不安をしずめる心理学
不安をしずめる心理学
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不安をしずめる心理学
出版社
出版日
2025年05月21日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

「不安は自由の可能性である」。これは、本書にも紹介されている哲学者キェルケゴールの言葉である。不安というと避けたい感情のように思えるが、実は正しく向き合えば、真の自由と幸福を手にする一歩になるという。

本書『不安をしずめる心理学』は、不安という根源的な感情を真正面から心理学的に考察する書である。

著者の加藤諦三氏は、早稲田大学名誉教授として社会学・心理学に造詣が深く、長年「テレフォン人生相談」のパーソナリティを務めてきた。YouTubeのflierチャンネルにおいても、視聴者の悩みに新たな光を照らし、共感を呼んでいる。加藤氏は、不安に対処する方法として、「消極的解決」と「積極的解決」を挙げる。前者は合理化や依存などによって一時的に不安を避ける手法であるが、結果的に自己疎外につながってしまう。対して「積極的解決」は、困難に立ち向かい、不安の根源を洞察することで、自分自身を成長させる道である。

読み進める中で、心にグサリと刺さる言葉に出くわすかもしれない。だが、それこそが、不安とともに生きる私たちに向けられた誠実な対話であり、自己実現への道しるべだと要約者は受け取った。

本書を読み終えたとき、確かな変化が生まれているだろう。そして、アメリカの心理学者デヴィッド・シーベリーによる、「人間の義務はただ一つ。自分が自分であること」という言葉が心に響くのではないだろうか。

ライター画像
松尾美里

著者

加藤諦三(かとう たいぞう)
1938年、東京生まれ。東京大学教養学部教養学科を経て、同大学院社会学研究科修士課程を修了。1973年以来、度々、ハーヴァード大学研究員を務める。現在、早稲田大学名誉教授、ハーヴァード大学ライシャワー研究所客員研究員、日本精神衛生学会顧問、ニッポン放送系列ラジオ番組「テレフォン人生相談」は半世紀ものあいだレギュラーパーソナリティを務める。
著書に、『どんなことからも立ち直れる人』『メンヘラの精神構造』『心の免疫力』(以上、PHP新書)、『テレフォン人生相談』(扶桑社)など多数、訳書はアジアを中心に約100冊ある。

本書の要点

  • 要点
    1
    不安には「現実的な不安」と「神経症的不安」の二種類がある。後者に関しては、自分がもっとも恐れているのは不安だという事実を理解しないと、自分の不幸を合理化してしまう。
  • 要点
    2
    不安から一時的に逃げる「消極的解決」ではなく、自分の内面を見つめ直して乗り越える「積極的解決」が重要である。
  • 要点
    3
    不安は人生を見直すサインである。自分が本当に信じられる価値に向き合うことで、人は自己実現の道を歩み出せる。

要約

人はなぜ、不安に苦しむのか

現代人が不安を抱える理由

人類が不安に苦しみ出したのは、共同体の崩壊が始まった頃からである。長い歴史を振り返ると、共同体を中心としていた頃は、そこに所属していれば自分の存在に意味や価値があるとされた。そこから機能集団へと変わっていき、現代は消費社会、競争社会になった。求められる役割を果たさないと必要とされなくなり、不安が増幅されていく。

そうした消費社会で、誰もが簡単に生きられる方法が売られ、みなそれを買おうとしている。これは、お酒を飲んで寝てしまえば、忘れていられるという消極的解決である。しかし、酔いがさめたときの現実は何も変わっていない。こうした消費社会に生きていると、成長の機会が得られず、人間は不安になってしまう。真に心から触れ合える人とは、自分が成長しないと出会えない。人は他人との関わり合いができてはじめて心の支えが生まれる。ところがいまは、拠りどころがない時代である。一番の問題は信じられるものがないことなのだ。

「現実的な不安」と「神経症的不安」
maruco/gettyimages

不安には、現実的な不安と神経症的不安の二つがある。この二つは分けて考えないといけない。精神科医のフロイトは現実的な不安を「客観的不安」と呼び、心理学者のロロ・メイは、これを「正常な不安」と呼ぶ。具体的に対処することで解消できる不安である。

一方で、現実には怖くないものに怯える神経症的不安は、心の内面の問題である。怖くないものを怖いと思い込んでいるため、なぜ自分がそういう性格になってしまったのかを考えなければならない。「周りの人が自分のことを臆病と思うのではないか?」などと思い込み、無理に勇敢に見える行動をとるのは、神経症的不安を持つ人である。

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要約公開日 2025.07.14
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