現在の日本は豊かになり、食べ物に困って飢えるということはほとんどなくなった。それは喜ばしいことだが、困った一面もある。それは、お腹がいっぱいだとやる気が出にくいという点である。
動物は空腹になると、エサを得るために行動する。しかし、常にお腹が満たされている動物園の動物は、動かずにダラダラとしている。人間も同じで、お腹が満たされていると動こうという気になりにくいのだ。
これは食べ物に限ったことではない。人は空腹になることで、貪欲に何かを求めるようになり、食べ物以外の欲求も高まるのである。
ミネソタ大学のアリソン・シューは、大学の食堂で次のような実験を行った。これから入ろうとしている空腹の人と、食事を終えて出ようとしている満腹の人に、商品の好ましさについて評価してもらった。対象とした10個の商品は、食べ物が5つ、食べ物以外が5つという内訳だ。
その結果、空腹の人は食べ物だけでなく、食べ物以外の商品についても「ほしい」と思う度合いが高かった。逆に満腹の人は、満ち足りた気持ちになって「もういらない」と感じやすかった。行動を起こすには、前者の状態のほうが適していると言える。
本気の力を出したいときは、あえて食事を抜いてみるのも一つの手だ。きっとモチベーションの向上につながるはずである。
「ご褒美」でやる気を上げたいなら、すぐにもらえるようにしておくことが重要だ。お給料であれば、最もやる気が出るのは日給制だ。1日働いてすぐにお金をもらえると思えば、仕事も苦にならないだろう。一方で、お給料をもらうまでに時間がかかると、働くことが億劫になってしまう。
シカゴ大学のケイトリン・ウーリーは、新年に目標を立てた人200人に対し、2か月後に「決めたことをいまも実行しているかどうか」を確認した。また、その行動後に「すぐにご褒美をもらえるかどうかも尋ねてみた」。その結果、目標を続けていた人は、ご褒美を「すぐに」もらえるようにしていたことが明らかになった。
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