期限のある仕事への着手からシャンプーの詰め替えまで、誰でも何らかの先延ばしの経験があるはずだ。人が先延ばしをしてしまう原因は、課題を前に湧いてくる、強い不快な感情である。「課題が手に負えないかもしれない」という不安や恐怖、「締め切りをコントロールされたくない」という怒りなどから逃れるために、一時的に課題から逃げるのが先延ばしの本質だ。心理学では「回避行動」と呼ばれている。
先延ばしには、瞬時に不快な感情を消すことができるという短期的なメリットがあるが、長期的にはデメリットが大きい。やるべきことを記憶にとどめておくことには相当なエネルギーが必要であり、落ち着かない気持ちが続く期間が長くなる。タスクに使える時間が少なくなるため、強いプレッシャーにもさらされる。チームで取り組む課題では、ギリギリの行動につき合わされたメンバーから、見切りをつけられる可能性すらある。最悪の場合、締め切りに間に合わないという事態に陥ることもある。
こんなにもデメリットだらけなのに、先延ばしをしてしまうのは、人には「報酬遅延勾配」という傾向があるからだ。これは、ご褒美がもらえるのが遅くなると、その価値を低く見積もるという傾向だ。タスクを達成したときの達成感や解放感というご褒美は時間的に遠い。だから、すぐに解放感を得られる先延ばしのほうが魅力的に感じられるのだ。
それを解消するためには、計画通りにうまくいったという経験を積み、「やれた!」という感覚を味わうことが大切だ。これが次の先延ばしを防ぐことにつながる。
著者が行っているカウンセリングでは、先延ばしの課題を持っている人に対して、4つのステップで支援を行い「行動計画書」を作っている。
1. 全タスク棚卸し
2. 自己報酬マネジメント
3. 先延ばしタスクの計画
4. 脱線防止計画と必然性設定
最初の「全タスク棚卸し」では、タスクを行う時間を確保するために、プライベートも含めて1時間以上かかるタスクを全て書き出す。まずは箇条書きにしてから、締め切りが近いなど緊急性が高いものや自分が大切にしたいことなどに優先順位をつけていく。もし、緊急性が高いスケジュールだけで予定がいっぱいになってしまったら、もう一度タスクを見直してみよう。誰かに頼めないか、時短できないか、期限の延長はできないかなどと自問自答して、タスクを24時間以内に収めるようにする。
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