティカル・シンキング」を実践するための思考ツールでもあるともいえる。裏を返せば、構造化のスキルなくしてクリティカル・シンキングを実践することは難しいということだ。
次に、コウゾウは構造化のための法則としての「構造化の5P」というフレームワークについて説明した。5Pとは、「Purpose:目的(何のために構造化するのか?)」「Piece:断片(具体的に何があるのか?)」「Perspective:視点(目的と断片をつなぐキーワードは?)」「Pillar:支柱(どのくらいの単位でまとめるのか?)」「Presentation:表現(最適なビジュアル形式は?)」の5つである。
コウゾウによれば、Purposeが構造化において最も重要な要素だ。たとえば、コウゾウが届いたときにタカシは来週のタスクを整理、つまり構造化しようとしていた。これは「自分のため」の作業であったので、緊急度や重要度で考えることが有効だったとコウゾウは例を挙げる。しかし、もしこれが「上司にタスク量について交渉するため」の作業であったら、工数と組織へのインパクトなど、別の視点のほうが効果的であるはずだ。何を目的として、どういう視点で整理するかで、適切な表現は変わってくる。適切な表現を検討するには、まずはPurpose自体の解像度を高めなければいけない。この段階についてしっかりと考えておくことが、後の工程を楽にしてくれる。
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