新たな習慣を生活に取り入れたいとき、多くの人は「達成したい結果」を思い描き、やる気を高めて行動に移そうとする。ところが実際には、意志の力だけに頼った習慣の多くは、やる気が続かず、定着せずに終わってしまうことが多い。
たとえば、ダイエットを始める場合を考えてみよう。「やせたい」という結果を求めて、新しい食習慣を取り入れるとする。しかし、その食事法がストレスを伴うものであれば、続けること自体が苦痛となり、途中で挫折したり、体重がいったん減っても元の食生活に戻ってリバウンドしてしまったりするものだ。
新たな行動を習慣化したいときには、「その習慣が定着することで、自分の人生はどのように良い方向へ進んでいくのか?」と、自分自身に問いかけてみることが重要である。つまり、「手に入れたい結果」から考えていくのではなく、「自分はなぜそうするのか」「どんな自分になりたいのか」に意識を向けることが習慣化の定着と継続を成功させる秘訣だ。
理想の自分を思い描き、その姿が実現したときの幸福なイメージをより鮮明に思い描くと、自然と自己肯定感が高まっていく。自己肯定感が十分にある状態では、たとえ途中でつまずいたとしても、自分を責めることなく、失敗を前向きに受け入れられる。そして、他人と比較して落ち込むことなく、現在と未来に希望を持ち、自分を信じて一歩を踏み出せるようになる。
自己肯定感は「6つの感」によって成り立っている。
・自尊感情:自分には価値があると思える感覚
・自己受容感:ありのままの自分を認める感覚
・自己効力感:自分にはできると思える感覚
・自己信頼感:自分を信じられる感覚
・自己決定感:自分で決定できるという感覚
・自己有用感:自分は何かの役に立っているという感覚
これら「6つの感」は、互いに影響し合いながら、自己肯定感のバランスを保っている。
たとえば、自尊感情と自己受容感が満たされている人であっても、大切な仕事で失敗した直後には自己効力感や自己信頼感が傷つき、一時的に自己肯定感が揺らぐことはある。ところが、自尊感情と自己受容感が満たされていれば、やがて傷は癒え、再び前を向くことができるのだ。
新たな習慣を身につけ、定着させるまでには、6つのステップを踏む必要がある。理想の自分を思い描き、それに近づくための行動を試し始める種まきの時期があり、習慣化が途切れそうになる反発期や忍耐期、成長期などのステップを踏んで、習慣が定着・持続する開花期、達成期に至るのだ。
そして、この6つの習慣化ステップは、前述の「6つの感」と密接に関係している。それぞれの段階を乗り越えるためには、特定の「感」が大きな助けとなるからだ。その対応関係を見てみよう。
(1)習慣の種まき期:目指す姿を思い描き、どの習慣に挑戦するかを考えるフェーズ。この時期を支えるのは、「自分には価値がある」と思える自尊感情である。
(2)習慣の反発期:現状維持を求める無意識の反発が起こり、「なんでこんなことをしているんだろう?」と疑念が湧く時期。この迷いを乗り越えるためには、ありのままの自分を認められる自己受容感が必要となる。
(3)習慣の忍耐期:継続が危うくなる習慣を、なんとか持続させる時期。「自分にはできる」と思える自己効力感がエネルギーとなる。
(4)習慣の成長期:うまくいく日もあれば、そうでない日もある。こうした波のある期間を支えるのが、自分を信じる自己信頼感である。
(5)習慣の開花期:行動が自然と継続できるようになる時期。自ら選び、続けてきたという実感が、自己決定感を高める。
(6)習慣の達成期:定着した習慣により、成果を手にする時期。得た成果や成長した自分が周囲に役立っているという感覚で自己有用感が満たされ、次なる挑戦への活力が湧いてくる。
要約では6つのステップのうち、1つ目と2つ目を取り上げる。
1つ目のステップは「習慣の種まき期」だ。
たとえば、転職によって仕事のストレスが増え、毎晩ビールを2缶、スナック菓子を1袋食べるようになったとしよう。これは、仕事にも健康にもマイナスとなる悪習慣である。ストレスが引き金となって、悪い種をまいてしまったと言える。
こうした悪習慣が定着すると、朝から胃や頭が重く感じられ、仕事のパフォーマンスは落ち、体重も体脂肪も増えて不健康な体になる、という実を収穫することになる。種まき期に自身の願望と異なる種をまいてしまうと、習慣は挫折するか、理想とはかけ離れた結果を招いてしまうのだ。
いい種を選ぶためには、自分自身を冷静に見つめる視点と、そっと背中を押すような優しさが必要だ。だからこそ、「自分には価値がある」と思える自尊感情を満たした上で、習慣化に取りかかることが重要なのだ。
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