医者が教える疲れない人の脳
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医者が教える疲れない人の脳
出版社
出版日
2025年04月05日
評点
総合
3.5
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

朝すっきり起きられない。なんとなく体が重い。やる気が出ない――。そんな“なんとなく不調”が続く人に、ぜひ一読を勧めたいのが本書である。

著者の有田秀穂氏は、東邦大学医学部名誉教授であり、脳生理学・精神生理学を専門とする医師・脳生理学者だ。セロトニン研究の第一人者としても知られ、心身の健康にかかわる神経伝達物質の研究を長年にわたり続けてきた人物である。

本書では、「脳疲労」に着目し、なぜ休んでも疲れが取れないのか、なぜ眠れないのかといった現代人の悩みの正体と解決策を、脳科学の視点から見ていく。キーワードは「セロトニン」「オキシトシン」「メラトニン」だ。どれも難しそうに聞こえるが、丁寧な説明と具体例のおかげで、専門知識がなくとも理解しやすい。

中でも印象的なのは、デジタル機器に依存した生活が、睡眠の質や感情のコントロールにまで悪影響を及ぼすという指摘だ。日中はデジタルを活用しつつ、夜はアナログな過ごし方に切り替える「ハイブリッド生活」をしようという提案には、納得感がある。

慢性的な疲れは単なる休養不足・モチベーション不足ではなく、脳のシステムそのものの問題である――。この事実を知るだけでも、無理に自分を責めず、適切にセルフケアを行おうという意識が芽生えてくるだろう。つい頑張りすぎてしまう人、デジタルデバイスに依存している自覚がある人、ストレスが溜まるとSNSやゲームで解消しようとしがちな人に読んでほしい。

著者

有田秀穂(ありた ひでほ)
医師・脳生理学者。東邦大学医学部名誉教授。セロトニンDojo代表。
1948年東京生まれ。東京大学医学部卒業後、東海大学病院で臨床に、筑波大学基礎医学系で脳神経系の基礎研究に従事。その間、米国ニューヨーク州立大学に留学。東邦大学医学部統合生理学で坐禅とセロトニン神経、前頭前野について研究、2013年に退職、名誉教授となる。各界から注目を集める「セロトニン研究」の第一人者。メンタルヘルスケアをマネジメントするセロトニンDojoの代表も務める。
著書に『脳からストレスを消す技術』(サンマーク出版)、『脳科学者が教える「ストレスフリー」な脳の習慣』(青春出版社)、『脳科学者が教える やっかいな脳のクセをリセットする朝5分の呼吸法』(総合法令出版)など多数がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    慢性疲労の改善においては、セロトニンが鍵となる。セロトニンの分泌を促すためには、太陽光を浴びることと体を動かすことが有効だ。
  • 要点
    2
    ストレス解消にはオキシトシンが役立つ。オキシトシンの分泌を増やしたいなら、誰かと心地よくおしゃべりする時間をつくろう。
  • 要点
    3
    快眠を導くホルモンはメラトニンだ。メラトニンを分泌させるために、「黄昏時から入眠まではアナログ生活を」を合言葉として、日中は適度に体を動かし、夜はオフラインで過ごそう。

要約

疲れとセロトニン

慢性疲労の原因は「脳」にある

体にこれといった異常は見られず、十分な休養もとっているはずなのに、目覚めが悪く、体調はすぐれないし、やる気も湧いてこない――。

このような慢性的な疲労感の根本的な原因は、「脳」にある。

脳内には、「ノルアドレナリン神経」と「セロトニン神経」という、覚醒を司る神経が存在している。これら2つの神経は、起床と同時に活性化し、大脳を覚醒させるとともに、気分の落ち込みをやわらげ、身体を活動モードに切り替える役割を担っている。さらに、自律神経を「休息の副交感神経」から「活動の交感神経」に切り替え、体温や血圧を上げ、代謝を活発にする役割も果たす。

しかしながら、これらの神経が「脳疲労」によってうまく機能しなくなると、目覚めた直後から疲労感が抜けず、意欲がわかず、気分も沈みがちになり、体も思うように動かなくなってしまう。

「頭の疲れ」と「心の疲れ」
dusanpetkovic/gettyimages

脳疲労には、大きく分けて2種類ある。

1つ目は、大脳を酷使することで生じる「頭の疲れ」だ。「頭の疲れ」が現れると、思考が鈍くなるだけでなく、寝つきにくくなる。その主な要因は、パソコンやスマートフォンといったデジタル機器の長時間利用だ。

2つ目は、「心の疲れ」だ。こちらは大脳辺縁系、中でも「扁桃体」という領域が関係している。精神的ストレスがかかると、扁桃体が過剰に反応し、気分の落ち込みや意欲の低下を引き起こすのだ。

注目すべきは、「頭の疲れ」が「心の疲れ」を引き起こす点だ。

デジタル機器に依存した生活を送っていると、睡眠の質が悪くなり、よく眠れなくなる。眠れないと、ついインターネットやゲームに手が伸び、翌朝は寝不足。頭がすっきりせず、体調も整わない……。こうした悪循環が、やがて「心の疲労」へとつながっていくのだ。

セロトニンを分泌させる2つの習慣

「セロトニン神経」の機能が低下すると、良質な睡眠や朝のすっきりとした目覚めが得られにくくなるばかりか、自律神経失調症や慢性疼痛、うつ病などを引き起こす原因になる。「心の疲れ」を深刻化させないためには、セロトニン神経の働きを常に活発に保つ努力が欠かせない。

そのために有効なのが、太陽光を浴びることと体を動かすことの2つである。

朝になってもカーテンを閉め切ったまま、寝転んでデジタル機器に没頭するような生活を続けていれば、セロトニン神経は十分に働かず、やがて正常に機能しなくなってしまう。その結果、心身にさまざまな不調が現れるようになる。

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要約公開日 2025.06.09
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